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襲い来る死
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(『気をつけろ』?一体どういう事だ…?)
あいつは何を知らせに来たのだろうか。そもそもあれはあいつだったのか?いや、確かにレヴァットの声だったし姿も…。
「…あれ、髪の色黒かったような…。」
黒の色素が濃い気がする。よくよく思い出してみるとこう、周りの空気も優しい感じではなく、どこか冷たく孤独を感じさせるものだった。
(でも、あれは確かにあいつだった…)
一体どういう事なんだ…?あいつは何に気を付けろと言ったのだろうか。思案に耽りそうだったのを無理矢理やめて妹に声をかける。そろそろ日常に戻らなければいけない、そんな気がしたから。妹はどうやら髪のセットに時間が掛かっていたらしい。女ってのは身だしなみに時間がかかるものだからな。お前を見て学んだよ。朝食を一緒に食べたあとお互いに出社、登校。特に会話は無かったが家を出るときに「今日の晩御飯、分かってるよね?」と釘を刺された。…分かっている、ハヤシライスだろ?お前も好きだよな…。
一日ぶりに出社すると同僚や仲のいい上司、後輩から心配された。比較的真面目に仕事に取り組んでいた俺が休んだ事がそんなにも心配するような事だったのだろうか…?まぁ、気にすることでも無いか。
その日は特に何事も無く、平穏に過ごした。退社時間まで昨日の分も含めてやっていたらその頃にはもうほぼ誰もいなかった。デジャヴ…。仕事場の電気を消灯、戸締まりを確認をして会社を出ようとノブに手を掛ける。
「…あ、しまった。屋上の鍵閉めてねぇ。」
危うく忘れるところだった。翌朝閉めてない事がバレたらこっぴどく言われるからな、危ない危ない。急いで階段を駆け登り目的地へと急ぐ。すると扉が開いている事に気が付いた。
(誰か居るのか…?)
少し警戒しながら屋上を覗くと、一人の成人男性くらいの奴が背を向ける様に立っている。詳細は分からない、全身をローブ?みたいな大きな黒い羽織物を羽織っていて見えないからだ。フードもあり、髪も顔も分からない。
(…うちの社員じゃ、ないよな。一体何者だ?)
護身用として携帯している小型の催涙ガスボンベを構えてゆっくりと近づいて行く。いや、行こうとした。屋上に一歩踏み出した瞬間、そいつは素早い動きでこちらに向き、間合いを詰めてくる。急いで催涙ガスを構えるが目の前には居ない。嫌な予感が背後に伝い、その場から転がって緊急回避、そいつは出口を塞ぐように立っていた。
(コイツ、いつの間に俺の背後へ…?瞬間移動でもしたのか…?)
月明かりがやけに眩しく思えた、イルミネーションや人の声、日常からどんどんかけ離れていっている感覚が全身を駆け巡る。
いつの間にか相手は刃物を持っていた。サバイバルナイフ、の様な大きさだが見たことの無いデザインだ。でもこれなら銃刀法違反で抵抗する事は可能になる。仮にあいつに傷を追わせても正当防衛として何とかなるだろう。あとはいかに俺に入るダメージを少なくするかどうかの問題だ。恐らく素早さでは勝てない、身のこなしも素人とかの動きでは無い。…ならこいつは一体何者で、何故こんな所に居るのだろうか、ふと疑問が走る。
「お前は何がしたいんだ。何の目的で―…」
相手の情報を聞き出せるかどうか試してみようとした時、相手が先に動く。無駄のない動きにどう来るのか予想もつかなかった俺は後ろに下がった。フェンスがある後ろへと、その筈だった。
(…え、?)
