桃太のおだんご(隠語)は大人気

ぱぴっぷ

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ここで感想会はやめて!

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「あぁ…… お腹、いっぱいだよぉ……」

「ご、ごちそうさま、でしたぁ……」

「桃太のおだんご…… 美味しかったぁ……」

 こたつの中で三人がおだんごで遊ぶもんだから、ついついお仕置きしてしまった。
 おだんごで遊ぶんじゃありません!

 まったく! お茶が冷めちゃったじゃないか。
 お団子は…… うん、冷めても美味い! 

「え、えへへっ…… 桃くんのおだんご作りはやっぱり凄いね」

「ええ、これを食べたら他のを食べたいなんて思わなくなりますよね」

「もう一生桃太のおだんごを食べていたいよ」

 ここで感想会はやめて! ほら、早く後片付けしないと、もう夜だぞ? 

「あぁっ! いけない、晩ごはん作らなきゃ!」

「もうそんな時間ですか? 私も手伝います!」

「それならあたしはお風呂掃除しておく!」

 お、おい! 風邪引くからせめて桃は隠してね!? ……って、聞いてないや。
 俺はこたつ周りを片付けるか。

 ところでおだんごを美味しく食べるためのやつは家の中どこにでも置いてあるのだろうか? いざ食べさせる時、必ず誰かが差し出してくるんですけど。

 とりあえず家の事は三人に任せっきりだし、文句は言えないんだけどね。
 おかげで店の事だけを考えられるし。

 それにしても見習い価格ということで団子を安くはしているけど、売上が親父達が旅行に行く前よりも多くなっているんだよな。
 美鳥の宣伝効果もあって、おかげさまで毎日忙しくさせてもらっている。
 千和や輝衣の接客も評判が良いし、そろそろお礼を本気で考えないと。

 三人に聞けばきっと口を揃えて『おだんご』というのは分かっているし…… うーん、女の子が喜びそうな物が分からない。

 かといって誰かに聞くと言っても…… クラスメイトに『女の子三人分のプレゼント、何がいいかな?』なんて口が裂けても言えないし、困った。

「桃くーん、ちょっと来てぇー」

「どうした? ……っ!?」

「ちょっと、ティッシュ取ってくれないかなぁ? えへへっ」

 ……どうしてそんな器用に桃に片栗粉を付ける事が出来たんだよ! 

「片栗粉の付いた手でうっかり触っちゃって…… 手が離せないから、桃くんが拭いてくれない?」

「桃太さん、わ、私もお願いします……」

 美鳥まで!? モモに付いてるけど、どうやったらそこに付くんだか……  仕方ない。

「うふふっ、くすぐったいです」

「やん! 桃くん、もっと優しくしてぇ」

 とろみが取れなくてな、もうちょっと……

「……三人で何してんだよ」

「あっ……」

「輝衣さん、こ、これはノーカウントです!」

「お料理中の事故だよ、事故! えへへっ」

「えへへじゃない! まったく…… あっ! 桃太、風呂場に来てくれ、大変なんだ!」

 急にそんなに慌ててどうした? 

「いいから早く早く!」

「わ、分かった、今行くから……」

  とろみは取れなかったが、垂れる心配はないだろう、とりあえず風呂場に行くか。


「へへっ、桃太、ここの滑り|《ぬめり》がなかなか取れないんだよ…… 桃太が掃除してみてくれないか?」

 滑りって…… そこの滑りは取れるのか? 

「やってみないと分からないだろ? 桃太、お願い!」

 試しに、だぞ?  どれどれ……

「……きーちゃん?」

「何をしているんですか?」

「ヤベっ! く、来るのが早過ぎるぞ!」

「えへへっ、きーちゃんって分かりやすいからね」

「バレバレですよ?」


 その後、千和と美鳥が作ってくれたあんかけ焼きそばをみんなで食べ、まったりしてからお夜食もみんなで食べて、くたくたになってみんなで寝た。



 ◇



「えへへっ、今日は私の番だね!」

「ああ、千和は行きたい所とかあるのか?」

「うーん…… 桃くんが悩んでいる、みんなのプレゼントを探しに行く?」

「えっ!? どうしてそれを……」

「何年一緒に居ると思ってるの? 桃くんの事なら私は何となく分かるよ、えへへっ」

 そ、そうなのか…… 気が利くってレベルじゃないよな?

「桃くんだって私の考えている事なら何となくでも分かるでしょ?」

 ……そう言われるとそうなのかも。

「じゃあ今私が考えてる事、分かる?」

 ジーっと俺の目を上目遣いで見つめ、少しモジモジ…… 

「んっ…… えへへっ、キスしてくれた…… やっぱり桃くんなら分かってくれると思った」

「いや、これくらい分かるだろ」

「じゃあこの手は?」

 おっと、メロン…… じゃなくてスイカに手が伸びていた。

「出かける前に、おだんご食べていくか?」

「えへへっ、うん!」


 ◇


「今日はちいかぁ…… ちいならまずはおだんごだろうな」

「ええ、千和ちゃんならそうですね」

「さて、あたし達はどうする?」

「輝衣ちゃんが欲しがっていた、大人っぽい服を買いに行きますか?」

「えっ! 美鳥が選んでくれるのか?」

「好みがありますからね、アドバイスだけですよ、あっ、あとお店選びも任せて下さいね」

「やった! ありがと、みい!」



 ◇



「えへへっ、美味しかったぁ…… 久しぶりにゆっくりと食べられた気がするね」

「そうだな」

 今日の千和は、いつものようにがっついて食べるのではなく、ゆっくり咀嚼《そしゃく》するようにおだんごを食べていた。

 いつもは誰かが食べているとおだんごが出来るのを他の二人が待っている状態だから仕方ないんだけど、でも…… 

「なぁ千和、千和は本当に良かったのか? 美鳥や輝衣まで……」

「うん、だって私だけじゃ桃くんのおだんご食べきれないもん、でもどうせするなら桃くんの良さを分かってくれる人じゃないと嫌だなぁって思ってたんだぁ」 

 …………

「きゃっ! えへへっ、どうしたの桃くん?」

「千和、いつもありがとう、これからもずっとよろしくな」

「もう、急にどうしたの? ……うん、ずっと、よろしくね」

 結果的にこんな状態になったのだから、三人を平等に愛すのは当然なんだろうけど、二人きりになった時くらいはその時の相手だけを全力に愛を伝えていこう。

 そう心の中で決めた俺は……

「千和」

「えっ? んっ…… はぁっ、ど、どうしたの? いきなりキスしてきて……」

「愛してる」

「ひゃっ!? えっ、えっ!? ……え、えへへっ! 嬉しい…… 私も愛してる、桃くん」



 そして再び長いキスをした俺達は……

「桃くん、もう一つおだんご食べたくなっちゃったなぁ…… おだんご、おかわりいい?」

 愛情を込めて作ったおだんごを、千和に食べさせた。
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