悪役令嬢は溺愛される

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《キング・スリザン》竜の尾を踏んだ末路

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キング・スリザンは焦っていた。

ここ最近になって、想い人であるジェシカが自分達以外の男にアプローチをしていると知っていたからだ。

それでも、最初の内は許せた。

いずれは自分の元に来ると信じていたから。

しかし、ジェシカはだんだんと自分達との時間を減らしていくのにキングは焦りはじめて・・・そこに来て王子であるアルト・フォン・クロードがジェシカに素っ気ない態度を取ると知って激怒した。

悲しげな表情の彼女を見てキングも他の男もなんとしてもアルトを彼女の前に膝まづかせようと決意した。

それが切っ掛けで自分に興味が向くかも・・・という打算もあったが、しかし相手は一応一国の王子・・・簡単には出来ないだろう。

ならば、その弱点・・・以前の社交パーティーでアルトが婚約者にぞっこんなのは誰の目にも明らかだったので、キングはそこを攻めようと考えた。

とはいえ、勿論他のメンバーには内緒でだ。

頭の緩いマイク・リズムでは作戦は無理だし、教師のベンツはそもそも使い物にならない。
義弟のジャンや幼馴染の男は何やら達観したような・・・まるでもう、諦めているような様子を見せているので論外だ。

すぐに攻めても良かったが・・・キングはフェイクをかけることにした。
マイクを使った陽動作戦・・・これは頭の緩いマイクだからこそ、敵意が完全にアルトに向いてると思わせることが出きると思い、マイクと共にアルトにジェシカに謝るように言った。

そして、自信への注意が向いている隙に・・・そう、例えば楽しい夜会の前に愛しの婚約者が倒れればアルトの顔は絶望に染まるだろうと、キングは内心でほくそえんだ。

とはいえ、その計画は本人自らの活躍により阻止されてしまい、なおかつキングの手のものも何人か捕らえられてしまったことで一気に焦り出す。

かなり裏のルートでの依頼とはいえ、早ければ自分の元にたどり着くかもしれない。そうすればジェシカとどうこうどころか、自身が破滅しかねないとキングはさらに策を巡らせようとする。

が、勿論貴族とはいえ、元来策略に秀でてないキングでは思い付く作戦などたかが知れてる。
そこで、キングは警備兵に凄腕の傭兵を紛れ込ませて騒ぎを起こすことにした。

かなりの凄腕との噂で期待したのだが・・・たかが侍女一人に抑えられてしまったことで、キングの形勢はさらに不利になる。

「くそ!」

自室に戻って荒れる内心を物に当たることで晴らそうとするがおさまる様子がない。

「あのクソ王子・・・!」

そもそもの原因はあの王子だ!あいつさえいなければジェシカも・・・!
いつしか、そんな風に考えるようになっていたキング。

「今度こそは必ず・・・!」

「必ず何だ?」

「なっ!?」

気づくといつの間にか自室の扉が開いておりそこには扉に背を預けるアルトの姿が。
キングが腸が煮えくりかえるのをどうにか抑えてから冷やかに告げた。

「他人の部屋に無言で入るのは関心しませんね。」

「ノックはしたさ。気づかなかっただけだろ?」

「そうですか・・・それで?何のご用でしょうか?」

あくまでクールにそう告げるアルトにキングはなんとか苛立ちを声に乗せないようにして問いかける・・・と、アルトはそれに可笑しそうに笑った。

「何をって・・・分かりきってることだろ?」

「はて?何のことやら・・・」

「あくまでしらを切るなら、それでも構わない・・・用件はこれだよ。」

アルトはそう言って何やら丸まった書状のようなものをキングへと投げつける。
キングはそれを拾って中身を見て・・・絶句した。

「な!?これは・・・」

そこには、家からの離縁状と・・・キングへの今後国内への立ち入りを禁ずるという内容のものだったのだ。

「一体どうして・・・おまえか!!」

キングはその内容に混乱しつつも即座にこれがアルトの手回しだと思い、アルトを激しく睨み付ける。
そんなキングにアルトはあくまで穏やかに告げた。

「なに、少しやり過ぎたことを君の家族と国に伝えただけさ。私はほとんど何もしてないよ。」

「クソ王子が・・・!」

もはや外聞など知らないという風にアルトに対して怒りを向けるキング。
そんなキングを見てアルトはすっと目を細めて一言言った。

「先に手を出したのはそっちだろ?私のエミリーに行ったことを・・・いや、私のエミリーに手を出したことがそもそも間違いだったんだよ。」

「あんな不細工のことなど・・・」

その言葉を言い切る前にアルトの拳が激しく壁に打ち付けられて、壁にへこみが出きる。
全身から怒りのオーラを漂わせるアルトはそのままキングに冷やかに告げた。

「私のエミリーへの侮辱は許さない。何にしても貴様はもう貴族ですらない上に、学園に通うだけの金もないただの部外者だ。貴様と私・・・身分の差をわきまえろ。」

「くっ・・・くそ!!」

キングはもはや冷静ではいられなくなり思わずアルトへ向かって突貫するが・・・アルトはそれを華麗にいなして逆にキングを押さえる。

「これは、王子への不敬罪だな。ジークフリード。」

「はい。」

痛みに霞む視界の中でどうにか抜け出そうともがくキングだが、いつの間にか現れた執事によってあっというまに縛られてしまう。

「これからお前は牢につれてかれる・・・が、その前に・・・」

アルトはそう言ってキングの側に寄るといつの間にか用意していたらしい剣を振りかざして・・・

「まっ・・・まて・・・」

それを思いっきりキングの体のギリギリ横に突き刺した。
それを見てゾッと恐怖がわくキングに視線を向けてアルトは怒りのオーラを全開にして言った。

「二度と私のエミリーに近づくな!次は・・・本気で殺す。」

アルトの視線からはその言葉に偽りがないように告げていた。
その時点で、キングの心は折れてしまった。

ああ、自分はとんでもない物に手を出してしまった・・・逆鱗に・・・竜の尾を踏んでしまったのだと・・・。


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