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30.花ざかり :補記
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並べられた簡易の寝台は半分ほどが埋まっていて、風通しもよく清潔に保たれている。診療所はここを拝領してから最初に立ち上げた事業で、三年経った今は人材の育成も進み、安価な医療機関として定着しつつある。
ジュノビオは患者の胸元を直し、書類に簡単な記録をつけた。
「経過は問題なさそうだ。二月に一度の診察は続けてくれ。また私がこちらへ来た時も、念のため診せてほしい」
「分かりました。ありがとうございます」
ほっとした様子で頷き、衣服を整えるこの女性は、以前ジュノビオが胸の腫瘍を切除した患者だ。
ロプタルを介して手に入れたナバルス族の麻酔薬は、今や外科手術には欠かせないものになっている。便利な薬は同時に悪用の危険性も孕んでいるため、流通や所持を厳密に管理する仕組みも普及を進めている。
「きょうは、リセルお兄ちゃんはいないの?」
母親の膝にまとわりつきながら、幼い少女が問う。
「残念だが、リセルは朝からどこかへ出掛けた。最近忙しそうなんだ」
「ふーん。いそがしいから、ミーナと遊べないんだね?」
「そうだ」
「これ、ミーナ。やめなさい。……申し訳ありません」
母親が困ったように少女を窘める。前の診察の時にリセルが遊んでやっていたから、楽しみについて来たのかもしれない。
「額の花は、リセルの真似か? 可愛いな」
「えへへ。いいでしょ~」
少女は小さな手で前髪をのけて、赤い顔料で描いた五弁花を誇らしげに見せる。
この街でリセルの人気が高まると、すぐに誰かが真似をし始めた。花が刑罰の跡だといういきさつは、すっかりどこかへ消えてしまい、今では装いの一部のように受け入れられている。
「新年の祭りが近いからか、最近よく見かけるな」
「ええ。女の子は美しく、男の子は勇敢に育つように願って描くんです。あ、最近は結婚式で、花嫁の額にアルカナを描くことも多いんですよ」
流行に疎いジュノビオのために丁寧に説明して、若い母親は柔らかく微笑んだ。
花が咲き乱れる州都の大通りを、ゆっくり歩いて屋敷へ戻る。
街は極めて平和だ。少し離れた所に若い護衛が付いてはいるが、店を覗き込んでばかりでまるで緊張感がない。
ロベル海に面したネブ州は一年中温暖で、漁業のほかに、海運や商業が盛んな場所だ。結婚の祝いに皇帝陛下から領地をやると言われた際に、リセルがうっかり「でかいエビの獲れるところがいい」と言ったせいで、ここを賜ることになった。
(大兄上は、笑い転げておられたな)
当時を思い出すと頬が緩んでしまう。
帝国の最北であるルナーデルとバロア州に加え、最南端のネブ州を拝領してしまったジュノビオは、帝国の民からは“うだつの上がらない皇弟”と目されている。両州の移動には時間も金もかかり、蓄財もままならない。
しかし、ジュノビオとリセルが南北を行き来する道中に見聞きし、仕入れる情報は、今やザイラスの統治に欠かせないものとなっている。二人の移動に合わせて、アマレノやロプタルや商人たちも気まぐれについて来るから、いつの間にか交易上も有益な“旅団”と呼べるものになりつつあった。
(しばらくは、やめられないな……)
何よりも、リセルと共に歩む旅は純粋に楽しい。
美しい風景に心動かされ、珍しいものを記録し、美味しい食事に舌鼓を打つ。リセルの弾けるような笑顔を見るだけで、一緒に旅をしてよかったと心から思えるのだ。
「殿下! 今日はお一人ですか?」
時々立ち寄る食堂の店主が、気安げに声を掛けてくる。やはり皆リセルに会いたがる。
「リセルは最近忙しそうなんだ。今日も朝から出掛けている」
先ほどと同じ説明を繰り返しながら苦笑する。
「そうですか。殿下はお寂しいかもしれませんが、それは楽しみだ。きっとまた何か面白い事を考えていなさる」
店主は満足そうに頷いた。
確かにその気持ちは理解できる。リセルがアマレノの仲間と何やら飛び回っている時は、大抵賑やかな催しが開かれたり、新しい商品が売り出されたり、心躍る変化が起きると相場が決まっている。
