社畜勇者は異世界で旅館を開きました

yui

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プロローグ

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「もうやだ!勇者なんてまっぴらだ!」

異世界に転移して10年ーーー椎名暁斗しいなあきとは我慢の限界だと叫んだ。
召喚されてからずっと地道に頑張っていたがーーー倒せど倒せど終わることのない戦いについに我慢の限界だったのだ。

「そうはいっても・・・元の世界に帰るためには仕方ないでしょう?」

そんな暁斗の心の叫びに冷静に突っ込んだのは旅の仲間のクラウドだ。メンバーの入れ替わりが激しい暁斗のパーティーにおいて、最古参の友人に暁斗は言った。

「もう嫌なんだよ!何度も何度も命の危機を体験してーーー俺は日常系が好きなの!こんなベリーハードなファンタジーしたくないの!」
「そうは言っても・・・では、暁斗は勇者をやめて何をしたいのですか?」
「それは・・・」
「あなたの世界に戻るためには魔王を倒すしかないと説明されたでしょう?ならばあなたはこの世界でそれをするしかないと思いますが・・・」

冷静にそう言われてしまったが・・・暁斗は諦めきれないように言った。

「だったらこの世界でのんびり過ごすからいいよ!」
「はぁ・・・そうは言っても仕事はどうするのですか?今は旅のお金がありますが・・・いつまでも職なしでは困るでしょう?」

どこまでも現実的なクラウドに暁斗は言葉に詰まるがーーーふと、思い付いた単語を呟いた。

「旅館・・・宿屋をやる!」
「宿屋ですか?」
「俺の力なら絶対にうまくいくはずだから!」

完全な思いつきだったが、暁斗としては思いの外しっくりきたのでそう言った。元々、この世界に来る前は旅館で社畜として働いていたのでそれなりのノウハウはある。

そんなわけでーーー異世界人、椎名暁斗は旅館を経営することにしたのだった。

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