桃太のおだんご(隠語)は大人気

ぱぴっぷ

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油断も隙もないな

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「えぇっ!? クラスメイトに私が働いてるのがバレちゃったんですか!?」

「そうなんだよ、それで美鳥と話をさせて欲しいって…… あっ、あとサインも欲しいみたい」

「どうしましょう…… 私、桃太さんちに来られなくなっちゃいます…… そんなの耐えられません!」

 ちょ、ちょっと暴れないで! ……狭いんだから。

「ふぅ…… 桃くんのクラスメイト、猿ヶ澤さんだっけ? 美鳥さんに会って何を聞きたいんだろうね?」

「分からないけど…… 久しぶりに会ったらずいぶんと見た目が派手になって別人みたいだったから、少し怖かったよ」

 千和? 話をしてるんだから、大人しく浸かっててね? 

「また私、迷惑かけちゃいました…… 桃太さん、こんな私におしおき…… って、千和ちゃん、ズルいですよ!?」

「んふふ…… んっ、ぷはぁっ…… えへへっ」

「次は私ですからね!」

「ちょっと、大人しく風呂に入れないなら出てってね?」

 三人で湯船に浸かるのは狭いんだから! ったく、どうして俺が風呂入ると毎回入ってくるんだよ、わざわざ水着まで用意して。

「えへへっ、ごめんなさい桃くん」

 怒られてるのに嬉しそうにくっついてきて…… コラッ! 美鳥! 

「んっ…… ぷはっ…… なんですか?」

 なんですか? じゃないんだよ、油断も隙もないな、まったく。

「うふふっ、ごめんなさい桃太さん」

 ああ、もう! 美鳥までくっついてきて ……仕方ないな。

「とにかく、もう猿ヶ澤にOKしちゃったから、悪いけど相手を頼んだぞ、美鳥」

「分かりました、任せて下さい」

 よし、それじゃあ身体を洗うか。
 ……いや二人とも、まだ湯船に浸かっててもいいよ? うん、一人で洗えるから。

 
 ◇


 そして翌日、猿ヶ澤はすぐにうちの店にやってきた。

「よっ、吉備、約束通り来たぞ」

「あぁ、もうすぐ休憩だから適当に座って待っててくれ」

「ああ…… なぁ、そういえばもう一人働いてるあの娘は?」

 猿ヶ澤の視線の先には…… こっちを見て微笑んでいる千和が居た。

「ああ、俺の幼馴染で、アルバイトとしていつも店を手伝ってくれてるんだ」

「ふーん……」

 ちなみに猿ヶ澤が万が一店で騒いだら困るので、美鳥には家の中で待っていてもらっている。


 そして休憩になり、猿ヶ澤を家の中に招く。

「なぁ、お前の幼馴染、我が物顔でお前の家に入っていったけど大丈夫なのか?」

「ああ、千和には家の事を任せてるから」

 あっ、この言い方だと誤解されそうだな。

「あっ、千和ちゃんおかえりなさい、今日も忙しそうでしたね…… あっ! も、桃太さん、すみません!」

 おい! 変な誤解されないよう大人しく待っててくれって言ったのに! なんでエプロンなんて着けて出迎えるんだよ!

「吉備……」

「いや、これは、そ、その……」

「お前、HATOKOと結婚してたのか」

 なんでそうなる!? いや、俺達はだな……

「えぇっ!! け、結婚だなんて、私なんかが…… うふっ、うふふっ」

「なるほど、まだ結婚はしてないと…… んっ? お、お前…… まさか!」

 ひぃっ! いきなり大声を出すな、ビックリするだろ!

「お前二股してるのか!?」

 ……んっ? お前、


 ◇


「せっかくHATOKOに綺麗になる秘訣を聞こうと思ってたのに、二股なんてガッカリだよ」

 ガッカリしている理由は分からないけど、なんかすいません。

「しかも、団子の事しか考えてない、で有名な吉備がだぞ? はぁぁぁ……」

 俺の顔を見て大きなため息をつかれたんだけど、失礼な。

「あ、あの…… 私に綺麗になる秘訣を聞きたかった理由を聞いてもいいですか?」

「HATOKOさん、最近芸能界に復帰して綺麗になったって彼氏が言ってたから…… でも、あの男! 浮気してたんだよ! ギャルが好きって言うからせっかくアイツの好みに合わせてギャルっぽくしたのに『俺は清楚系がいいんだ!』とか言い出すし、ふざけんな! だから…… HATOKOさんに綺麗になる秘訣を聞いて、見返してやりたかったのに…… まさかHATOKOさんまで…… しかも二股相手と仲良くして! 信じられないな!」