大らかに受け入れてくれる街の住民とは違って、州都の役人の中には未だに頑なな態度を貫く者も多い。頭の柔らかい人材を採用するよう働きかけてはいるが、中々追いついていない。
「沖合に警備付きの台船を浮かべて、こそこそと荷を運び、何やら企てておられるようで」
待ち構えていた港湾部局の役人が、苦々しい顔で訴える。
「港の使用に支障が出ているのか?」
「……いえ。港ではなく、西の浜の話です」
「なら、別に問題はないな」
ジュノビオは短く話を切って、茶を一口飲む。
浜には小型の漁船があるだけで、この男の仕事とは無関係だ。屋敷にまで押しかけて進言するのなら、もっと面白い話を持ってきてほしい。
「それが、荷は厳重に防水されていて、荷運びの者によると硫黄の匂いがしたとかで」
「ほう、それで?」
たまった書類を見ながら適当に相槌を打つ。
反応が気に食わないらしく、役人の顔色が悪くなる。
「ですから奥方様が、火薬を集めているのではないか、と申しているのです。おまけに取り巻きは素性も知れない怪しい人物ばかりで……。元属国の王子で元軍人なのですから、もっと厳重に監視すべきです」
「ふむ。火薬を何に使うのかは知らんが、取り巻きは全員私も知っている人物だ」
ジュノビオは怪しい仲間の顔を思い浮かべて、緩く口角を上げた。
アマレノの人間に素性を問うなんて馬鹿げている。しかし少なくともリセルに危険が及ぶことには、絶対に協力しない面子が揃っている。
強面のエスメルなど少々距離が近すぎて腹が立つが、リセルに関係性を問うたところ、「うーん、母親?」という答えが返ってきた。小さいリセルのおしめまで替えた間柄らしいから、嫉妬は我慢しておくことにする。
「殿下、笑い事ではございません。下手をすれば武装蜂起の可能性も」
「武装蜂起?」
「そうです。妃殿下という立場を利用して力を蓄え、帝国の転覆を図る気やもしれません!」
この地方特有のゆったり丈の長い衣装を揺らして、役人が力説する。何とも想像力の豊かな男だ。
そしてリセルの事を何も知らない。
「お前の意見は分かった。次は具体的に危険な兆候が見られたら知らせてくれ」
「そんな、のんきな事を!」
「なら、どうしたいんだ?」
「やはり男の妃などお側に置かれては」
「黙れ。そこまでだ」
ジュノビオの一喝に、役人は石のように固まった。太ってたるんだ喉がごくりと上下する。
役人の間では、死神の金の目で睨まれると、寿命が三年縮まると噂されているらしい。
「レンツ、この者は二度と取り次ぐな」
「かしこまりました」
「殿下……!」
書類に目を戻しながら軽く手を振ると、侍従が役人を引きずって速やかに出て行った。
建設的な話ならいくらでも聞くが、漠然とした不満や不安をリセルに転嫁する者に用はない。
(リセルを排除などしてみろ。州都の民が武装蜂起するぞ)
想像してにやりと笑う。そうなればジュノビオの身も無事では済まなそうだ。
「イルファスは、いつ来るって?」
「紀元祭の前にこちらに寄って、一緒に帝都へ向かうそうです。……って、公式の知らせも来てますよね?」
かまをかけられたことを察して、ナナが可愛らしく頬を膨らませた。
紀元祭は新皇帝の即位以降、帝都で親睦を深めるだけの穏やかな行事へと変わっている。
「ははは、ナナに来る手紙の方が、いつも情報が速くて正確だからな。役人の書く文書は、回りくどくていただけない」
「でも、わざわざネブ州を回って帝都へ行くなんて、またサボりですよ? せっかくクルトの商人との協定が進んでるんだから、ぎりぎりまで領地で仕事すればいいのに」
茶を注ぎながら顔をしかめて、ナナがこき下ろす。
皇弟に侍女がここまで言うのもどうかと思うが、ナナとイルファスが頻繁に文を交わして、会えば二人だけの時間を過ごしているのは、屋敷の皆の知る所だ。
「体の方はだいぶいいのだろう?」
「……ええ。もう発作が出ることは、ほとんどないらしいです」
ジュノビオの問いかけに、深い紫の瞳が嬉しそうに揺れる。
イルファスはロプタルの長老が調合した薬を飲み続け、何とか長年の中毒症状を脱した。ガラ州の経営を少しずつ取り戻し、クルトの商人への介入にも意欲を見せている。
ようやく娘らしい凹凸が出て来たナナを見つめながら、嫁にやる日も近いのではと思い至る。もしかすると近々、西部でも額に花を描く装いが流行するかもしれない。
「お風呂終わった! お待たせ」
