初めてはアイツと!?〜大嫌いなチャラ同期に、鉄壁の秘密を暴かれました〜

萩野詩音

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第7話

5

 定時後、なんとか他の仕事も片をつけ、飲み会の会場へ急いだ。気が逸る。
 飲み会に参加するだけで、こんなに緊張感を覚えたことはなかった。
 会社からほど近い店なのに、慌てたせいで心臓が不自然なほど早く打っている。

 貸切の座敷に着くと、企画部の女性社員に囲まれた。
 適当に話を合わせながら視線を巡らせると、相川はやはり吉野の隣に座っていた。同じテーブルには企画部の男性社員が揃っている。
 相川の前にはジョッキが置かれていた。中身は半分以上減っていて、飲めるのか? と一抹の不安を覚える。
 生憎そのテーブルにはもう席がなく、二つ隣のテーブルに連れて行かれた。
 相川の隣に座っている男は、企画部の……確か鈴木だ。雰囲気は柔らかいけれど、絶対に自分の都合を通してくる、食えない奴という印象だった。
 相川は無防備に、顔を近づけてくる鈴木を嫌がる素振りも見せず会話を交わしていた。
 ていうか鈴木って、彼女いたよな……?
 もうすぐ結婚するんじゃないかなんて噂を聞いた記憶がある。おそらく相川は知らないのだろう。
 だが吉野は知っているはずだ。なのに黙っているということは、わざと鈴木を相川に接近させているに違いない。
 てかてかと光る座敷の油っぽいテーブルも、相川のまわりは整っている。彼女がこまめに拭いているのだろう。その整頓された空間が、鈴木の前にも広がっていることに気づいてしまった。相川の白い指先と、鈴木の黒いスーツのコントラストが網膜に焼きついて離れない。

 やがて、相川が一人で席を立った。荷物は持っていないから、帰るわけではなさそうだ。
 適当に聞き流していた会話を切り上げて、こっそり後を追う。

 通路を曲がった先の壁に寄りかかった。背中が冷えていくのを感じながら待っていると、しばらくして相川が戻ってきた。ゆっくりとそちらへ向かって歩き始める。
 相川の頬は普段と比べて若干赤いようにも見えたが、酔っているというわけではなさそうだ。
 ということは鈴木との距離がやたらと近いのは、酔いのせいではないらしい。それはそれでじりっと喉の奥が痺れる気がした。

 じっと相川を見つめていると、意志の強い目がこちらを見返してきた。
 ただいつもより少しだけ濡れたように見える瞳に、店内の湿度が高まった気がした。
 目の前にたどり着いたところで、相川が足を止める。

「気をつけろって言っただろ」

 思わずそう口走っていた。
「別に……あの子はいつもと変わらないけど」

 相川は低い声でそう答える。鈴木に対する態度と違いすぎて、息が漏れた。

「ちげーよ。吉野に適当な男を当てがわれてんの。気づけよ」
「適当って……鈴木さんのこと? たまたま隣の席になったから話してるだけでしょ。しかも鈴木さん気を遣ってくれるいい人だし」
「は? あの人、彼女いるぞ。総務に」

 相川がえっと顔を顰めたので、やはり知らなかったようだ。

「彼女がいたっていいでしょ。別に口説かれてるわけでもないんだし、あくまで常識の範囲で喋ってるだけなんだから」
「たまにしか飲み会こないお前が、仲良さそうに喋ってたら鈴木の彼女の耳に話が入るだろ。そしたら怪しまれるのお前だぞ」
「そんなことで怪しまないでしょ。子どもじゃあるまいし」
「お前……何もわかってねーな……」
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