桃太のおだんご(隠語)は大人気

ぱぴっぷ

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下手したら四人同時に太っちゃうよ?

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「わたくしに全て任せておいて下さいまし! 鬼島グループの名にかけて、お義父様とお義母様の帰省パーティーを豪華に開催いたしますわ!」

「いや、普通のでいいから」

 葵の言う『豪華』がどれくらいか分からないから全てお任せするのは怖い!
 親父達が帰ってくるだけなんだからパーティーなんてしなくても…… だけど千和以外は初対面だからな、家で軽く食事会的なものをするだけでいいと思うぞ。

「それでは鬼島グループの名が廃りますわ! それに…… 何としてもわたくし達の関係を認めてもらわないと」

 親父達ならそこまで心配しなくても認めてくれそうだけどな、テキトーだし。

「桃太様特製の生おだんごを食べ放題して太れませんわー!!」

 えぇーーーっ!? な、生おだんご…… 

「豪華なパーティーが必要かは分かりませんが、確かにご両親に認めてもらわないと太れませんね」

「パーティーに関してはあおに任せるけど、生おだんごだけは何としてでも食べたいもんな!」

「えへへっ、今度は太るための食べ放題だからね? 桃くん」

 冬休みの生おだんご試食とは違うのか…… えっ? それじゃあ下手したら四人同時に太っちゃうよ?

「桃太様は心配いりませんわ、ただわたくし達のわがままですから」

「そうそう! 太ってもあたし達のせいだから」

「桃太さんは遠慮せずに食べさせ放題ですよ」

 また四人で勝手に決めて…… 太らせたら俺にだって責任があるんだから。
 
「みんなで一緒の時期に太ったら、痩せる時期も一緒になっちゃう、それがいいんだぁ…… えへへっ、不安も沢山あるけど楽しみ」

 …………

「分かった、親父達が帰って来て、店が落ち着いたらしよう、生おだんご食べ放題、その代わり…… 太ってもみんなで頑張ろう」

 四人が太って…… 四人が痩せた後が大変になるな。

「太っている時と痩せた後のサポートは手配してありますから大丈夫ですわ! あと、その他にも……」

「うふふっ、みんなで色々調べてるんですよ?」

 そう言って美鳥がテーブルに並べたのは、太った人が見るための雑誌や、痩せた時の雑誌などだった。

「へへっ、太っている時に気を付ける事とかちゃんと勉強してるんだよ」

「痩せた後の事もね? ああ、桃くんのおだんごで太るなんて…… 想像しただけで幸せ……」

 それぞれ何かを想像して幸せそうな顔をしているけど、まずは親父達が帰って来て、色々話をしてからだからね? ちゃんと聞いてるかな? おーい! ……駄目だ、みんな想像の中の世界に行っている。

「えへへっ、私達の…… きっと可愛い」

「うふふっ…… そうですね」

「へへっ、へへへっ、あたしと桃太の……」

「ああ、素晴らしいですわ……」

 ……さて、お茶でも飲むか。


 ◇


「きびちゃん、もうすぐ日本ね…… 楽しかったわぁ……」

「…………」

「桃ちゃん、元気にしてるかしら…… うふっ、まさか千和ちゃんだけじゃなくて他にも三人のお嫁さんを見つけちゃうなんて……」

「…………」

「帰ったらおばあちゃんなんてことはないわよね? うふふっ」

「…………」

「きびちゃん? ……きゃっ! どうしたの?」

「…………」

「んふっ、もう…… きびちゃんったら……」


 ◇


「えへっ、もう…… 桃くんったら……」

「またですの? ……凄いですわね」

「桃太は寝ながらスイカを食うのが得意なんだよ」

「私もやってみたいです……」

 みんなでこたつに入り、おじさん達が帰って来たらどうするかを女の子だけで話していると、桃くんがいつの間にか横になって寝ていた。

 パーティー用に着る服などの話題でついつい盛り上がってしまい、桃くん的には暇になっちゃったのかな?

