異形の魔術師

東海林

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王立魔術院編

第22話

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side ロベルト=フォーンツ

「定時報告」
「総員4名、異常なし」
「ヨシ、小休止」
「ふぅ~、暑ち~」
「物の陰の休憩場所とはいえ、誰が見てるか判らないぞ」
「了解で~す」

世は事も無し、まぁ季節柄大分暑くなった来たからなぁ
俺も嘆きたいよ

「そう言えばロベルト隊長、今日は例の弟さんが模擬戦やるそうですが、見に行かないんですか?」
「下の弟の事か?見ての通り絶賛仕事中な訳だが」
「それって冷たくないんすか?」

娯楽に飢えてるのか、何故かやり玉にされてるな
何か期待するように目を輝かせやがって
あわよくば見に行きたいって所か?

「王家からの命令だよ、お披露目が終わるまで許可された者以外の接触禁止、俺たち家族でさえまだ面会出来ていないんだよ」
「うわぁ、心配にならないんすか?」
「してるに決まってるだろ、まぁ元気で居ると手紙も来たし、お披露目後に家族で会える機会を貰ってるからそれまでの辛抱だ」

実は下の弟に自身については心配はしていない
三男って事もあって貴族らしくなく妙にしぶとそうだし
心配と言えば、周りに迷惑がかからない程度にやらかしてくれれば……
まぁ、無理だな
あいつが何かやれば、良くも悪くも事が大きくなる

「さて、お喋りはここまでだ。巡回に…」


GRAAAAAAAAAAAR!!


前触れも無く何かの圧が突き抜けて身が竦む
そして耳を劈くようなモンスターの咆吼

頭を過ぎったのは、先日魔法生物になってしまったと聞かされた下の弟ランディの顔だった
それよりも今は任務だ、異常があった以上騎士団の勤めを果たさねば

「各員状況報告!」
「アレカ、異常なし」
「オア、異常なし」
「ミドジャ、異常なし」
「キーレ、異常なし」
「モモン、異常なし」

突然の事で驚いては居るが、すぐに立ち直ってくれたか頼もしい

「ヨシ、周囲警戒、発生源が判る者はいるか?」
「小隊長、第2演習場からのようですです、どうやら魔力の塊をぶつけられたようです」

すぐ近くに第2演習場の建物が見える、ここからでも中の喧騒が聞こえる
結界が張られているから、ここまで聞こえているのはおかしい

「第2演習場は、今日は第2騎士団が使用していたな?」
「そう記憶しています」
「行動規則に基づいて隊を分ける、キーレとモモン2人は本部に状況報告、残りは俺と共に第2演習場に向かう、状況開始!」


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


程なくして第2演習場に到着したが、中から聞こえてくる音はどうやったら出せるのか岩同士がぶつかったような腹に響く音と、怒号だった

「扉はビクともしません、バリケードでも作ってあるのか?」
「観覧席の方は行けそうです」
「よし、観覧席から中に入るぞ。多少の破壊は許可する」

観覧席に向かう扉を破壊して、中に入って目にした物は常識を疑う光景だった

「ロベルト隊長…人間が空飛んでます」

そう、飛んでるのだ
完全武装をした騎士達が、武装をした青いモンスターを包囲しながら攻撃を加えているが、青いモンスターの軽く振り抜くように見える一撃で数人の騎士が吹き飛ばされていく
見たところ400人は居るだろうか?
その半数はすでに吹き飛ばされて転がっている
無事な者は取り囲んでは居るが決め手が無いらしく、散発的に仕掛けては
数を減らしている
隙を突いて放たれる魔法は、届く前に全部打ち落とされている
時間差で放とうとされる物もきっちり潰している
あの魔法潰しはランディが得意だったなぁ

「ロベルト隊長、あれってもしかして例の弟さんじゃ無いですか?」
「あぁ、俺もそれに思い至ったよ」

あの青いモンスターは魔法生物に変わってしまったランディであったとしよう
あいつは第1演習場で模擬戦の予定だった
では何故第2演習場に居るのか?

「とにかく状況確認をするぞ」

向かった先は、観覧席最上段で拡声魔法で指揮を取って居たであろう、今現在罵詈雑言を叫んでいるズランベルク第2騎士団長の元へと向かった


「ズランベルク第2騎士団長殿!私は第3騎士団所属3241分隊隊長ロベルト=フォーンツであります。この状況を説明願いたい」
「黙れ!分隊長ごときが私に口を出すな!!」

判っていた事だけれど、目は血走って口元には泡が見てとれる
興奮しすぎてどう見ても正常な判断は出来そうに無いな
損な役どころだよ

「そうはいきません、第2演習場での異常を確認しました、規則により状況を確認するまで戻れません」
「その口を閉じろと言ったぁっ!!」

切られる!?
反射的に避けるが右腕に痛みが走る

「おれぇのぉっ、俺の邪魔をするなー!!」

目の前に迫る刃
全ての動きがゆっくりと動いて見える
これならよけれるとも思ったが、体は刃よりもゆっくりとしか動かない
脳裏に浮かぶこれまでの記憶、そして妻の笑顔

嫌でも理解してしまう避けられない己の死
しかし、突然横から現れた青い手により阻止された

「はぁ!?」

剣を握っている手をつかみ、そのままトマトでも潰すかのように握りつぶしてしまったからだ

「ぎやぁぁぁぁっ!!手が!手が!!」

見てるこっちも叫びたいよ
握りつぶされた手は直視できない惨状になってる

「五月蠅いよ」

そう呟いた、さっきまで演習場の中心付近に居た青いモンスターは左腕を振り抜いたようだ
ようだというのも、その動きが見えず振り抜いたであろう体制から判断した結果だけど
色々ありすぎて頭が追いつかない

ズランベルク第2騎士団長は、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちて、運悪く下の段に滑り落ちていった

「兄さんを傷つけた罪、その身で償え、楽に死ねると思うなよ」

青いモンスター、いやランディがゆっくりと動き出す
その姿は記憶にあるランディの姿では無いけれど、その声や仕草そしてキレた時の行動はまさしくランディだった
とにかくランディを止めないと

「ランディ待つんだ!それ以上やる必要は無い!」
「ロベルト兄さんを傷つけたんだ、まだ足りないよ」

高揚の無い声にその見た目の迫力は、前よりも何倍も怖さが増してた

「それ以上は必要ない、必要であればの法が裁く。だからもいいんだ……あと切られた腕が冗談じゃ無いほど痛いから何とかして…」
「ちょ、ちょっと兄さん、待ってすぐ見るから」

傷は熱いし痛いし、そのくせ切られたところより先は感覚無いし
泣かなかった事は褒めて欲しい
ランディの治癒魔法により傷は無事に完治
と言うか、ランディがいなければ腕を無くしていたところだった

その後すぐに第1騎士団が突入してきて全員を拘束してこの騒ぎは収束した
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