シューターガールズ!バトルロワイアル!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

やじるし

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五話 六月十二日 木曜日 

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「……ごめん」

 バスの中。六月十二日木曜日の実夜と美香の会話は、あいさつではなく、実夜の謝罪によって始まった。

「んーと……何について謝ってんだ?」
「昨日の夜凛ちゃんと戦ったとき、私があそこで凛ちゃんを撃てなかったせいで……実夜ちゃんがぼろぼろになりながら作ってくれたチャンスを無駄にしちゃったから」
 
 抵抗することが出来ない凛を殺すことは、確実に出来た。引き金にかけた右手の人差し指に力を込めるだけでよかった。
 だが、実夜はそれが出来なかった。凛の『人間味』というものを、知ってしまったから。同情してしまったら。

「本当にごめん」

 実夜は頭を下げた。狭いバスの座席の中だったため、俯いただけのようにも見える礼だったが。

「なにそんなことで責任感じちゃってるんだよー。私は全然なんとも思ってねーよ?」
「……そうなの?」
「当たり前だ。つーか、むしろあのとき撃たないでくれて安心してるくらいだ。実夜が普通の心を持っていてよかったーって思ったぜ」

 相手がどれだけ極悪人で自分のことを殺そうとしていたとしても、その人を実際に自らの手で殺すことが出来る人間は多くないし、そうだとしても少なからず罪悪感を覚えるはずだ。
 その『普通の心』を忘れないでくれて、よかった。

「だいたい、あたしとか凛とかがおかしいんだ。おかしい奴じゃなければ、昨日まで普通に生きてたのに、ある日突然ためらいもなく人を殺せるようになったりなんかならねーよ」
「……」
「だからさ、お前はあの行動が間違いだったとは思わないでくれ。これからもだ。これから人を殺さなきゃならねーときが来ても、それが間違いだということをわかって殺してほしい」
「うん。わかった。絶対に守るよ」

 本当に凛ちゃんはお母さんに似ている、と実夜は強くそう思った。口に出すとまた不機嫌になることが予想されるので、もう言わないが。

「あ、えっと……」

 突然何かを思い出したように、そわそわし始める実夜。

「どうかしたか?」
「今日の数学の宿題、見せてくださいっ!」

 実夜は手を合わせてお願いした。昨日の夜は疲れてすぐに眠ってしまい、今まで宿題の存在が完全に記憶から無くなっていたのだ。

「まったく……しょうがねーなあ」
「ハイパースーパーありがとう!」

 血にまみれた非日常は姿を隠し、銃を手にする以前の日常が戻る。ただしそれは、一瞬のこと。


*   *   *


 昼休み。生徒は皆自分が所属する仲間の所へ集まり、昼食をとる。もちろん実夜は、いつものように美香の所へ向かう。美香以外にも友達がいないことは無いが、やはり一番の友達は誰かと聞かれたら、迷いなく「美香」と答えるだろう。
 実夜は美香の隣の空いた席に座り、ガサゴソとリュックの中を物色する。

「あ、弁当持って来るの忘れた……」
「いやお前、宿題に続いてどんだけ忘れるんだよ」
「なんか最近忘れっぽいんだよ。まー大丈夫大丈夫。この学校には購買ってのがあるからねー」
 
 実夜は財布を忘れていないことを確認し、それから美香のいる教室を後にした。
 昼休みの学校は慌ただしい。廊下は人が川の水のように流れていて、その流れに逆らって歩くのは骨が折れる。そんな中、実夜はすれ違う人混みの中に、印象の深い顔を発見する。

「凛ちゃん……」

 凛もこちらに気づいたようで、こちらに向かってずんずんと歩み寄ってきた。

「ちょうど良かった、実夜さんと話したいと思っていたんです。少し向こうでお話しませんか?」

 相変わらずの丁寧口調で凛は誘った。正直、実夜は昨晩以来、凛に若干の苦手意識を持っていたが、凛に聞きたいことがあったのも事実。実夜はその誘いに乗って凛に着いて行った。
 行き着いたのは、屋上だった。

「屋上って解放されてるんだ、知らなかった」

 確かにここなら誰もいない。込み入った話も存分にできる。それに、今日は快晴で風が気持ちいい。

「解放はされてないですけどね。あのドアノブ壊れていて、強く捻ると開くんです」
「そ、そうなんだ」
 
 丁寧口調なのにやっていることがかなりワイルドで、そのギャップに実夜はちょっと引く。

「ねえ、凛ちゃん」
「なんでしょう」
「凛ちゃんが妹のためにお金が必要って話、本当?」

 実夜はずっとこれが気になっていた。
 昨晩、午後十一時になり、戦闘可能時間が終わった瞬間すぐに凛は起き上がり、そして、したり顔で去っていった。その顔を思い出す度、実夜は、あの話は全て嘘で、同情を買って生き延びるための作戦だったのではないかという考えが頭をよぎる。
 というか、嘘であって欲しいと思った。嘘だったら、少しは凛と戦いやすくなるから。

「そうですね……どちらとも言えないですね。あえて言うなら、『殆ど真実で少しだけ嘘』ってところですかね」
「ほとんど真実で、少しだけうそ?」
「『妹が難病を患い、父親が失踪し、お金が欲しい』という所までは真実です。ですが、あなたに押し倒され、銃口を頭に突きつけられたとき、あたかも『生きることを諦めた』かのように演じましたが、あれは嘘です。本当はもっと生きたかった。だからあなたの同情を誘った」
「そっか」