 お詫びに私のスイカを口元に持っていくとパクパクと食べ始め、可愛さと面白さで私達は笑顔になった。

 でも、こんな事を出来るのは太る前だけかなぁ…… いずれ桃くんだけのスイカじゃなくなるし、その時は仲良く食べてくれればいいけど…… 

 そんな未来を想像しながら私は、スイカを口に含んで寝ている桃くんの頭を撫でた。


 ◇


 ……んっ? あぁ、寝てしまったのか。

 四人が親父達との顔合わせのために色々と話し合っていて、気付けばパーティーの時の服装や、親父達が帰宅後のおだんごの食べ方などを話し始めたから、寝たふりしようと思って横になったら本当に寝ちゃったんだな。

 台所の方からは晩ごはんを作っているのか、楽しそうな話し声と料理の良い匂いがする。
 
 さて、俺ももうそろそろ起きるか…… んっ? 目の前に壁?

「うぅっ…… 千和ちゃんのように上手く食べさせられません」

 美鳥の声…… って、おい! 

「……何してるんだ?」

「桃太さん…… わ、私だって千和ちゃんみたいに寝ている桃太さんに食べさせたいです!」

 目の前にあったのは壁ではなく大福だった。
 これを寝ている俺に食べさせたら窒息するんじゃ…… いや、それを口に出したら間違いなく美鳥は泣く! どうすればいいんだ?

「うぅぅ…… こんな食べづらいのは嫌ですよね…… はぅっ!?」

 寝ながらじゃなくて、今食べちゃえば美鳥も傷付かずに済むんじゃないか? 他の三人にはバレないように…… ほら、美鳥も寝たふりをして、声も我慢するんだぞ?

「は、はい…… んっ!」

 美鳥が差し出している大福を口に含む。
 モチモチして中心には…… これは豆大福だな。

「んっ、お、美味しいですか?」

 うん、美味い、最高だよ。

「うふっ、嬉しいです……」

 せっかく二個並べられているし、もう一個もいただくかな…… うん、こっちも美味い。

「桃太さんが夢中で食べてます…… これは確かに幸せかもしれませんね」

 まるで子供のように美鳥に頭を撫でられながら大福を食べている俺。

「……桃太さん」

 そんな姿を見てお腹が空いてきたのか、美鳥の手がこたつの中にあるおだんごに伸びてきた。

 ……んっ? 手が伸びてきた? 俺の頭を撫でている美鳥の手が伸びる事ってあるのか? 

「へへっ…… 二人でこっそりつまみ食いしてズルいぞ…… あたしもおだんご食べてやる」

 いつの間にか傍にいてこたつの中に手を入れている輝衣、そしてこたつに潜り込むように頭から入り……

 …………

「もうすぐご飯の準備が出来ますわよ…… って、あら、輝衣さん、顔が真っ赤ですわよ?」

「へ、へへっ…… こたつに入り過ぎた……」

「もう! ダラダラし過ぎですわよ…… んっ? 何かニオイますわね」

「あ、汗かいちゃったかなぁー、へへへっ」

「……きーちゃん、口に練乳付いてるよ?」

「えっ!? ちゃんと残さず食べたはず…… あっ」

「えへへっ…… 桃くん?」

 な、何でしょうか、千和さん。

「……お夜食の時、覚えておいてね? あっ、あときーちゃんはお夜食抜きで」

「そ、そんなぁ! 元はと言えば、みいが桃太に大福を食べさせていたのが悪い……」

「えっ? 私はそんな事してませんよ?」

「お、おい! 嘘をつくな……」

「……私のおだんごを横取りした罰です」

「みいぃぃ…… だからごめんって……」

「ダメです」

「うぅっ…… そんなぁ……」

 ガクッと肩を落とした輝衣を横目に、素知らぬ顔で晩ごはんをテーブルに運ぶ葵。

「み、皆さん、とりあえず温かいうちに食べましょう?」

 そんな葵の様子を見て、輝衣は何かを思い出したかのようにハッとした顔をして

「そういえば、あお、お父さんのお見舞いに行った日……」

「なっ!? な、何の話ですか? わたくしにはサッパリ…… お、おほほっ」

「そう言われると桃太さん、いつもよりおだんごを食べさせる時に元気が……」

「そ、そんな事を言うのでしたら、この間千和さんが桃太様と二人きりで……」

 晩ごはんの前にお互いの暴露大会が始まってしまった! ……やれやれ。
 

 ……他人事のように言ってるな、って? いやいや、この後のケアをするのが俺の仕事だ。

 あーあ、今夜もおだんごを頑張って作るかぁ……
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