新型勇者に契約破棄された魔法少女ですが、古代の勇者と無双します! ~落ちこぼれと型落ちで送る、超合体おとぎ話~

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EP02 鋼魔

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「それでこれからどうすればいいと思う?聞いてばっかりで情けねえが……」

「そうですねぇ……とりあえず交番に行きましょう。警察に行方不明なんかが出されているかもしれません」

「俺の前の知り合いが探してくれてるかもってことか」

 ノクスさんは頭がいいようだ、知識はなくても物事を理解するのが早い。私が同じ状況にあった時、ここまで冷静に動けるとは思えない。

「道を教えてくれれば、自分一人で行けると思うぜ。いつまでもヒトミに付き合ってもらうわけにもいかねえし」

「も、もちろん、一緒に行きますよ!乗り掛かった船ですしそれに……今、身の置き所がなくて、ノクスさんに付き添っていた方が何というか落ち着くんです。だから……」

 初対面の人に何を言っているんだと自分でも思う。きっと相手が初対面で記憶喪失だからこそこんなことが言えるのだろう。普段の私はこんなに大胆に人とかかわりに行くことはできない。

「そうか、じゃお願いすっかな……後なんでさん付けなんだよ。ヒトミがつけてくれたんだ。ヒトミが呼び捨てにしなくて他に誰がするんだよ」

「そ、それも……そうですね……その、ノクスさ……ううん、行こう!ノクス。私についてきて」

 私はこれまで、呼び捨てにできる相手などほとんどいなかった。養成学校に入ってからはなおさらそうで、無意識にさん付けしてしまっていた。だけど、彼の言い分は分かるし

「そうそう、俺にとっちゃヒトミが世界で一番、仲の良い相手なんだ。気楽にやってくれたほうがその……助かる……」

ノクスは少し目をそらしながら言う。

「……!」

 急に心臓に悪いこと言わないで欲しい。世界で一番だなんて、そんなドラマでも聞かないような言葉を急にかけられるなんて。だけど、そうだ。大げさに言っているわけじゃない。ノクスにとっては私が唯一なんだ。私が孤独の中で、ノクスと話して救われたように、ノクスにとっても心細い状況の中で唯一私が『頼れるかもしれない』存在なんだ。こんな私だけが頼りなんだ、ノクスみたいな良い人を心細いままにしておきたくない。できなくても、私がしっかりしたい。この人のためなら、できる気がする。

「分かった!ノクスも頼りにしてくれていいよ!」

そんな決意とともに私たちは移動を開始しようとするが……。

“ビー!ビー!”

「な、なんだ!?」

 バイブの振動とともに聞き心地の悪い大きな音が響き、ノクスはそれに驚く。それは私のポケットに入っている学校から支給された情報端末からなっていた。私はその通知について知っている。いやでも覚え込まされている。私は緊張で一瞬固まってしまった。
 魔法少女を目指しているなら、いつか向き合うことになると思っていた。しかし、今、ここで出現してしまうのか……。人類が私たちが恐れ、備えてきた敵、鋼魔……!

「……」

「なぁ、ヒトミ。今の何だか分かるのか?」

 今の私に、ノクスの質問に答える余裕はなかった。ただ端末を起動して詳しい情報を確認するので精いっぱいだったからだ。
 検知された魔力反応が近い……というかほぼここだ!

「逃げよう!ノクス、近くのシェルターに……」

「逃げるって何から?」

“オオーーーン!! オオーーーン!!”

 ここが公園だったこともあり、スピーカーが近くにあったのか頭が痛くなるほどの大音量のサイレンが聞こえる。

「こ、今度は何だ!!」

『緊急警報発令!!緊急警報発令!!鋼魔の出現を感知近辺に著しい生命の危険が迫っています!市民の皆さんは最寄りのシェルターに避難して下さい!繰り返します……』

 サイレンの後のアナウンスが響く。関係者である私の端末には、より詳しい情報が通知されている。避難警報は大事をとってかなり広い範囲に流される。だから、本当に危険が差し迫るのは警報範囲のごく一部。でも問題が二つある。一つはそれがここということだが……。そして、もう一つは離れた地点に別の鋼魔人が出現しているが、対応できる魔法少女はこの国にまだ一人しかいないことだ。

“ググググッ!”

足元に振動が伝わる。公園の中央部の地面から箱型の物体がせりあがってくる。

「一体何なんだ?」

 立て続けに起きる出来事にノクスは混乱している。しかし、私にとっては想定内だ。訓練の賜物だ、私は落ち着いている。これから何をすべきかもわかる。でもノクスにとっては違う。私が道を示さないと、

「ノクス、よく聞いて。今すぐあの箱の中に入ってじっとしていて」

「な、なんで……さっきの声と何か関係があるのか?」

「はい、詳しく説明してる時間がないけど危険が迫って……あっ!」

「……うぐっ!」

 これまでに感じたことのない違和感が全身を包む。世界の彩度が少し下がったようだ。体の中をかき回され、溶かされているような不快感。話には聞いていたが体感するのは初めてだ。もう来てしまった。人の生命力を奪い、鋼魔人に取り込まんとするための力場、反有機生命圏。出現検知からこのスパンで力場内に入るということは、目と鼻の先にいる!

