悪役令嬢は溺愛される

閑話 心から愛おしい（エミリー）

私は現在思わぬ状況に混乱しています。

「エミリー痛くはないかい？」

「は、はぃ・・・」

「なら良かった」

ニッコリと頬笑むアルト様のお顔が近くにあります。
いつもより近い位置に、見上げるような形でアルト様がいます。

ふ、ふしだらかもしれませんが・・・私の胸は高鳴ってしまいます。
し、しかも私の頭はアルト様のお膝の上に・・・ひ、膝枕と呼ばれるものをされております。

本来は女性からしてさしあげるものらしいのですが・・・アルト様は私に逆にしてくれています。

そっと・・・近くにあるアルト様のお膝は思ったよりも逞しくて・・・はっ！い、いけません！ふしだらなことを考えては！

ブンブンと頭をふるとアルト様はゆっくりと私の頭を優しく撫でてくれます。

「エミリーの髪本当に気持ちいいね」

「そ、そうてしょうか・・・？」

「うん。ずっと触っていたいくらいだよ」

いつもとは違う角度から見えるアルト様のお顔に思わず見とれてしまいます。
殿方の体というのは思ったよりも固くて・・・でも温かいと安心できます。

アルト様だからでしょうか？

あぁ・・・このまま、ずっと・・・

「お側に・・・いたいです・・・」

気がつくとそんな言葉を口にしてしまいました。はっとしてアルト様の方を恐る恐る見ると・・・アルト様はなにかを耐えるようにしてからいつもの笑顔で言いました。

「私も・・・エミリーの側にいたいよ」

「アルト様・・・私は・・・」

言おうか迷ってしまいますが・・・考えるより先に言葉が出ました。

「私は・・・アルト様がいなくなるのが、傷つくのが何より怖いんです。ですから・・ですからアルト様。どうか無理だけはしないでください。アルト様がいなくなったら私は・・・」

「・・・大丈夫だよ」

アルト様は私の言葉に・・・優しく頭を撫でながら微笑んでくださいました。

「私は・・・ずっとエミリーの側にいる。だから心配しなくていいんだよ」

「アルト様・・・」

優しく撫でてくださるアルト様とその言葉に私のはりつめていた心は不思議と解れていき、変わりにゆっくりと・・・安心してしまったからか、瞼が重くなってしまいます。

いけません・・・このまま寝るなんてはしたないことはできません。
そう思ってもアルト様の優しい手つきに抗えずに私の意識は静かに沈んでいきます。

「大丈夫だよエミリー。私は・・・君を絶対に守るからね」

最後に聞こえたそんな言葉に私は夢見心地のままに返しました。

「アルト様・・・お慕いしております」

あぁ・・・これだけでも言えて良かったです・・・