 それは、実夜が望む返答では決して無かった。凛は確かに『人間味』があって、『生きたい』と願う普通の女子高生だということがわかり、余計に凛を殺したくないという気持ちが高まった。
 でもこれは美香に言わせれば『普通の心』で、誇るべきものなのだ。だから、殺したくないと思う自分を卑下したりはしない。
 次はきっと凛を殺す。必要な罪悪感に苛まれながら。

「私の話、信じてくれるんですか?」
「うん、信じるよ。多分凛ちゃんは嘘ついてないと思う」

 根拠はないけれど、そう思った。

「それじゃあ今夜、絶対負けないから」
「えーと……その話なんですが、キャンセルという方向でよろしくお願いします」
「キャンセルって、戦わないってこと?」
「そうです。その代わり、今夜は別の方が相手になると思いますよ」

 別の方。言うまでもない。
 残る一人のモニター。

「黒野 クレアちゃん……だよね?」
「ええ。今朝クレアさんに会いまして、お話をしました」
「え、学校来てたんだ」

 昨日は理由をつけて学校に来なかったクレア。実夜はなんとなく、今日も来ていないんじゃないかと予想していたが、外れたみたいだ。

「クレアさんは是非実夜さんと美香さんと戦いたい。だから今日だけは大人しくしてくれないか。といった旨を話していました」
「クレアちゃんって、どんな人だった?」
「なんというか、ちょっと言葉で表すのは難しいですが……不思議な感じの人でしたね。まあ一度会ってみたらわかると思います」
「ふーん、わかった。ありがとー」

 黒野 クレア。情報はほぼゼロに近い謎の少女。今日中に一度会って話をしなければいけない。

「美香ちゃんも待ってることだし、そろそろ帰るよ。じゃあね、バイバイ」
「さようなら、お元気で」

 実夜は屋上の壊れたドアノブを、力強く捻った。


*   *   *


 実夜と美香がクレアに会うことが出来たのは、放課後になってからだった。

「実夜ちゃん、美香ちゃん。会いたかったよー」
「きみが、クレアちゃんだね」
「うん、このクレアちゃんこそが、今まで出番ゼロだった謎の少女。クレアちゃんだよー」

 クレアは真っ白な肌と美しいな金髪を持っていて、人形みたいな女の子だと実夜は思った。

「ところでお時間あるかなー? 是非私の家に来てお話をしたいんけどー」
「私は大丈夫だよ」

 隣の美香も「あたしもそうする」と続いた。

「クレアちゃんのお家はここからすぐ近いからね、歩いて行けるよー」

 凛がクレアのことを『不思議な感じ』と形容していた理由が、なんとなくわかる気がした。ふわふわとしていて掴みどころのない性格で、会話しているとクレアのペースに飲み込まれてしまう。

「お前は、あたし達と戦いたいんだって?」

 歩きながら、凛が口を開いた。

「うん、そうだよー。今もね、戦いたくて、戦いたくて、骨がブルブル言ってる感じー」
「……あっそ」

 あわよくば平和的に解決しようとしていた美香だったが、この様子だと無理そうだ。美香が今まで会ってきた人間の中で、クレアはダントツに『ヤバい』雰囲気がして、できれば二度と喋りたくない。

「クレアちゃんは、どうして戦うの?」

 実夜が聞いた。

「えっとね、クレアちゃんは……本能? に従ってるっていうのかな? ま、だいたいそんなとこー」
「本能?」
「うん。心の奥底からゾワゾワって来るような、もうどうしようもなく抑えられないやつだよー。例えるなら、年頃の女の子がエッチなことしたいって思い始めるような、そんな感覚かなー」
「私はよくわかんないや」

 わかりたくもないと、実夜は思った。

「わからないかなー? 少なくとも、実夜ちゃんにはわかってもらえると思ったんだけどなー」
「どうして?」
「だって実夜ちゃんとクレアちゃんって、けっこう似てるとこあるじゃーん?」

 『実夜とクレアが似ている』というクレアの言葉に反応し、美香は激昂する。

「はぁ!? てめぇと実夜が似てるだと? ふざけんな! 実夜をてめぇみてーなサイコパス女と一緒にすんじゃねーよ!」

 掴みかかろうとする美香を宥めるように、

「落ちついてよー美香ちゃん。ほら、もう着いたよー。ここが我が家だよー」

 とクレアは右の方を指さした。

 そこそこ大きな家だった。
 手入れが相当されていて、いくつもの種類の花が咲く綺麗な庭の先にある、真っ白な家屋。豪邸と呼ぶには言い過ぎだが、民家と呼ぶには控えめすぎる。

 家の中も、外見とつり合うくらいの様相だった。

「すごい、お金持ちなんだね」

 案内されたのは、異質な部屋だった。外からの光は全てブラインドで遮断されていて、部屋の明かりは、巨大なコンピュータのディスプレイから発せられる不健康な光だけだった。

「ここがクレアちゃんの部屋だよー」

 部屋の半分くらいを巨大なコンピュータが占領していて、すごく狭い。他に人を招き入れることは考えずに使われてきたようだった。わざわざこの部屋に呼ばなくてもいいんじゃないか、と実夜と美香は思った。
 クレアは座り心地の良さそうな椅子に座り、コンピュータのキーボードをカタカタと叩き始めた。

「何してんだ?」
「クレアちゃんはけっこう機械に強くてねー、毎日こうやっていじってるんだけどさ、昨日、面白いものを見つけちゃったんだよ。ほら、これ見て」

 ディスプレイには、背景が真っ黒の、いかにも危険そうなサイトが表示されていた。文字は英語で書いてあって、実夜には到底読めない。美香にも読めなかった。

「これはね、このバトルロワイヤルの真相なんだよー」
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