 うわぁ…… あの地味だった猿ヶ澤がそんな理由でこんな派手なギャルに…… 

「かわいそうに……」

「うん、かわいそう……」

「お前ら! 本当にあたしがかわいそうだと思ってるのか!? さっきから吉備に両サイドからちょっかいかけて! イチャイチャしてんじゃねー!」

 うん、一応真面目な話をしているみたいだから、二人してそんなくっつかないでね? あと、テーブルの下で見えない事をいいことに太ももを撫で回さないで。

「えへへっ、そうだ! 猿ヶ澤さん、お団子食べる?」

「……へっ? な、何で急に団子なんだよ!」

「嫌な事があった時には桃太さんの作ったお団子がいいですよ!」

「い、いや、嫌な事があった時に甘いものを食べたくなるのは分かるけど…… このタイミングで!?」

「じゃあちょっと取ってくるね!」

「おい、吉備…… コイツら話を聞いてるのか?」

 ついにはコイツら呼ばわりになっちゃったよ…… うん、分かるよその気持ち。
 俺もたまにそう思う時があるから。

 二人して台所に行ったけど、何か息ピッタリだなぁ……

「おまたせー、好きなだけ食べていいからね、えへへっ」

「はい、お茶もありますよ、遠慮せずにどんどん食べて下さいね」

「あ、あぁ…… じゃあ、いただきます……」

 お二人さん? 笑顔だけど、猿ヶ澤を見る目がちょっと怖いよ? そんなに見つめられると食べづらいんじゃないかな?
 
「……っ!! ……やっぱり、美味しい」

 良かった、美味しいって言ってもらえるのは嬉しい。
 でも、そんな急いで食べたら喉に詰まるぞ? まだたくさんあるから落ち着いて食べてくれ。

「……クソっ! ……なんで ……ただの団子なのに」

 泣いてる…… お、おい、大丈夫か? 

「ふふっ…… やっぱりね、美鳥さん」

「うふふっ、はい…… 千和ちゃん」

 な、何だよ! 泣いてる猿ヶ澤を見て笑って……

「猿ヶ澤さん、桃くんのお団子、美味しい?」

「美味しい…… うぅっ…… あたし……」

「分かりますよ、私達もそうでしたから……」

「ぐすっ…… えっ?」

「色々あった不安な気持ちが少し楽になったんじゃない? でも……」

「桃太さんが居たら話しづらいでしょうから、私達が話を聞きますよ?」

「う、うん……」

 えっ? ちょっと、みんな? あの…… あぁ、行っちゃった。

 あむっ…… んー、普通に美味いし、変な味がするわけでもないのに…… 泣くほど? 俺には分からないが、千和と美鳥は猿ヶ澤の様子を見て、うんうんと頷いていた。

 あむっ…… うーん、分からん。


 ◇


「ぐすっ、うぅっ、ごめん、よく分からないけど、涙が出てきて」

「わかります、私も初めて桃太さんのお団子を食べた時、何故か分からないけど涙が止まりませんでした」

「辛くて我慢していた事が、桃くんのお団子を食べたら癒されていくんだよねぇ」

「ぐすっ、吉備の団子、変なもんでも入ってるんじゃ……」

「うふふっ、そうかもしれませんね」

「もしくは選ばれた人だけが感じる事が出来る…… みたいな?」

「何だよ、それ……」

「で、ここからが大事なお話なんですけど、私に綺麗になる秘訣を聞きたかったんですよね?」

「……ああ、だけど今は何だかどうでもいい気分だけど」

「ふふっ、猿ヶ澤さん、もし良ければ桃くんのおだんご、食べてみない? きっと浮気した彼氏なんかどうでも良くなるし、もっと幸せになれるよ?」

「団子? いや、今食べたけど……」

「うふふっ、桃太さんのおだんごはもっと美味しいですよ?」

「私達もやみつきなんだぁ、だからね? 私達と一緒に『桃くんのおだんご』食べよ?」
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