桃太のおだんご(隠語)は大人気

ぱぴっぷ

文字の大きさ
25 / 61

安心して下さい

しおりを挟む
 商店街を抜けた先にあった休憩場所を出て商店街、美鳥の行きたいという場所を目指して歩き出した。

「……実は桃太さんと出会った日もここを歩いていたんですよ」

「出会った日って、確か…… 昔遊びに来た、美鳥の祖父母が住んでいた場所を見に来たとか言ってたよな?」

「はい…… 祖父母の住んでいた場所はもう少し先でこの辺ではないんですけど、どうしても行かなきゃいけない場所があって」

 そして途中寄り道をしながら美鳥に案内され、辿り着いた場所は墓地だった。

「何も言わずに連れて来てすいませんでした、でも、どうしても桃太さんと一緒にお墓参りに来たかったんです」 

『雉岡家』と彫られたお墓。
 何となく気付いてはいたが、だから途中で花を買っていたのか。

「ここにはおじいさんとおばあさんが?」

「はい、あと私のお父さんとお母さんも入っています……」

 美鳥の家族か…… 二十二歳で天涯孤独って俺には想像出来ないが、美鳥はどんな辛い思いをしていたんだろう。

「みんな、また来ましたよ…… この前話した私の大切な人、桃太さんを連れて来ました」

 花を供えて、線香を上げて手を合わせる美鳥はお墓に向かってそう呟いた。

「俺も手を合わせてもいいか?」

「うふふっ、ありがとうございます、みんな喜ぶと思います」

 
 ……皆さん初めまして、吉備桃太です。
 今、美鳥さんと…… とても仲良くさせて頂いてます。

 美鳥と出会ってから毎日が楽しくて、美鳥にはお世話になりっぱなしですけど……

「うふふっ、桃太さんったらお団子作りする時、無意識にこねこねするんですよ? 私だけじゃなくて、千和ちゃんと輝衣ちゃんも……」

 ……美鳥? 何をブツブツ言ってるんだ?

「それにおだんご作りも上手で…… 毎日お腹がいっぱいなんです」

 ……おだんご? わざわざご家族に報告することかな?

「この間は旅行に行って、生おだんご食べちゃいました…… うふふっ、私、今幸せですから安心して下さい」

 な、生おだんごを食べた話まで!? ちょっとそれは場所が場所なだけにマズいんじゃないのかな、美鳥ちゃん。

「今度来る時にはもしかして太っているかもしれませんね、うふふっ、それに今日ここに来る前にもおだんごを食べて来たんですよ?」

「み、美鳥!? さっきからお墓参りで言う事じゃないよね?」

「えぇっ!?  でも千和ちゃんは千和ちゃんのお母さんとそういう話をしているみたいですよ? 『太った時のためにお母さんにも協力してもらうんだ、えへへっ』って、この間話してくれましたけど……」

 千和!? おい! なんてことを親と話しているんだよ! ……あっ、だからこの間、千和のおばさんとすれ違った時に『桃くんは…… 元気ねぇ』って、含みのある言い方をしてたのか!! 今度どんな顔をして会えばいいんだよ! 