「それでは私はこれで、失礼いたします」
短い髪を拭きながら、風呂から上がって来たリセルと入れ替わりに、茶を淹れ終えたナナが、さりげなく夫婦の寝室を辞して消えてゆく。
「あ、カリダから手紙が来てる」
顔を輝かせたリセルは、封を開けながら寝台へ上がって胡坐をかいた。
湯で火照った白い肌に羽織っているのは、どこぞの貴族からの贈り物に混じっていた薄衣だ。明らかにそういう目的で作られた透ける衣装を、リセルは「肌ざわりがいい」と気に入って頻繁に着ている。ジュノビオは毎度目のやり場に困って、無駄に茶を啜る羽目になる。
「おおー、カリダとアニヤの学校の一期生が来月、役人の試験を受けるんだって! すごいな!」
リセルは感心しながら、繰り返し便箋を指でなぞって確かめる。
リセルに引き合わされたカリダとアニヤは意気投合し、帝都で女子の通える私塾を設立した。今年から性別を問われなくなった官吏登用試験へ、生徒を送り出そうとしているらしい。
皇帝は既に私塾に目をつけていて、軌道に乗れば正式な学校に格上げすることも視野に入れている。
「春には、ネズミ……? いや絶対ちがうな……」
「どれ、私が読もうか?」
「いらない。自分で読む」
差し出した手は払いのけられ、リセルは便箋を抱えて背中を向けてしまう。
文字はカリダから習うと心に決めているようで、ジュノビオが教えてやろうと言っても、絶対に首を縦に振らなかった。たどたどしい字で綴られた手紙は、いつもカリダにだけ宛てられていて、正直な所ものすごく羨ましい。
嫉妬心が抑えきれなくなって、背後から腕を回して首筋に食らいつく。
「ちょっと、これ置くから、待って……」
大切そうに庇う便箋を取り上げて脇机に置き、柔らかい唇をキスで塞いだ。
リセルの口は小さくて、ジュノビオの全部は入りきらない。
それでも一生懸命に舐めては吸い付き、まるで大きな飴でも食べているかの様に、夢中で行為に没頭する。喉に触れると苦しいのか、ずらして頬を膨らませ、少しでもたくさん口に含もうと努力を怠らない。
「美味しそうに舐めるな……」
「んむ……べ、別に、美味しくないよ!」
思わず零した呟きに、リセルがふわりと頬を染めて顔を上げる。唾液が唇から滴って、眩暈がするほど艶っぽい。散々大胆な事をしておきながら、いつまで経っても恥じらう姿がたまらない。
甘い唇を味わって、ほっそりした体に舌を這わせる。
「ん……んぁ、あ」
首筋や脇や、平たい胸や腹も、どこに口付けても敏感に反応して、あえかな嬌声が上がる。
従順に開いた脚を掲げて、色づきながらひくひくと誘う場所へ一物を沈めた。
(まるで犯してくれといわんばかりの体、か)
リセルが何かの拍子に、イルファスからそう言われたと白状した時は怒り狂ったが、落ち着いて眺めれば納得できないでもなかった。
小柄で華奢ではあるものの、女性と見紛うわけでは全くない。ただ関節は柔軟で、色白の肌は滑らかできめ細かく、性器の色もほんのりと淡い。体毛は下生えがわずかに生えている程度で、最初はあまりの幼気さに、本当に触れていいものなのか若干戸惑った。
(アマレノの女神の、化身だったか……)
ゆるゆると腰を使いながら、蠱惑的な身体に自分の陰茎が出入りする光景をうっとり眺める。
性愛の女神のくせに、この体はジュノビオしか知らないのだ。蕩ける姿も恥じらう姿も、ジュノビオだけが全部独り占めしている。その後ろ暗い喜びで、ぞくりと背筋が粟立つ。
「……ュノ! ジュノ! も、いやっ……っ」
切羽詰まったリセルの声に、はっと我に返る。
美しい紫の瞳に涙を溜めている。浅い所をゆっくりと擦るだけの刺激に、リセルが焦れてくたくたになっていた。
「すまない。ぼうっとしてた」と慌てて謝り、一気に熱いぬかるみへ押し入る。
「っあああっ! っ……いっ、……馬鹿っ!!」
急な衝撃に見開いた目が涙を零す。軽く達したのか、狭い腹の中が痙攣している。
構わずに強引に出入りすると、甘い悲鳴が絶え間なく上がった。のけ反った薄い腹の内側を、形が変わるほどかき混ぜて、リセルを存分に味わう。
(なんという僥倖だろうか)
下腹部がリセルの尻にぴたりと触れ合うまで入り込み、最奥にたっぷり注ぎ込む。
「っふあ、……ジュノっ、死んじゃうって……」
腹をさすって震えながら、リセルが虚ろな瞳を瞬く。頬は鮮やかなばら色に染まっている。