投げ出されたかの様な浮遊感、何にも触れていない足、景色が上へとゆっくり上がって見える。俺の居たであろう位置のフェンスは、何か『くり抜かれた』様にポッカリと穴が開いていた。
(あぁ、俺死ぬのか。このまま、あんな危険な奴を放ったらかしに…)
ふと俺を襲った奴を見てみた。目が開かれている、きっと俺も同じような顔をして居るのだろう。
ぐんっと落ちる速度が上がりどんどん屋上から離れていく中、頭だけが忙しなく働いていた。さっきの光景は
…どうして、
『俺の顔が向こうにあったんだ?』
もうちょっとで地面と屋上の半分の距離で意識が薄れる。完全に目を閉じた時、誰かに腕を掴まれた気がした。
あいつは何を知らせに来たのだろうか。そもそもあれはあいつだったのか?いや、確かにレヴァットの声だったし姿も…。
「…あれ、髪の色黒かったような…。」
黒の色素が濃い気がする。よくよく思い出してみるとこう、周りの空気も優しい感じではなく、どこか冷たく孤独を感じさせるものだった。
(でも、あれは確かにあいつだった…)
一体どういう事なんだ…?あいつは何に気を付けろと言ったのだろうか。思案に耽りそうだったのを無理矢理やめて妹に声をかける。そろそろ日常に戻らなければいけない、そんな気がしたから。妹はどうやら髪のセットに時間が掛かっていたらしい。女ってのは身だしなみに時間がかかるものだからな。お前を見て学んだよ。朝食を一緒に食べたあとお互いに出社、登校。特に会話は無かったが家を出るときに「今日の晩御飯、分かってるよね?」と釘を刺された。…分かっている、ハヤシライスだろ?お前も好きだよな…。
一日ぶりに出社すると同僚や仲のいい上司、後輩から心配された。比較的真面目に仕事に取り組んでいた俺が休んだ事がそんなにも心配するような事だったのだろうか…?まぁ、気にすることでも無いか。
その日は特に何事も無く、平穏に過ごした。退社時間まで昨日の分も含めてやっていたらその頃にはもうほぼ誰もいなかった。デジャヴ…。仕事場の電気を消灯、戸締まりを確認をして会社を出ようとノブに手を掛ける。
「…あ、しまった。屋上の鍵閉めてねぇ。」
危うく忘れるところだった。翌朝閉めてない事がバレたらこっぴどく言われるからな、危ない危ない。急いで階段を駆け登り目的地へと急ぐ。すると扉が開いている事に気が付いた。
(誰か居るのか…?)
少し警戒しながら屋上を覗くと、一人の成人男性くらいの奴が背を向ける様に立っている。詳細は分からない、全身をローブ?みたいな大きな黒い羽織物を羽織っていて見えないからだ。フードもあり、髪も顔も分からない。
(…うちの社員じゃ、ないよな。一体何者だ?)
護身用として携帯している小型の催涙ガスボンベを構えてゆっくりと近づいて行く。いや、行こうとした。屋上に一歩踏み出した瞬間、そいつは素早い動きでこちらに向き、間合いを詰めてくる。急いで催涙ガスを構えるが目の前には居ない。嫌な予感が背後に伝い、その場から転がって緊急回避、そいつは出口を塞ぐように立っていた。
(コイツ、いつの間に俺の背後へ…?瞬間移動でもしたのか…?)
月明かりがやけに眩しく思えた、イルミネーションや人の声、日常からどんどんかけ離れていっている感覚が全身を駆け巡る。
いつの間にか相手は刃物を持っていた。サバイバルナイフ、の様な大きさだが見たことの無いデザインだ。でもこれなら銃刀法違反で抵抗する事は可能になる。仮にあいつに傷を追わせても正当防衛として何とかなるだろう。あとはいかに俺に入るダメージを少なくするかどうかの問題だ。恐らく素早さでは勝てない、身のこなしも素人とかの動きでは無い。…ならこいつは一体何者で、何故こんな所に居るのだろうか、ふと疑問が走る。
「お前は何がしたいんだ。何の目的で―…」
相手の情報を聞き出せるかどうか試してみようとした時、相手が先に動く。無駄のない動きにどう来るのか予想もつかなかった俺は後ろに下がった。フェンスがある後ろへと、その筈だった。
(…え、?)
投げ出されたかの様な浮遊感、何にも触れていない足、景色が上へとゆっくり上がって見える。俺の居たであろう位置のフェンスは、何か『くり抜かれた』様にポッカリと穴が開いていた。
(あぁ、俺死ぬのか。このまま、あんな危険な奴を放ったらかしに…)
ふと俺を襲った奴を見てみた。目が開かれている、きっと俺も同じような顔をして居るのだろう。
ぐんっと落ちる速度が上がりどんどん屋上から離れていく中、頭だけが忙しなく働いていた。さっきの光景は
…どうして、
『俺の顔が向こうにあったんだ?』
もうちょっとで地面と屋上の半分の距離で意識が薄れる。完全に目を閉じた時、誰かに腕を掴まれた気がした。
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