デッドエンドで処刑された悪役令嬢は、魔王様の手により蘇って溺愛されるそうです

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14 魔王様勇者を助ける

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「はぁ·······またか」

ローズとの甘い日々を送る魔王にも嫌な時間というものは存在する。本当なら一日中ローズと一緒にいたいのを我慢して仕事をしていると、久しく無かった感覚を味わうことになった。それはこの世界に入り込んだ異物の存在。平たく言えば異世界人がこの世界に入ったのを魔王は感知したのだ。

とはいえ、それ自体は珍しいことではない。漂流して流れ着いたりする異邦人というのは稀にいる。だが、魔王がため息をつきたくなるのはそれが人為的なものだと分かったからだ。

まあ、要するに勇者召喚と言えば分かるだろうか?恐らく魔王のことを疎ましく思うどこかの国が異世界から勇者として一般人を魔法で召喚したのだろう。異世界から勇者を呼ぶと世界を渡る時に身体能力が書き換えられて結果として普通の人の何十倍もの力を手に入れられるのだ。

そしてこの魔法の最も厄介なところは一方通行の片道券ということ。元の世界に戻るには同じ魔法をもう一度使うしかないが、大抵は行きだけで何十人もの生贄が必要な魔法なので、帰るにも大変だということ。そして無理矢理召喚した異世界人というのは本当に世界にとっての異物なので馴染むことがなく大抵世界に殺されるというのがお約束なのだ。

「仕方ない········お仕置きついでに挨拶に行くとするか」








「はぁ·········どうしてこんなことに········」

勇者として召喚された日本の少年········須藤猛すどうたけるは膝を抱えていた。なんて事ない普通の高校生の彼は下校中に突然謎の光に巻き込まれて気がつくと異世界にいたのだ。そして自分が勇者で、魔王を倒すまで帰れないということを告げられた時には絶望したものだ。

「どうせなら、きらら系統の時空に行きたかったよ·······」

異世界召喚というのもに誰もが憧れるわけではない。猛は家庭環境も普通で、高校も新しい友達が出来て楽しんでいた最中だったので特にそう思う。そう、猛からしたらこれはただの拉致でしかないのだ。

「しかも魔王を倒すのをお願いされるならまだしも、役目だとか強制されてもねぇ·······はぁ、帰りたい········」
『帰してやろうか?』
「え?」

独り言への反応に驚いて近くを見回すと一羽の鴉がそこにはいた。その鴉はやがて黒いモヤを出すと大柄な強面の男の姿に変化したのだった。あまりにも面構えが怖くて怯む猛に男ーーー魔王は少しだけ苦笑して言った。

「すまないな、こういう顔なんだ。それより君は日本人だね?」
「え······なんでそれを·······もしかして貴方も?」
「ああ、随分と昔だけどね。今は魔王と呼ばれている」
「ま、魔王········!」

色々と驚く猛に魔王はため息混じりに言った。

「何を吹き込まれたかは大体分かるけど、君に危害は加えないよ。むしろ元日本人として助けに来たんだよ。このままじゃ君は例え俺を倒せても元の世界には戻れないから」
「それってどういう·······」

魔王は簡単に異世界召喚とこの世界のことを説明する。するとすぐに理解した猛は顔を青くして言った。

「つ、つまり、拉致された上にこのままだと僕は死ぬってことですか?」
「そうなるね」
「そんな······」
「だから、君が信じてくれるなら私が元の世界に君を戻そうと思うんだけど······どうする?」







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