名残惜しく身を引くと、閉じ切らない孔がひくりと蠢いて誘う。
「……リセル、悪かった。少し休憩してからもう一度」
「ダメ! もうおしまい! ……途中で上の空になった罰だ!」
リセルはぷりぷり怒りながら横になり、胎児の様に体を丸めて防御の姿勢に入った。ジュノビオの精液が小さい尻を伝って零れる。これもまた目の毒だ。
「だめ、ですか」
「今日はおしまいです! 明日また、早いから。新年のお祭りだから」
しょんぼり肩を落としたジュノビオは、口づけだけしてそれ以上を諦める。
「御意に……」
ただし、女神の体を綺麗に清めて寝間着を着せ、抱きしめて眠る栄誉は今日も手放さなかった。
ロベル海は波の穏やかな海域だが、州都に面したこの湾は特に、風のない日は鏡の様に凪ぐ。
日が暮れて薄暗い砂浜にはすでに多くの住人が詰め掛け、食べ物の屋台が長く軒を連ねている。沖に出ているのも大半が見物のための船で、漁船までが客を乗せて繰り出しているようだ。
「何が始まるのか、まだ教えてくれないのか?」
「まだだよ。見てたら分かるから」
そう言って笑うリセルに連れて来られたのは、砂浜の真ん中に位置する桟敷席だった。
警備によって住人から多少離されてはいるが、リセルに手を振る子供たちの顔が見える程度の距離だ。真新しい板敷に屋敷の人間が絨毯を広げて座布団を置き、居心地の良さそうな空間が出来上がっている。
「食べる?」
リセルは腰を下ろすなり、屋台で買って来た串焼きをジュノビオの前に差し出した。
「食べる」
「あ、そっちは食べかけだってば」
左手の紙包みを無視して、右手に持ったリセルの歯型のついた肉を頬張る。
腕を掴んだ拍子に、傷痕に指が触れた。
「こっちの方が美味しい」
「もう、何それ。せっかくいっぱい買ったのに」
けらけら笑いながら、リセルは食べられてしまった串を振り回した。
リセルの右手は日常生活に困らない程度には回復したが、さすがに剣を振るうことは難しかった。「妃に剣なんていらないから」と明るく笑ってはいたが、暇を見つけては左手でこっそり稽古していることを、ジュノビオは知っている。
「何なに? 急にどうしたんだ?」
にわかに愛おしさが込み上げて、額の花に口づける。この程度なら人前でも許してくれるだろう。
「ほら、始まるよ!」
小卓に串焼きを置いたリセルに引っ張られて、暗くなった海に視線を移す。
「うわ……!」
見るべきは海ではなく、空だった。
ぱっと夜空が鮮やかな色の光で染まって、耳をつんざく爆音が遅れてやって来る。二つ、三つと光の花が咲いて、拍手と歓声が巻き起こった。
「花火を用意してたのか!」
「え? ジュノなら見た事あるだろ? 全然予想してなかった?」
「いや、まさか海上から……こんな近くで見るのは初めてだ。色も大きさも全然違う……すごいな……!」
祝祭の帝都で郊外から打ち上がる花火を見たことはある。ただし記憶にあるのは、ぽこぽこと小さく開く白い花で、これは全く別物だ。
見上げた空一面が何色もの花で彩られ、落ちてくる火の粉に手が届きそうなほど近い。音があまりにも大きくて、年寄りが腰を抜かさないか心配になるほどだ。
「東方の国から、技術者ごと運んでもらったんだ。台船から打ち上げるのは俺の発案。失敗しても家が燃えなくて安心だろ? 上手く行ったら今度、陛下が来る時に見せられるかなって。船の上で見るのもいいかもよ」
にこにこと笑うリセルの顔が、花火に照らされてきらきらと光る。
褒め称えようとしても、上手く言葉が出てこない。
「どうしたの?」
「いや……、私はすごい妃を娶ったと思って、感激している」
「あはは! ちなみに浜で見る分にはタダだけど、見物の船からは金を取ってるよ。屋台の店主からも協賛金を貰ってるから、商売としては、まあまあかな」
感動を吹き飛ばすかのように、しっかり現実的な魅力も披露してくる。リセルと一緒にいると驚かされることばかりで、人生がいくつあっても足りない気がする。
「ね、ジュノ。俺もう、しばらく忙しくないから」
「うん?」
意図が分からずリセルを見下ろすと、照れたように眉を下げ、腕にしがみついて来る。
「今日はいっぱいしていいよ。……明日も」
ぽそっと耳に注ぎ込まれた甘い誘いに、ぶわりと体温が上がる。三十路を迎えても一向に収まらないこの熱は、どう処理したらいいのだろうか。
