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0章
3.
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Side:北悠
姫―主(総長)の弟である風華唯都(カザカ ユイト)―の部屋は本邸から離れた小さな別邸にある。
人の気配に敏感な姫にたくさんの人の気配が出入りする本邸では安心できないだろうから、と彼の父親が四方を堀に囲まれたこの別邸を特別に用意したそうだ。
さらに、普段から人の出入りができないように、姫が張った結界があるため、特定の人しか入ることを許されていない。
この別邸には、姫の居住スペースとナンバーズと呼ばれる特殊な任務を行う者達が姫に会うための部屋しかない。
俺は姫の寝室に入ることを許されている数少ない人だ。
姫の執務室から繋がっている私室の扉の前に立ち、声をかける。
「姫、湯殿のご用意ができました。」
ノックをしてそっと話かけるが返事がない。
失礼します、と声をかけ必要最低限しか置かれていない部屋に入る。
「姫?」
しかし、部屋の主の姿が見当たらない。
部屋の隅々まで見回すと、大きなソファの上でクッションに埋まって寝ている人影を見つけた。
「すぅ…すぅ……」
とても安心しきった可愛い寝顔。
私と家族以外寝ている姫に近いたら起きてしまう。
いや離れの近くに来ると、が正しいか。
俺は長年にわたる努力の結果、姫に信頼されて頂いた数少ない一人だ。
姫に近づいても彼は眠っている。
こうして姫の寝顔を拝めるのも、苦労したかいがあったというものだ。
玄関先ではフードを被っていた姫だが、今は外れていた。
綺麗な金のラフショートの髪。総長曰く、触るととてもふわふわしているらしい。
今は閉じたられているが、目をあけると澄んだ碧い瞳が見える。
姫自身は自分の髪と瞳を嫌っているが、俺はとても綺麗で可愛いと思う。
俺が姫と呼ぶのは、彼の二つ名からもあるが、人形のように可愛いからだ。
姫に言うと怒られそうだから口には出さないが、姫の姿をみた風華組全員がそう言うし、ほぼ全員こっそりと‘姫’と呼んでいる。
「向こう(任務先)ではあまり眠られていなかったのですね…」
顔色が良くなさそうに見えるから、ずっと寝かせてあげたい。
だが、姫の部屋に来る前に彼の父親である羅都(らと)様に命じられたことを姫に伝えなければならないので、俺はそっと近づいてクッションに埋もれている姫を起こす。
「姫、姫。起きて下さい、こんな所で寝ていたら風邪をひきます。」
「ん……」
小さく身動ぐと姫は目をあけた。
碧い目が俺を映すが、その眼に感情は無い。
この瞳に感情がやどる所を見たいと思っている俺の気持ちを知らない姫は、小さく欠伸をすると身を起こした。
「ふぁ・・・ホク?」
ホクは俺の愛称みたいなものだ。
姫が幼い頃、(と言っても姫と会ったのは5年前だが。)につけた俺の名前。
最近は呼ばれたことがなかったが、寝ぼけていたのだろう。
「こんな所で寝ていたら風邪をひきますよ、姫。湯殿のご用意ができております。」
「ん、ありがとう。」
まだ醒めきっていない姫は目をこすりながら立ちあがった。
「湯殿に行かれた後でいいから私の所に来るようにと、羅都様からの言伝を預かっております。羅都様は現在、椿の間にいらっしゃいます。」
「ん、分かった。一人で行く・・・。」
「はっ。失礼致します。」
姫はふらりと立ち上がると着たままだったコートを脱いだ。
黒のスキニーパンツと黒いシャツという出で立ちから、姫のほっそりとした体型がわかる。
たくさんの任務をこなしてきている姫だが、がっちりとした体形ではない。
本人曰く、筋肉がつきにくい体質らしい。
女に間違えられるほどの可愛い容姿をあまり姫は自覚していない。
目の前で着替え始めようとした姫を止めて、慌てて部屋を出た。
