風華風唱-400年経った世界は残酷で優しかった

Aime

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4.

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Side:唯都

北悠を下がったあと、湯殿へ向かう。


シャワーの前に立つと鏡に俺の姿がうつる。


俺はこの姿が嫌いだ。
金色の髪に碧い眼。


この姿のせいで、あの人は・・・


『せ・・っかく、・・お前を、は・・・し・・た・・せ・に・・』


頭の中で木霊する。


『俺が・・ま・・・・して・・い・・たの・・に』


バリーンッッッッ


あの時涙を流してから、俺は表情を失った。


友達がいれば失い、恋人がいてもいつかは失ってしまう。


あの人とは“約束”をしたが、それが果たすことができるかも不明だ。


それなら友達も恋人もいらない、失う哀しみも・・・感情もいらない。


それでも今こうして苛立ってしまうのは、まだ俺に感情が残っている証拠だろう。


「はぁ…」


気がつけば鏡を破っていたらしい。


若干出血をしていたが、このくらいは問題ないだろう。


割れた鏡から目を背け風呂からあがり、用意されていた黒の着物を着る。


本家に居る時はほとんど着流し姿だ。着流しのほうが色々と楽だし、涼しい。


かすかに出血しているが、手の方はそのままで大丈夫だな。


そういえば、父さんに呼ばれているんだった。


俺は眠気を堪えてふらふらと父親の所にむかった。


屋敷の廊下を歩いていると、組員らしい人たちから挨拶される。


「おはようッス。」


「…はよ」


適当に返しながらある部屋の襖をあけた。


中にいたのは40代の男性が数人。


俺が何も言わずに開けたので中に上座に座る父さん―名を風華羅都(ラト)という―以外は驚いて振り返った。


「・・・?」


「大丈夫。入っておいで。」


一緒に座っている人に不信感を抱いて立っていた俺に、上座に座っている和服姿の父さんが言う。


「えっ?いいのですか、風華さん?」


他の男たちは広げていた資料を隠そうと身体を動かそうとしたが、父さんが制した。


「いいよ。私は華流の師範をしているだけで、風華組を仕切っているのは私の息子たちだよ。

私は能力者ではないからね。

この子は、末の息子。

上の息子の補佐兼、実担当だよ。

私は二人が未成年だから、代理をしているにすぎないから。」


「えっ?!」


呑気にあくびをしていた俺を見て、男はこんな子供が!というような表情をしている。


「子どもだからといって侮ってはだめだよ、池田さん。

この子はあなたよりもはるかに強いよ。」


父さんの横に座ると、池田は不躾にも俺をじろじろ眺めてきた。


客人とはいえ、視線は嫌いだ。


うんざりしたから殺気を向けると池田は身体を硬直させた。


「池田・・・・あぁ、警部か。

アヤカシ専門の。」


確か父さんから以前教えられた私立警察が作ったあやかし部門の警部になった男だったはず。


ぽつりと呟いた言葉に父さんは笑うと優しく頭を撫でてきた。


「唯、殺気を抑えて。ほら、自己紹介。」


「風華組、若頭の風華唯都だ。」


父さんの手を払いながら言うと、池田ははっとなり頭をさげた。


「警視庁アヤカシ専門部隊『壱(イ)』、隊長の池田です。

こちらは副隊長の村雲と治療部隊『哉(ヤ)』の神崎です。」


紹介された大柄な制服を着た男と、白衣の優男。


「唯、彼らとは長く付き合っていくだろうから覚えておいて。神崎君、例の資料を唯に。」


「はい。」


神崎は俺に資料を渡すと、席につく。


パラパラと資料に目を通し、父さんに目線を向ける。


「唯、極秘の話をしていたんだ。トリナッツァを知っているかい?」


トリナッツァといえば、今裏の世界で出回っている麻薬に似た中毒性の薬だ。


「あぁ、吸えば一時的に身体能力が得られ、飲めば・・・」


「潜在能力が増幅する。一度でも吸えば依存してしまい・・」


「薬を大量服用したら、その人は・・・」


口には出さなかったが、皆の頭の中には同じ単語が浮かんでいただろう。


―――死。


しんっとしてしまった室内。


「実は、この薬がとある学園で出回っている可能性があるのです。」


神崎が静かに口を開く。


「でね、その薬を調査してくれないかな、唯?」


明るい声でその空気をやぶった父さんは、びしっと俺を指さす。


「なんで?この学校、この学院って、弐雁と蓮華がいるのに。」


学院に通うなんてありえない。


面倒だし、人が多いところは嫌だ。


「No.7漆黒に次いで、情報収集に秀いでている彼等も苦戦しているそうなんだ。

だから唯も二人と合流して直接指揮をとって欲しい。」


そんな俺の様子を見て父さんはまた俺の頭を撫でてきた。


「長期…」


学校なんて嫌だ。


何もできない子どもが群れているだけの所。


「すまない、唯。でも、お前の他は皆大人だ。分かっているだろう?」


「私からも頼みます。

こちらは潜入捜査に向いている者がいないので、若頭さんだけが頼りなのです。

こちらからは、この神崎を保険医として潜入させております。

何かの役に立ててください。」


池田からも懇願され、俺は渋々首を縦に振った。


「・・・分かった。」


「ありがとうございます!

では、詳しい日程は羅都さんに伝えてありますので、お伺いしてください。

私は仕事がまだ残っておりますので、これで失礼します。」


といい残して池田達は帰っていった。
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