せっかくの素晴らしい新年の祝いがもったいないが、一刻も早く屋敷に帰りたい。
ジュノビオは夜空を埋め尽くすように咲く大輪の花を、半分上の空で眺めた。
ジュノビオは患者の胸元を直し、書類に簡単な記録をつけた。
「経過は問題なさそうだ。二月に一度の診察は続けてくれ。また私がこちらへ来た時も、念のため診せてほしい」
「分かりました。ありがとうございます」
ほっとした様子で頷き、衣服を整えるこの女性は、以前ジュノビオが胸の腫瘍を切除した患者だ。
ロプタルを介して手に入れたナバルス族の麻酔薬は、今や外科手術には欠かせないものになっている。便利な薬は同時に悪用の危険性も孕んでいるため、流通や所持を厳密に管理する仕組みも普及を進めている。
「きょうは、リセルお兄ちゃんはいないの?」
母親の膝にまとわりつきながら、幼い少女が問う。
「残念だが、リセルは朝からどこかへ出掛けた。最近忙しそうなんだ」
「ふーん。いそがしいから、ミーナと遊べないんだね?」
「そうだ」
「これ、ミーナ。やめなさい。……申し訳ありません」
母親が困ったように少女を窘める。前の診察の時にリセルが遊んでやっていたから、楽しみについて来たのかもしれない。
「額の花は、リセルの真似か? 可愛いな」
「えへへ。いいでしょ~」
少女は小さな手で前髪をのけて、赤い顔料で描いた五弁花を誇らしげに見せる。
この街でリセルの人気が高まると、すぐに誰かが真似をし始めた。花が刑罰の跡だといういきさつは、すっかりどこかへ消えてしまい、今では装いの一部のように受け入れられている。
「新年の祭りが近いからか、最近よく見かけるな」
「ええ。女の子は美しく、男の子は勇敢に育つように願って描くんです。あ、最近は結婚式で、花嫁の額にアルカナを描くことも多いんですよ」
流行に疎いジュノビオのために丁寧に説明して、若い母親は柔らかく微笑んだ。
花が咲き乱れる州都の大通りを、ゆっくり歩いて屋敷へ戻る。
街は極めて平和だ。少し離れた所に若い護衛が付いてはいるが、店を覗き込んでばかりでまるで緊張感がない。
ロベル海に面したネブ州は一年中温暖で、漁業のほかに、海運や商業が盛んな場所だ。結婚の祝いに皇帝陛下から領地をやると言われた際に、リセルがうっかり「でかいエビの獲れるところがいい」と言ったせいで、ここを賜ることになった。
(大兄上は、笑い転げておられたな)
当時を思い出すと頬が緩んでしまう。
帝国の最北であるルナーデルとバロア州に加え、最南端のネブ州を拝領してしまったジュノビオは、帝国の民からは“うだつの上がらない皇弟”と目されている。両州の移動には時間も金もかかり、蓄財もままならない。
しかし、ジュノビオとリセルが南北を行き来する道中に見聞きし、仕入れる情報は、今やザイラスの統治に欠かせないものとなっている。二人の移動に合わせて、アマレノやロプタルや商人たちも気まぐれについて来るから、いつの間にか交易上も有益な“旅団”と呼べるものになりつつあった。
(しばらくは、やめられないな……)
何よりも、リセルと共に歩む旅は純粋に楽しい。
美しい風景に心動かされ、珍しいものを記録し、美味しい食事に舌鼓を打つ。リセルの弾けるような笑顔を見るだけで、一緒に旅をしてよかったと心から思えるのだ。
「殿下! 今日はお一人ですか?」
時々立ち寄る食堂の店主が、気安げに声を掛けてくる。やはり皆リセルに会いたがる。
「リセルは最近忙しそうなんだ。今日も朝から出掛けている」
先ほどと同じ説明を繰り返しながら苦笑する。
「そうですか。殿下はお寂しいかもしれませんが、それは楽しみだ。きっとまた何か面白い事を考えていなさる」
店主は満足そうに頷いた。
確かにその気持ちは理解できる。リセルがアマレノの仲間と何やら飛び回っている時は、大抵賑やかな催しが開かれたり、新しい商品が売り出されたり、心躍る変化が起きると相場が決まっている。
大らかに受け入れてくれる街の住民とは違って、州都の役人の中には未だに頑なな態度を貫く者も多い。頭の柔らかい人材を採用するよう働きかけてはいるが、中々追いついていない。
「沖合に警備付きの台船を浮かべて、こそこそと荷を運び、何やら企てておられるようで」
待ち構えていた港湾部局の役人が、苦々しい顔で訴える。
「港の使用に支障が出ているのか?」
