初めてはアイツと!?〜大嫌いなチャラ同期に、鉄壁の秘密を暴かれました〜

萩野詩音

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第3話

5

 夢を見ていた。
 大学に入学したばかりのころの私を、まるで俯瞰するように今の自分がみつめている。 だからこれは、きっと夢だ。

 私には、子どもの頃からずっとコンプレックスがあった。丸くてぽっちゃりした身体。
 無邪気な友人たちからかけられる言葉は、私の心を抉った。

実鈴みれいちゃんって、お相撲さんみたいだね」とか「いっぱい食べたら大きくなれるんだね」とか。

 悪気はなかったのだと信じたい。
 けれど耳に入ってくるまわりでひそひそと交わされる言葉はもっと辛辣で。私は恥ずべき存在なのだと刷り込まれて生きていた。

 食べ物に困らないのは、有難い家庭だったのだと思う。
「子どもにはたくさん食べさせたい」という両親で、逆に言えば「盛り付けたものを残すなんて許さない」という教育方針だったこともあり、なかなかダイエットも成功しなかった。

 高校生の頃は、大学デビューなんて夢を見たけれど、まさに夢のまま終わって、大学入学後も目立たないようにひっそりと過ごしていた。
 少しでも身体の線を隠すよう、だぼっとした服を着て過ごす。今思えば、それが余計身体を大きく見せていた。 
 
 私は大学まで、実家から電車で二時間近くかけて通っていた。
 本当は憧れの一人暮らしをしたかったけれど、両親が許してくれなかった。 

「通えるんだからいいじゃない」
「実鈴ちゃん、授業もあるのにおうちのことできないでしょう」
「家にいればいっぱいご飯を食べさせてあげられるし、アルバイトだってしなくたってお小遣いだけで十分でしょう」 

 そう言われて、自分の希望を押し通すことができなかった。
 なにしろ、意見を言うということをしないで育ってきたから、肉親にだって本当の希望の伝え方がわからなかったのだ。
 そして今思うと、なんと過保護な両親なのだろう。
 おまけに父方の祖父母と同居していたこともあり、

「実鈴ちゃんお茶にしましょう」
「美味しいお菓子を買ってきたから一緒に食べようね」
 
 と明らかに摂取すべき量を超えて食べ物を与えられていた。


 その頃の私は、ホシゾラドロップスを追いかけ始め、ライブに行ったりやグッズを購入するためにお金がほしかったから、結局のところついつい実家で甘えていた。

 親からの仕送りを断ってでも、ひとり飛び出していく勇気はなかったのだ。
 ただぬるま湯の中で過ごしていて、結果実家の部屋は、ミトのグッズで溢れかえっていた。

 当時はまだ今ほど人気のなかったホシゾラドロップスのライブは、客席との距離が近い会場ほとんどだった。さらに女性客は珍しかったのだろう。
 行けばいつも手を振ってもらえて、嬉しくて舞い上がった。

 普段はとてもできないミトとお揃いのリボンカチューシャも、ライブ会場でだけは付けることができた。

 どんなに大学生活が地味でも、ライブに行けば、ミトを見ている時間だけはキラキラと輝いている実感があった。


 けれどとある出来事で、そんななけなしの幸せも打ち砕かれた。

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