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とある司祭視点

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今、王都で噂になっている聖女様を見つけたのは私です。あれはつい先月のことです。いつものように教会で神様へ祈っているとスラム街の子供のような子が入ってきました。こういうことはよくあるのでパンを渡そうとその子に近づくと、違和感を感じました。今思えば、あれが聖女様のオーラだったのかもしれません。ボロ布だと思ったものは触っただけで上質なものだと分かりましたし、変わった形をしていました。傷一つついていないきれいな肌は貴族のようで、その髪は王家の象徴である金髪でした。とりあえず、

「どうしたのですか?」

と聞いてみますが、よくわからない言葉をお話しになり、なにかその言葉でつぶやいたかと思うと目の前が真っ白になるほど光りました。恐る恐る目を開いて子供を見ると堂々とした顔で私を見ていました。光を使える属性なんて聞いたことがありません。もしかしたら、昨年予言された聖女なのではないでしょうか。一介の司祭である私にはその予言を詳しく教えてくださいませんでしたが、確かこの世界が滅ぶのを少女が助けてくれるという感じだった気がします。もしや、この子がそうなのではないでしょうか!私は思わず震える足を押さえて、子供を王宮へ連れていくための支度をします。王宮へ聖女候補を発見したとの旨を知らせてもらいました。ここで鑑定できるならそうするのですが、私の立場ですと石版を自由に使うことができないので“候補”ということになってしまいました。鑑定をしなくても私はこの子が聖女のような気がしてなりません。こんなに異質な空気をまとった子供が他のどこにいるというのでしょう。王宮へ着くと、応接間のような豪華な部屋に通されました。しばらくすると、この国の宰相様が入ってこられました。挨拶のために立ち上がろうとすると、手で制されて

「いい。その子供が報告してきた聖女候補とやらか?」

「はい。教会で周囲を光らせる魔法を使い、先ほどは自らに治癒のような魔法を施されていました。」

「なるほど。」

宰相様は机ごしにその子の両手をつかんで鑑定版に乗せると、鑑定結果が映し出されました。
 
名前:アリサ
性別:女
年齢:10歳
称号:聖属性を持つ女 、神と縁のある者
状態:良好
魔力値:110
属性:聖
 
っ!!“聖属性を持つ女“!やはりこの子は聖女なんですね!聖属性なんて青龍様しか持つことができないと思っていましたが、さすが”神と縁がある者”の称号を持つだけはあります。

「君はこの子が聖女だと思うかね?」

「もちろんです!これらの称号と属性・魔力値から言って間違いないかと思われます。」

「言葉を話せないのはなぜだと思う?」

「そうですね、神が課された試練ではないかと考えます。」

「そうか、とりあえず陛下へは報告しておこう。そして、候補としての教育を受けさせる。この子の身は王宮預かりとする。」

「承知いたしました。」

彼女の魔力値を考えると王家に王宮に任せるほうがいいですよね。私は、一礼してから部屋を出ます。私が聖女を見つけたということに達成感と優越感を感じながら。
 
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宰相視点
 
私は部屋に残った少女を見る。これまで多くの人を見てきた私から言わせてもらうとこの少女は聖女にふさわしくない。言葉は話せなくてもこの状況を、自分が聖女になるということが当然であるかのような態度がありありと分かる。それともこのようなものが本当に神から使わされた聖女とでもいうのか。まあ、どちらでもいい。聖属性を持っているというところは大いに利用価値がある。魔物の動きが怪しくなっていることから、王都を守る手段として手札に加えておくべきだろう。それに聖女ということにしておけば民衆も操りやすいからな。とりあえず言葉を習わせ、学園に通わせるとしよう。

――まだ2週間しか経っていないが、少女はほぼ言葉を話せるようになった。これほど優秀なのはもしや本当に聖女なのか?だが、最近は第二王子とよく一緒にいるらしい。私は少女が第二王子と朱雀様を見たときのあの目を忘れられない。あれはまるで息子やシルバー家の息女の目を彷彿とさせるものがあった。全く、奇妙な子供ばかりだ。最近よく次代はこのままで大丈夫なのかと不安になる。朱雀様が第一王子様と契約してくださっていればここまで面倒なことにはならなかったのに。そんなことを言っても今更か…。
今日何度目かわからないため息を無意識に吐き出した。
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