「……いえ。港ではなく、西の浜の話です」
「なら、別に問題はないな」
ジュノビオは短く話を切って、茶を一口飲む。
浜には小型の漁船があるだけで、この男の仕事とは無関係だ。屋敷にまで押しかけて進言するのなら、もっと面白い話を持ってきてほしい。
「それが、荷は厳重に防水されていて、荷運びの者によると硫黄の匂いがしたとかで」
「ほう、それで?」
たまった書類を見ながら適当に相槌を打つ。
反応が気に食わないらしく、役人の顔色が悪くなる。
「ですから奥方様が、火薬を集めているのではないか、と申しているのです。おまけに取り巻きは素性も知れない怪しい人物ばかりで……。元属国の王子で元軍人なのですから、もっと厳重に監視すべきです」
「ふむ。火薬を何に使うのかは知らんが、取り巻きは全員私も知っている人物だ」
ジュノビオは怪しい仲間の顔を思い浮かべて、緩く口角を上げた。
アマレノの人間に素性を問うなんて馬鹿げている。しかし少なくともリセルに危険が及ぶことには、絶対に協力しない面子が揃っている。
強面のエスメルなど少々距離が近すぎて腹が立つが、リセルに関係性を問うたところ、「うーん、母親?」という答えが返ってきた。小さいリセルのおしめまで替えた間柄らしいから、嫉妬は我慢しておくことにする。
「殿下、笑い事ではございません。下手をすれば武装蜂起の可能性も」
「武装蜂起?」
「そうです。妃殿下という立場を利用して力を蓄え、帝国の転覆を図る気やもしれません!」
この地方特有のゆったり丈の長い衣装を揺らして、役人が力説する。何とも想像力の豊かな男だ。
そしてリセルの事を何も知らない。
「お前の意見は分かった。次は具体的に危険な兆候が見られたら知らせてくれ」
「そんな、のんきな事を!」
「なら、どうしたいんだ?」
「やはり男の妃などお側に置かれては」
「黙れ。そこまでだ」
ジュノビオの一喝に、役人は石のように固まった。太ってたるんだ喉がごくりと上下する。
役人の間では、死神の金の目で睨まれると、寿命が三年縮まると噂されているらしい。
「レンツ、この者は二度と取り次ぐな」
「かしこまりました」
「殿下……!」
書類に目を戻しながら軽く手を振ると、侍従が役人を引きずって速やかに出て行った。
建設的な話ならいくらでも聞くが、漠然とした不満や不安をリセルに転嫁する者に用はない。
(リセルを排除などしてみろ。州都の民が武装蜂起するぞ)
想像してにやりと笑う。そうなればジュノビオの身も無事では済まなそうだ。
「イルファスは、いつ来るって?」
「紀元祭の前にこちらに寄って、一緒に帝都へ向かうそうです。……って、公式の知らせも来てますよね?」
かまをかけられたことを察して、ナナが可愛らしく頬を膨らませた。
紀元祭は新皇帝の即位以降、帝都で親睦を深めるだけの穏やかな行事へと変わっている。
「ははは、ナナに来る手紙の方が、いつも情報が速くて正確だからな。役人の書く文書は、回りくどくていただけない」
「でも、わざわざネブ州を回って帝都へ行くなんて、またサボりですよ? せっかくクルトの商人との協定が進んでるんだから、ぎりぎりまで領地で仕事すればいいのに」
茶を注ぎながら顔をしかめて、ナナがこき下ろす。
皇弟に侍女がここまで言うのもどうかと思うが、ナナとイルファスが頻繁に文を交わして、会えば二人だけの時間を過ごしているのは、屋敷の皆の知る所だ。
「体の方はだいぶいいのだろう?」
「……ええ。もう発作が出ることは、ほとんどないらしいです」
ジュノビオの問いかけに、深い紫の瞳が嬉しそうに揺れる。
イルファスはロプタルの長老が調合した薬を飲み続け、何とか長年の中毒症状を脱した。ガラ州の経営を少しずつ取り戻し、クルトの商人への介入にも意欲を見せている。
ようやく娘らしい凹凸が出て来たナナを見つめながら、嫁にやる日も近いのではと思い至る。もしかすると近々、西部でも額に花を描く装いが流行するかもしれない。
「お風呂終わった! お待たせ」
「それでは私はこれで、失礼いたします」
短い髪を拭きながら、風呂から上がって来たリセルと入れ替わりに、茶を淹れ終えたナナが、さりげなく夫婦の寝室を辞して消えてゆく。
「あ、カリダから手紙が来てる」
顔を輝かせたリセルは、封を開けながら寝台へ上がって胡坐をかいた。