「うふふっ」

 ……美鳥の家族の皆さん、すいませんでした!! でも、責任を持ってこれから美鳥をいつまでも笑顔でいられるように支えていきますから安心して下さい。

「それじゃあ帰りましょうか…… また来ますね」

「ああ、そうだな」

 それではまた、今度は千和と輝衣も連れてみんなで来ますね。

「うふふっ、今日はありがとうございました、また二人きりでデートしましょうね?」

 そして、俺達は少し遠回りをして、ゆっくりと歩きながら帰宅した。



 ◇



「なぁ、ちい」

「どうしたの、きーちゃん」

「この新しく買ったメロンを支えるキャップ、デカくない?」

「んー、最近キツくなっちゃって…… 可愛いのがお店になかったから、ネットで買ったんだぁ」

「……これじゃあメロンというよりスイカじゃないか」

「えへへっ、こねこねされてスイカにまで育っちゃったかも」

「ほぇー、桃太はメロン好きだからな」

「リンゴも大福も大好きでしょ?」

「あと桃もな、でも異様にメロンに執着しているというか……」

「それはコツがあるんだぁ、桃くんが欲しい所にメロンを持っていくんだよ」

「何それ、じゃあわざとメロンを差し出してるのか?」

「いつもって訳じゃないけどね、いきなり背後からメロンをこねこねされる時もあるし、えへへっ」

「ふーん…… えい!」

「やぁん! きーちゃん、いきなりビックリするでしょ?」

「おぉぉ…… 果肉がずっしり詰まったメロン…… いや、スイカだな」

「あぁん、こねこねしないでぇぇ!」

「たしかに…… これはこねこねしたくなるスイカだわ」

「あん! ちょっとぉ……」



 ◇


「ただいま…… って、何してるんだ?」

「はぁ、んっ、桃くん、美鳥さん、おかえりぃ……」

「おい桃太! ちいのメロンキャップがスイカキャップになったんだって!」

 いや、帰っていきなりそんな事を言われても困るんだけど。 

「千和ちゃん…… まだ育つんですか、そのメロン」

「そうなんだよ! 育ち過ぎだぞ、このっ!」

「私にもちょっと分けて欲しいですね……」

「いやーん、も、桃くん、助けてぇぇぇ」

 ごめん千和、俺には助けられそうにない。
 二人の気が済むまでこねこねされていてくれ。

 ……しかしデカいな、この支えるフルーツキャップ、頭に被れそうだぞ。



「はぁ…… あぁん……」

「へへっ、ちいの凶悪なスイカをマッサージで解してやったぞ!」

「うふっ、でもちょっとやり過ぎちゃいましたね」

 おい、まだやってたのか…… ほい、お疲れさん、お茶持ってきたぞ。

「もう…… 二人とも、手加減してこねこねしてよぉ」

「へへっ、ごめんごめん、でもすごく触り心地の良いスイカだったよ」

「スベスベモチモチで、まるで桃太さんの作る団子の生地みたいなスイカでした」

 ……本当に三人とも仲が良いな。
 とにかく千和、スイカはしまっておけ。

「えへへっ、あぁ、お茶が美味しい……」

「桃太、お団子持ってきてくれよ」

「うふふっ、私もお願いします」

 俺の話聞いてる? まあいいや、ちょっと待っててくれ…… 昨日の売れ残りの団子を取ってくるから。

 それにしても、毎日のようにスイカを眺めているから気付かなかったが、千和よ…… 大きくなったな。

 お団子、お団子…… っと、三人とも食べるだろうから九本くらいでいいだろう。

「みんな三本くらいは食べれるだろ…… えっ?」

 いつの間にかリビングにあるこたつの中に入っている三人、その側の床にはそれぞれのフルーツキャップが落ちていた。

「ふぅー! お茶が美味い」

「はぁっ、やっぱり家は落ち着きますね」

「うん、ついついダラけちゃうよね」

 暖房が入ってるから部屋の中は暖かいけど、フルーツキャップも外して薄着になるのは……

「ふぅ、楽チン……」

 千和がこたつのテーブルの上にスイカを乗せている、ちなみに薄着だからスイカのヘタがうっすら見えてるけど。

「んー! いっぱい歩いたので少し疲れましたぁ」

 美鳥はこたつに足を入れたまま、床に仰向けで寝そべっている、ちなみに薄着だから仰向けになると…… 豆大福かな?

「桃太も早くこたつに入れよ」

 輝衣はうつ伏せで肘をつきながらこっちを向いているが、リンゴとリンゴの間が丸見えで……

「あ、あぁ……」

 そして俺がこたつに入ると…… 

 おい! 誰だ、足でツンツンしてくるのは! ほら団子持って来いって言ったんだから食べるなら食べろよ。

「おだんご、どこかなぁ? えへへっ」

「うーん、ここらへん、ですかねぇ」

「へへっ、ここだ!」

 お、お団子ならテーブルの上に! あぅっ! 誰の足だ!?

「えへへっ、おだんごみっけ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...