「お、おいっ!なんなんだよこの変な感じも!」

 ノクスも感じているのだろう、生命を蝕むこの忌まわしい力場を。私は良い、そもそもこの力場に耐性を持つことこそ、魔法少女の素質。魔法少女の力の源である秘石を支給されていることもあり、簡単な魔法なら使える、動くだけなら全く問題ない。
 だが彼は違う。今はいいがすぐに、動けなくなってしまう。

「ちょ、何するんだよ?」

「いいから入って!」

私は満身の力を込めて彼をシェルターへ押し込む。

「すぐに戻るから、絶対にここから動かないで!」

「おい、ヒトミはどうすんだよ!」

「ノクスが言ってくれた。これまで努力してきたことが無駄じゃないって。私、それを信じて頑張ってみる!」

その言葉は自分への宣言でもあった。

「お、おい!」

 私は有無を言わさず、シェルターの扉を閉じる。私は背後の大通りへ向かう、警報からまだ間もないとはいえ、誰も来ていないのはおかしい。混乱はあるだろうが、スマホにナビが流れるはずなので、来れる人はいるはず。でも誰も来てない。そこから分かることは……。

「うぅ……」

「力が抜けて……動けない……」

大通りに出ると、すでに多くの人が地面にへたり込んでいた。

「もうこんなに影響が、本体が来て取り込まれたらとんでもないことに……」

 どうするべきか考えていた時、端末から着信音が鳴る。相手は分かっている。私は電話を取る。

「碧乃ぉ!貴様ー!何故シェルターから離れた?対応マニュアルを読んでないのか!」

 電話越しに叫んでいるのは、養成学校の鬼軍曹と名高いミサト・ローゼリンデ教官。この端末の位置情報から、私がわざわざシェルターにたどり着いて離れたことを知っているんだ。何度も泣かされた怒声だが今日はひるまない。

「教官!今はそんなことはどうでもいいです!例の力場でもう動けなくなった人がいます。星原先輩はいつ来るんですか!?」

「何!?通知見たろう、出現数は2だ。星原は今片方とやってる。終わらせたらすぐ行かせるから……それまで……」

「……分かりました。星原先輩が来るまで、人を避難させつつ敵を抑え込みます」

「は!?何言ってる、死ぬぞ!契約どころか、固有魔法も使えてないお前に何が……」

 私は無言で通話を切った。やるべきことは決まった。星原翼、またの名を天望愛齎シンセリー・テルス。私の一年先輩で養成計画最大の成果と呼ばれる国内唯一の正規の魔法少女。彼女なら、必ず鋼魔人を倒せる。
 ならば、私のやるべきことは鋼魔人に人間を取り込ませないようにすること。鋼魔人は人間を取り込む性質があり、その人数が増えれば増えるほど、その存在は強大になる。
 この力場は奴らの餌場、ここにいる人もこうしているままでは取り込まれる。取り込まれた人も、短時間の内であれば救出できるという言い伝えだ。すでに取り込まれている人のためにも、後に来る先輩が倒しやすいように人間を取り込まないようにしなくては。
そう決意した私は、首にかけたペンダントを取り出し、魔力を流す。するとペンダントの先に付いた神秘の石、アミナ・ピースが光りその姿をステッキに変える。コア・カタリスと言われるそれは、魔法少女候補生に支給される魔法の触媒だ。

「パーティシプ・ヴィタール」

 私はあらん限りの魔力を込め、呪文を唱える。発動させるのは、自身の魔力を周囲の人々に分け与える魔法だ。ステッキの先に付いている輪とその中に模られた星のマークから何本もの光の束が放たれ、地に伏せている人々に刺さる。

「う、動けるぞ……」

「な、何が起こっているんだ?」

 私の魔力で一時的に力場に耐性を得た人々が、立ち上がり始める。

「みなさん!命の危機が迫っています!スマホに通知されたシェルターへ急いで!」

私はあらん限りの声で叫んだ。シェルターの周囲には力場を防ぐ対抗結界が張られる。
ここよりは安全だ。皆異常な事態が起こっていることは理解できているようでシェルターの方へ走っている。後は、けが人をどうにかしなければ……。

“ギュイーン?”

私が次の行動を思案しているとき、大通りの先の交差点あたりから、甲高い金属音が聞こえる。

「まさか、あれが……」

 数秒後目に入ったのは、3メートルはあろうかという長い体躯の両前足が丸鋸になっているイタチだった。下半身は液体金属のようにどろどろになって取り込まれた人の身体の一部が露出している。
 あれが、人類の敵……。

「ギシャー!」

威嚇するような鳴き声とともにその怪物の視線がこちらを射抜く。心臓を掴まれるような恐怖が私を支配した。
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