湯で火照った白い肌に羽織っているのは、どこぞの貴族からの贈り物に混じっていた薄衣だ。明らかにそういう目的で作られた透ける衣装を、リセルは「肌ざわりがいい」と気に入って頻繁に着ている。ジュノビオは毎度目のやり場に困って、無駄に茶を啜る羽目になる。
「おおー、カリダとアニヤの学校の一期生が来月、役人の試験を受けるんだって! すごいな!」
リセルは感心しながら、繰り返し便箋を指でなぞって確かめる。
リセルに引き合わされたカリダとアニヤは意気投合し、帝都で女子の通える私塾を設立した。今年から性別を問われなくなった官吏登用試験へ、生徒を送り出そうとしているらしい。
皇帝は既に私塾に目をつけていて、軌道に乗れば正式な学校に格上げすることも視野に入れている。
「春には、ネズミ……? いや絶対ちがうな……」
「どれ、私が読もうか?」
「いらない。自分で読む」
差し出した手は払いのけられ、リセルは便箋を抱えて背中を向けてしまう。
文字はカリダから習うと心に決めているようで、ジュノビオが教えてやろうと言っても、絶対に首を縦に振らなかった。たどたどしい字で綴られた手紙は、いつもカリダにだけ宛てられていて、正直な所ものすごく羨ましい。
嫉妬心が抑えきれなくなって、背後から腕を回して首筋に食らいつく。
「ちょっと、これ置くから、待って……」
大切そうに庇う便箋を取り上げて脇机に置き、柔らかい唇をキスで塞いだ。
リセルの口は小さくて、ジュノビオの全部は入りきらない。
それでも一生懸命に舐めては吸い付き、まるで大きな飴でも食べているかの様に、夢中で行為に没頭する。喉に触れると苦しいのか、ずらして頬を膨らませ、少しでもたくさん口に含もうと努力を怠らない。
「美味しそうに舐めるな……」
「んむ……べ、別に、美味しくないよ!」
思わず零した呟きに、リセルがふわりと頬を染めて顔を上げる。唾液が唇から滴って、眩暈がするほど艶っぽい。散々大胆な事をしておきながら、いつまで経っても恥じらう姿がたまらない。
甘い唇を味わって、ほっそりした体に舌を這わせる。
「ん……んぁ、あ」
首筋や脇や、平たい胸や腹も、どこに口付けても敏感に反応して、あえかな嬌声が上がる。
従順に開いた脚を掲げて、色づきながらひくひくと誘う場所へ一物を沈めた。
(まるで犯してくれといわんばかりの体、か)
リセルが何かの拍子に、イルファスからそう言われたと白状した時は怒り狂ったが、落ち着いて眺めれば納得できないでもなかった。
小柄で華奢ではあるものの、女性と見紛うわけでは全くない。ただ関節は柔軟で、色白の肌は滑らかできめ細かく、性器の色もほんのりと淡い。体毛は下生えがわずかに生えている程度で、最初はあまりの幼気さに、本当に触れていいものなのか若干戸惑った。
(アマレノの女神の、化身だったか……)
ゆるゆると腰を使いながら、蠱惑的な身体に自分の陰茎が出入りする光景をうっとり眺める。
性愛の女神のくせに、この体はジュノビオしか知らないのだ。蕩ける姿も恥じらう姿も、ジュノビオだけが全部独り占めしている。その後ろ暗い喜びで、ぞくりと背筋が粟立つ。
「……ュノ! ジュノ! も、いやっ……っ」
切羽詰まったリセルの声に、はっと我に返る。
美しい紫の瞳に涙を溜めている。浅い所をゆっくりと擦るだけの刺激に、リセルが焦れてくたくたになっていた。
「すまない。ぼうっとしてた」と慌てて謝り、一気に熱いぬかるみへ押し入る。
「っあああっ! っ……いっ、……馬鹿っ!!」
急な衝撃に見開いた目が涙を零す。軽く達したのか、狭い腹の中が痙攣している。
構わずに強引に出入りすると、甘い悲鳴が絶え間なく上がった。のけ反った薄い腹の内側を、形が変わるほどかき混ぜて、リセルを存分に味わう。
(なんという僥倖だろうか)
下腹部がリセルの尻にぴたりと触れ合うまで入り込み、最奥にたっぷり注ぎ込む。
「っふあ、……ジュノっ、死んじゃうって……」
腹をさすって震えながら、リセルが虚ろな瞳を瞬く。頬は鮮やかなばら色に染まっている。
名残惜しく身を引くと、閉じ切らない孔がひくりと蠢いて誘う。
「……リセル、悪かった。少し休憩してからもう一度」
「ダメ! もうおしまい! ……途中で上の空になった罰だ!」
リセルはぷりぷり怒りながら横になり、胎児の様に体を丸めて防御の姿勢に入った。ジュノビオの精液が小さい尻を伝って零れる。これもまた目の毒だ。
