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再会
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やはり一日だけとは言え、ずっと寝たっきりだったせいで体力はだいぶ減ってしまったようだ。2階にある自室に向かうだけで少し息が上がる。倒れ込む勢いでベットに身を投げてしばらくうつらうつらとしていた。遠くで妹の入浴音と近所に住んでいる奴が付けているであろうテレビの音がぼんやりと聞こえる。
(…明日には回復しきっているだろうか、あの仕事早めに終わらせたいし。)
ふと考えていたのは仕事のことだった。やはり社畜魂が身に染み付いてしまっている…。まぁ、あの事務所は仕事の内容上、責任感が普通の会社よりも必要になるから、そうなるのも当たり前か。しばらくして身体が少し冷えてきたので布団を被る。じんわりと体温が上がる感覚が、疲れた頭を、思考を重くさせる。そしてそのまま眠りについた。
聞き慣れたタイマーの音で意識が戻った。スマホで時間を見ると起床時間だった。だいぶ楽になった身体を動かしてキッチンに向かう。今日は何を作ろうか、そう考えながらテレビをつけてニュースを確認する。冷蔵庫を開け、食材を見て今日はスクランブルエッグと食パン、クラムチャウダーにサラダと言うメニューにしようと決めた。卵を2個取り出して手早く溶きほぐし、味付けする。熱しておいたフライパンに流してから菜箸で時折かき混ぜながら食パンをトースターにセット。玉子がいい感じに固まりそうな頃に火を止めて予熱で温めておく。新鮮な野菜を幾つか取り出して適当な量とサイズに切ってから皿に盛り付けた直後、トースターが焼き上がったことを知らせる音とポットの湯が湧いた音が立て続けに聞こえる。こんがりとキツネ色に焼き上がった2枚のトーストを皿に乗せてから急いで粉末のクラムチャウダーの素をカップに入れる。少し重いポットを持って少しだけ湯を注ぐ。用意していたスプーンでかき混ぜてダマを溶かす為だ。ある程度溶かしたあとに残りの湯を注ぎ、美味しそうな匂いを湯気と共に立ち上らせる。出来上がったものをテーブルに並べたあと新聞を取りに行こうとリビングから出ようとした時、チラリとテレビを見ると最近騒がれている芸能人の恋愛報道をやっていた。俺には関係ない話だな、そう思いながら家の外に出る。少し寒い空気が肌を刺激するが日光の優しい暖かさが感じられる。ポストを覗いて新聞を取ったあとは足早に室内へと戻る。
(寒くなってきたな…。そろそろ羽織りものを用意した方がいいかもしれない)
少し冷えた体をさすってから新聞の記事を見る。特に気になる事はなさそうだ。パタパタと誰かが降りてくる音が聞こえる。妹が降りてきたのだろう。…いつもより少し起きる時間が早い気がするが特に気にせず、挨拶をしてその方向に顔を向けると…
「…っ!?」
妹じゃなかった。そこにいたのは、レヴァット。幽体である事を示すように体は透けていて、半透明ではあるが確かにいた。ただ、こちらをじっと見ているだけで何も言わない。恐怖は無い、ただ、言葉が出ないのだ。しばらくお互いが無言でいるとレヴァットはたった一言を残して消えていった。
「気をつけろ。」と。
(…明日には回復しきっているだろうか、あの仕事早めに終わらせたいし。)
ふと考えていたのは仕事のことだった。やはり社畜魂が身に染み付いてしまっている…。まぁ、あの事務所は仕事の内容上、責任感が普通の会社よりも必要になるから、そうなるのも当たり前か。しばらくして身体が少し冷えてきたので布団を被る。じんわりと体温が上がる感覚が、疲れた頭を、思考を重くさせる。そしてそのまま眠りについた。
聞き慣れたタイマーの音で意識が戻った。スマホで時間を見ると起床時間だった。だいぶ楽になった身体を動かしてキッチンに向かう。今日は何を作ろうか、そう考えながらテレビをつけてニュースを確認する。冷蔵庫を開け、食材を見て今日はスクランブルエッグと食パン、クラムチャウダーにサラダと言うメニューにしようと決めた。卵を2個取り出して手早く溶きほぐし、味付けする。熱しておいたフライパンに流してから菜箸で時折かき混ぜながら食パンをトースターにセット。玉子がいい感じに固まりそうな頃に火を止めて予熱で温めておく。新鮮な野菜を幾つか取り出して適当な量とサイズに切ってから皿に盛り付けた直後、トースターが焼き上がったことを知らせる音とポットの湯が湧いた音が立て続けに聞こえる。こんがりとキツネ色に焼き上がった2枚のトーストを皿に乗せてから急いで粉末のクラムチャウダーの素をカップに入れる。少し重いポットを持って少しだけ湯を注ぐ。用意していたスプーンでかき混ぜてダマを溶かす為だ。ある程度溶かしたあとに残りの湯を注ぎ、美味しそうな匂いを湯気と共に立ち上らせる。出来上がったものをテーブルに並べたあと新聞を取りに行こうとリビングから出ようとした時、チラリとテレビを見ると最近騒がれている芸能人の恋愛報道をやっていた。俺には関係ない話だな、そう思いながら家の外に出る。少し寒い空気が肌を刺激するが日光の優しい暖かさが感じられる。ポストを覗いて新聞を取ったあとは足早に室内へと戻る。
(寒くなってきたな…。そろそろ羽織りものを用意した方がいいかもしれない)
少し冷えた体をさすってから新聞の記事を見る。特に気になる事はなさそうだ。パタパタと誰かが降りてくる音が聞こえる。妹が降りてきたのだろう。…いつもより少し起きる時間が早い気がするが特に気にせず、挨拶をしてその方向に顔を向けると…
「…っ!?」
妹じゃなかった。そこにいたのは、レヴァット。幽体である事を示すように体は透けていて、半透明ではあるが確かにいた。ただ、こちらをじっと見ているだけで何も言わない。恐怖は無い、ただ、言葉が出ないのだ。しばらくお互いが無言でいるとレヴァットはたった一言を残して消えていった。
「気をつけろ。」と。
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