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4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。

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「うおっしゃー!おねーちゃん起きろー!」



「ぐほぅ!」



 早朝。

 ドッスーンッ!と言う音を立てて私の上に跳び付いて来たのは勿論、元気一杯有り余って居る末の妹のオルブロンだ。

 昨日皆が帰ってから夕刻、何となく憂鬱な気分で居たら、



「泊まりにきたのだー!」



 と、異様に元気一杯の末妹がリュックサックを背負って連絡も寄越さずに泊まりに来た。

 何でも聞いて欲しい事があるのー!と言う愚痴付きで。

お陰で場の雰囲気が一気に変わって華やかになったけれど、元気過ぎ。ちょっとその有り余った体力をぶつけて来るノリにお姉ちゃんは付いて行けないぞ。

 そして只今朝食の席で昨日言い切れなかったのか、絶賛愚痴諸々を暴露中。



「もうね、酷いんだよフォーカス様。私が折角お弁当作って行ったのに、会いに行ったら食堂でご飯食べたっていうの~!」



 むぎー!と喚く我が妹。でもその後コロッと、



「でもねーでもねー!折角だからって少し食べてくれたの~!全部は無理だから、残りは後で頂くって言って受け取ってくれたの!うへへへへへ、これは脈ある?ある?あるよね、ね、ね?」



 正直ウザい。

 お前ら勝手にやってろって言ってやりたい。

 年の差をモノともしないリア充共め。



 でもね、それも今この時間までじゃ。

 くっくっく…



「お、おねえちゃ?」



 不穏な空気を悟ったのか、我が妹君は朝食の席で後退する。

 だが妹よ、そこは壁際でしかも椅子の上じゃぁ。逃がしはせんぞ。



 おっと、言葉使いが元実家のアレイ家の領土にいるジジ達みたいになってる。



「お早う御座いますお嬢様『方』」



「方?」



 うふ、ふふふふ…

 嗚呼、ジーニアス兄さんコッソリ気配を消して逃げるな。そして不穏な空気を察したのか逃げようとするオルブロンを鷲掴みするビンセント・マクガレン先生。

 そう、家庭教師様・サマ・さま。



「まぁ、この方がお嬢様が言ってらした末の子のオルブロン様ですのね?よござんす、このワタクシが確りと立派な淑女と為られるように教え込みますわ。任せておくんなさいまし、オホホホ」



 片手を口にあて、軽く高笑いを仕出すマクガレン先生。30歳。独身男性。



 んが。

 どうみても、オネエだ。

 喋り方も何もかもオネエだよ、この人。



 何故か顔面に付けて居る化粧も超ハデハデ。口紅とか真っ赤だよ、恐ろしく似合うけども。そして背後に孔雀が見えるんだけど、え、装飾品なのこれ衣服の。アクセサリーもジャラジャラで動く度にシャランシャランと言う音が鳴り響く。

 普段の生活に必要なんだろうか?

 凄まじいセンスですね先生。でも似合います、恐ろしい程に似合います。

 ひたすら派手だけど。



「お、お姉ちゃん。この人って」



「うふふ、私達の家庭教師よ。今日は特別にオルブロンも受けましょうね?」



「え、えええええー!」



「オルブロン、覚悟しろ」



 ジーニアス兄さん、何をってオルブロンに言われてニヤニヤしてる。

 その顔が黒い。真っ黒だ。悪い顔だ。



「兄さんが悪物っぽい顔してるー!」



「フ、何とでも言うが良い」



 うわぁぁぁとかオロブロンがドン引きして居る間。

 私のメイドのメイドシスターズであるパーシャさんにヴェロニカさん、そしてユイさんがドンドンと閉まっちゃうオジサンを彷彿させる様な素早い動きを見せ、問答無用でオロブロンを引っ張り廊下に引き摺って行った。