「だめ、ですか」
「今日はおしまいです! 明日また、早いから。新年のお祭りだから」
しょんぼり肩を落としたジュノビオは、口づけだけしてそれ以上を諦める。
「御意に……」
ただし、女神の体を綺麗に清めて寝間着を着せ、抱きしめて眠る栄誉は今日も手放さなかった。
ロベル海は波の穏やかな海域だが、州都に面したこの湾は特に、風のない日は鏡の様に凪ぐ。
日が暮れて薄暗い砂浜にはすでに多くの住人が詰め掛け、食べ物の屋台が長く軒を連ねている。沖に出ているのも大半が見物のための船で、漁船までが客を乗せて繰り出しているようだ。
「何が始まるのか、まだ教えてくれないのか?」
「まだだよ。見てたら分かるから」
そう言って笑うリセルに連れて来られたのは、砂浜の真ん中に位置する桟敷席だった。
警備によって住人から多少離されてはいるが、リセルに手を振る子供たちの顔が見える程度の距離だ。真新しい板敷に屋敷の人間が絨毯を広げて座布団を置き、居心地の良さそうな空間が出来上がっている。
「食べる?」
リセルは腰を下ろすなり、屋台で買って来た串焼きをジュノビオの前に差し出した。
「食べる」
「あ、そっちは食べかけだってば」
左手の紙包みを無視して、右手に持ったリセルの歯型のついた肉を頬張る。
腕を掴んだ拍子に、傷痕に指が触れた。
「こっちの方が美味しい」
「もう、何それ。せっかくいっぱい買ったのに」
けらけら笑いながら、リセルは食べられてしまった串を振り回した。
リセルの右手は日常生活に困らない程度には回復したが、さすがに剣を振るうことは難しかった。「妃に剣なんていらないから」と明るく笑ってはいたが、暇を見つけては左手でこっそり稽古していることを、ジュノビオは知っている。
「何なに? 急にどうしたんだ?」
にわかに愛おしさが込み上げて、額の花に口づける。この程度なら人前でも許してくれるだろう。
「ほら、始まるよ!」
小卓に串焼きを置いたリセルに引っ張られて、暗くなった海に視線を移す。
「うわ……!」
見るべきは海ではなく、空だった。
ぱっと夜空が鮮やかな色の光で染まって、耳をつんざく爆音が遅れてやって来る。二つ、三つと光の花が咲いて、拍手と歓声が巻き起こった。
「花火を用意してたのか!」
「え? ジュノなら見た事あるだろ? 全然予想してなかった?」
「いや、まさか海上から……こんな近くで見るのは初めてだ。色も大きさも全然違う……すごいな……!」
祝祭の帝都で郊外から打ち上がる花火を見たことはある。ただし記憶にあるのは、ぽこぽこと小さく開く白い花で、これは全く別物だ。
見上げた空一面が何色もの花で彩られ、落ちてくる火の粉に手が届きそうなほど近い。音があまりにも大きくて、年寄りが腰を抜かさないか心配になるほどだ。
「東方の国から、技術者ごと運んでもらったんだ。台船から打ち上げるのは俺の発案。失敗しても家が燃えなくて安心だろ? 上手く行ったら今度、陛下が来る時に見せられるかなって。船の上で見るのもいいかもよ」
にこにこと笑うリセルの顔が、花火に照らされてきらきらと光る。
褒め称えようとしても、上手く言葉が出てこない。
「どうしたの?」
「いや……、私はすごい妃を娶ったと思って、感激している」
「あはは! ちなみに浜で見る分にはタダだけど、見物の船からは金を取ってるよ。屋台の店主からも協賛金を貰ってるから、商売としては、まあまあかな」
感動を吹き飛ばすかのように、しっかり現実的な魅力も披露してくる。リセルと一緒にいると驚かされることばかりで、人生がいくつあっても足りない気がする。
「ね、ジュノ。俺もう、しばらく忙しくないから」
「うん?」
意図が分からずリセルを見下ろすと、照れたように眉を下げ、腕にしがみついて来る。
「今日はいっぱいしていいよ。……明日も」
ぽそっと耳に注ぎ込まれた甘い誘いに、ぶわりと体温が上がる。三十路を迎えても一向に収まらないこの熱は、どう処理したらいいのだろうか。
せっかくの素晴らしい新年の祝いがもったいないが、一刻も早く屋敷に帰りたい。
ジュノビオは夜空を埋め尽くすように咲く大輪の花を、半分上の空で眺めた。
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