「(肌白すぎだ・・・これ以上姫の裸体を見せられたら、俺の理性がもたねぇ…)」
姫―主(総長)の弟である風華唯都(カザカ ユイト)―の部屋は本邸から離れた小さな別邸にある。
人の気配に敏感な姫にたくさんの人の気配が出入りする本邸では安心できないだろうから、と彼の父親が四方を堀に囲まれたこの別邸を特別に用意したそうだ。
さらに、普段から人の出入りができないように、姫が張った結界があるため、特定の人しか入ることを許されていない。
この別邸には、姫の居住スペースとナンバーズと呼ばれる特殊な任務を行う者達が姫に会うための部屋しかない。
俺は姫の寝室に入ることを許されている数少ない人だ。
姫の執務室から繋がっている私室の扉の前に立ち、声をかける。
「姫、湯殿のご用意ができました。」
ノックをしてそっと話かけるが返事がない。
失礼します、と声をかけ必要最低限しか置かれていない部屋に入る。
「姫?」
しかし、部屋の主の姿が見当たらない。
部屋の隅々まで見回すと、大きなソファの上でクッションに埋まって寝ている人影を見つけた。
「すぅ…すぅ……」
とても安心しきった可愛い寝顔。
私と家族以外寝ている姫に近いたら起きてしまう。
いや離れの近くに来ると、が正しいか。
俺は長年にわたる努力の結果、姫に信頼されて頂いた数少ない一人だ。
姫に近づいても彼は眠っている。
こうして姫の寝顔を拝めるのも、苦労したかいがあったというものだ。
玄関先ではフードを被っていた姫だが、今は外れていた。
綺麗な金のラフショートの髪。総長曰く、触るととてもふわふわしているらしい。
今は閉じたられているが、目をあけると澄んだ碧い瞳が見える。
姫自身は自分の髪と瞳を嫌っているが、俺はとても綺麗で可愛いと思う。
俺が姫と呼ぶのは、彼の二つ名からもあるが、人形のように可愛いからだ。
姫に言うと怒られそうだから口には出さないが、姫の姿をみた風華組全員がそう言うし、ほぼ全員こっそりと‘姫’と呼んでいる。
「向こう(任務先)ではあまり眠られていなかったのですね…」
顔色が良くなさそうに見えるから、ずっと寝かせてあげたい。
だが、姫の部屋に来る前に彼の父親である羅都(らと)様に命じられたことを姫に伝えなければならないので、俺はそっと近づいてクッションに埋もれている姫を起こす。
「姫、姫。起きて下さい、こんな所で寝ていたら風邪をひきます。」
「ん……」
小さく身動ぐと姫は目をあけた。
碧い目が俺を映すが、その眼に感情は無い。
この瞳に感情がやどる所を見たいと思っている俺の気持ちを知らない姫は、小さく欠伸をすると身を起こした。
「ふぁ・・・ホク?」
ホクは俺の愛称みたいなものだ。
姫が幼い頃、(と言っても姫と会ったのは5年前だが。)につけた俺の名前。
最近は呼ばれたことがなかったが、寝ぼけていたのだろう。
「こんな所で寝ていたら風邪をひきますよ、姫。湯殿のご用意ができております。」
「ん、ありがとう。」
まだ醒めきっていない姫は目をこすりながら立ちあがった。
「湯殿に行かれた後でいいから私の所に来るようにと、羅都様からの言伝を預かっております。羅都様は現在、椿の間にいらっしゃいます。」
「ん、分かった。一人で行く・・・。」
「はっ。失礼致します。」
姫はふらりと立ち上がると着たままだったコートを脱いだ。
黒のスキニーパンツと黒いシャツという出で立ちから、姫のほっそりとした体型がわかる。
たくさんの任務をこなしてきている姫だが、がっちりとした体形ではない。
本人曰く、筋肉がつきにくい体質らしい。
女に間違えられるほどの可愛い容姿をあまり姫は自覚していない。
目の前で着替え始めようとした姫を止めて、慌てて部屋を出た。
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