波のように生きてきた私へ ―仮死状態で生まれた命の記録―

cocohera

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第5章 姉と兄――やさしさの継承者たち ④

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小節4:姉と兄のあいだで育った私

私は、姉と兄のあいだで育った。  
姉のやさしさは、手のひらのぬくもりだった。  
髪を結ってくれる手、絵本をめくる指、  
私の話に耳を傾ける静かなまなざし。  
そのすべてが、私の心をやわらかくしてくれた。

兄のやさしさは、距離の中にあった。  
言葉少なに、でも確かにそばにいてくれる存在。  
高い棚のものを取ってくれる手、  
静かに笑う横顔、  
そして、あの日の手品――  
10円玉を飲み込んだふりをした兄を、私は信じて真似した。  
本当に飲み込んでしまった私は、  
うんちのたびにコインを探す日々を過ごした。

母と父は心配して、病院へ連れて行ってくれた。  
レントゲン、経過観察、そして数週間の「探検」。  
その間、家族は私を責めなかった。  
むしろ、みんなで笑いながら見守ってくれた。  
そして、ついにその10円玉が出てきた日、  
私は「宝物を見つけた」ような気持ちになった。

その10円玉は、今も実家にある。  
小さな箱の中に、大切にしまわれている。  
それは、兄との思い出であり、  
家族のやさしさの象徴でもある。

姉と兄のあいだで育った私は、  
やさしさのかたちを、ふたつの方向から教わった。  
触れるやさしさと、見守るやさしさ。  
語りかけるやさしさと、沈黙のやさしさ。  
その両方が、私の中に静かに根を張っている。

今の私のやさしさは、きっとその混ざり合いだ。  
誰かにそっと寄り添うとき、  
私は姉の手を思い出す。  
誰かを遠くから見守るとき、  
私は兄のまなざしを思い出す。

姉と兄のあいだで育った私は、  
やさしさの継承者になったのだと思う。  
そのやさしさを、今も誰かに手渡しながら、  
静かに、生きている。
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