「うふふ、可愛い子楽しみだわ」



 ビンセント先生の呟きを「ひぃ」と言う引きつった気分で聞きながら、おねえちゃあああああーんと言うオロブロンの悲痛な声が廊下に響く。

 その後「うんぎゃぁぁぁぁ」「キツイキツイぎょえー」「しまるー!」と言う哀れな声が響き、私に次いでコルセットの犠牲者に為り果てたなと妙に悟った気分に浸って居ると、



「なぁレナ」



「なに」



「あの腰を閉めるコルセットってそんなに酷いのか?」



「地獄よ」



 今回オロブロン様に用意したのはお子様用の小さなコルセット。

 用意したのはメイドシスターズのユイさんだけど、市井で偶々見つけた金属の輪が付いて居る一番締め付ける品だそうだ…。



 オルブロン、頑張れ。



 ちなみに私は金属の輪のモノは使わないと決めて居る。



「…分かった。良いモノを探そう」



「有難う兄さん」



 私が叫んでもあまり気にもして居なかった兄さん達が、流石にオルブロンの魂の悲鳴とも言える叫び声でもしかしてかなりヤバイ?と我に返ったらしい。

 一応私も出入りの商人(来たんだよこれが…)に為りつつある人に聞いてみたり、シドニー姉さんの店で聞いてみたりしても良いのが無かったから何枚か手作りしてみたんだけど、少しはマシって言う程度になった。

 ほんの少しだけど。

 長い紐でぎゅううーと締め付けるのでは無く、短い紐で一つ一つ絞めてから結う様に改良してみたら、程々に為ったので多少はマシになったんだよね。

 その代わりメイドシスターズが不満そうにししていたけど(特にパーシャさん)。

 今後はコレでと言ったら何も言わなくなった。

 いや、文句は言わせないと迫ったから効いたのかも知れない。



 一先ず安心。



 だから後程オルブロンの分も測って作ってあげよう。時間が掛かるからそれまでは今あるので我慢して貰うけどもね。















 ※ ※ ※















「うう、お姉ちゃん、げふ、うっぷ、し、死ぬぅ」



 今オロブロンはひたすら締め付けられた憎きコロセット…じゃない、コルセットを装着し、その上にこの館の倉庫に残されていた衣装タンスの中に入って居たちょっと古いドレスを装着して居る。



 うん、あれは装着だ。

 某機動戦士だ。

 武器だ武器。いや、装備か。

 そして腰ほっそっ!



 衣装もちょっと古いけどメイドさんや使用人達が頑張って仕立ててくれたので見られる様になってて、贔屓目じゃなくても可愛い!

 ただ袖とかドレスの下にあったレースが古くなって黄ばんで居たので取り外してるんだけど、在った方が良かった様な気がする。

 ちっちゃいオルブロンがお人形さんみたいで可愛いから、今度レースを付けて貰おう。もしくは自分でレースを購入して付けるかな。



 そしてこの館、何故か小さな女の子のドレスと男性の恐らく最後の主である前ガルニエ当主のモノと思われる豪華な貴族の服が幾つか残って居た。

 ただし数十年前の古い流行りらしく、またジーニアス兄さんの体型には合わない形らしい。



 兄さんは「小さい」と零して居たしね。

 ジーニアス兄さん流石騎士団に入ってただけ合って、鍛えているから一寸分からなかったのだけど、脱ぐと細マッチョな体格してて結構良い身体つきだものね。

 アレイ家の領土に居た時から周囲の魔物を屠って鍛えているから腹筋なんてバッキバキだし、意外にも頑丈で体幹も確りして居る。

 流石乙女ゲームの攻略対象者。

 そしてそんな姿に乙女(?)なビンセント先生はメロメロだ。



「い・やぁ~んニアスちゃんってば、素敵な御身体ね!」



 クネクネしている先生をウンザリした顔付で見るジーニアス兄さん。

 先生が話して居るニアスって言うのはジーニアス兄さんの職場での渾名だそうで、付けた人は何とレスカ様。そう言う事一番しなさそうな人なのにって思って居たら、何でも「長い、舌を噛む」と急に言って付けたそうだ。



 理由がユリア様がちょっとお勉強等とかで色々あってお疲れな時、レスカ様の近衛兵として警備して居た兄さんをうっかりそう呼んでしまったそうで。

「舌ったらずで可愛かった」と至極ご満悦な様子で堪能したらしいレスカ様から、以後そう呼ばれているそうだ。

 相変わらずの惚気満載ですね。

 是非リア充爆発して下さい。



 そしてユリア様、黒歴史…。

 ご愁傷さまです。



 それにしてもビンセント先生、うねうねとうねりながらもステップが軽やかで恐ろしいんですけども。どうやったらそんな軽やかに足を動かす事が出来るのだろう?



「うふふ、それはねレナちゃん。愛よ、愛」



 愛?

 愛が一番ア○フルって奴?



「そ、アイフ○は知らないけど、ワタクシのダンスにおける愛ね」



 クルクルっと軽やかにその場でターンを決める。

『一応』多分『男性』なカテゴリーに入る先生は架空の女性をさもその場に居るかの様に片手は腰に、反対側の手はエア女性の手を持ち流れる様にリードする。スムーズに流れるその技量は初心者の私の目から見てもかなり高等な技量と言う事が分かる。



 兄さんと私と妹ととおお~と言った形で見詰めてると、



「はぁ、驚いて居る場合ではありませんのよ。皆さんもこれぐらいは軽く出来る様に為らなければ為りませんざます。特にニアス様」



 ビシッ!と指を付きつけられてタジタジとするジーニアス兄さん。



「え、俺?」



 困惑した顔付の兄さんにビンセント先生はつつつーと音も無く歩み寄り(凄い速さ…)、



「そうですわ!何故!何故ディラン様を連れて来なかったのです!ワタクシの最近の唯一憩いの、じゃなかった。あの方とてこのお屋敷に住むのでしたら、身のこなしを軽くする技や相手の動きを把握する技能を学んだ方が良いのざます!!」



 それ、どこの武術。

 ダンスってそんな感じだっけ?とか悩んで居たら、



「何を言うのですお嬢様、ダンスも武術も同じ身体を使った技能!」



 その後ウンタラカンタラと始まった専門用語やら何やら聞き慣れぬ言葉に固まる。



 なんだろ脳筋の進化形だろうか。

 それとも新たな肉体言語だろうか。



「ねえお姉ちゃん」



 オルブロンがツンツンと此方を軽くつつき、



「凄い先生がきたねぇ」



「それ言わないで、これでもダンスや勉学の指導では王都で一番腕がいいらしいよ」



 そう、この先生ダンスだけでなく他にも一流だという事でレスカ様が紹介して連れて来てくれたのだ。ただその際の言葉が、



「才能の塊の人だが、まぁアレだ。兎に角一度会ってみるが良い」



 と。

 奇抜で突拍子も無い気がするけど。

 他にも兄さん達の何かが危険な気がするけど、今の所は特に問題無い。

 ディラン兄さんに対するボディタッチが凄くて、最近ではディラン兄さんが逃げちゃって居るけども。



 所で其処のドアの所でモップ持って佇んでるパーシャさん、何故鼻にティッシュを?あ、床が…成程。良いからサボってないでお掃除お願いします。

 背後に般若の顔付のままで突っ立って居る我が家の執事、アイオロスさんが居りますよ。



「何だかお姉ちゃんの所って多種多様な変人が居るねぇ」



 オロブロン、それお前が言うか。

 先程ワザと大袈裟に叫んでコルセット回避しようとして居たの知ってるんだよ。



「えっへっへ、やっぱりバレた?ああやって置けば優しいお兄ちゃん達だともう少しマシなコルセット用意してくれるかなって言う打算なんだ~」



 てへって感じで舌を出してって…



 オルブロン、恐ろしい子!
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