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染舞(ぜんまい)

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商人マリエッタのコーヒータイム

第2話「くぅっ、解せぬ! と悔しみつつ、彼女は笑う」

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「いやー、分かるー。あの二人は別格だよね」

 夜。マリエッタの住居兼店舗に、彼女の共感の声が響く。
 もう寝るところなのか、水色のパジャマを着て、大きめのベッドの上に座ってうんうんと大きく首を振っている。
 マリエッタの頷きに、同じくベッドの上にいたレイリアが目を輝かせる。その姿は可愛らしいピンクのパジャマと相まって、仕事中のクールな姿とはかけ離れていた。

「分かるっ? 分かってくれるっ? やっぱりマリエッタなら分かってくれると思ってた!」
「そりゃ分かるって。あなたと私は同士でしょっ?」

 マリエッタの同意に、レイリアは完全に乙女な顔をして「マリエッタ!」と抱きつき、マリエッタはマリエッタで「レイリア!」と抱きつき返した。

「……はぁ。あんたたち、恥ずかしくないの?」



 そしてそんな二人を呆れた目で見ているのは、フェローチェ商会の一人娘で彼女自身も商人のリアナ。寝るためにゆるく三つ編みをしなおしていた彼女は、丸い大きな眼鏡のズレを直しながら呆れ果てていた。
 抱きつくことを恥ずかしくないのか、と聞いているわけではない。二人の会話内容の方だ。
 抱き合っていたマリエッタが拳を握り、そんなリアナに反論した。

「恥ずかしいわけ無いでしょ! ダンさんとギルバートさんのカップリング最高って話は恥じることないわ!」

 腐の話だった。
 堂々と言ってのけるマリエッタに対し、レイリアはさすがに恥ずかしそうにモジモジした。

「か、カップリングとか……私はそこまでの話じゃなくて、あの二人は仲が良いよねっていう」

 必死に誤魔化そうとしているが、長年の友人関係の間でそんなごまかしが効くわけもない。

「何言ってるの、レイリア! 私知ってるのよ。あなたがあの二人で◯◯して▲▲な□■を想像してるって!」
「きゃー! 何で知ってるのっ? 隠したのに」
「……え? まじで想像してたの?」
「え?」

 マリエッタが驚くと、レイリアも驚き……なんとも言えない空気が漂う。
 そんな中、リアナはひとり冷静に寝る準備を終えて、ベッドに横になる。

「ほら、灯り消すよ。あたしは明日も早いんだから」
「えーっ、もうちょっと話そうよ」
「そうよ、リアナ。久しぶりに会ったんだし」
「……散々話したでしょ。ほら、早く寝なって」

 この中で一番年下であるリアナだが、まるで二人の姉か母のようである。

「まだ語り足りないのになぁ」

「ダン×ギルについて」
「ギル×ダンについて」

 マリエッタとレイリアの声が被る。二人は目を瞬かせ、見つめ合う。
 二人はしばらく無言で見つめ合い、やがて……信じられないものを見る目で互いを見た。

「そんな……どう考えてもダンさんが攻めでしょ?」
「ちょ、どうしてそうなるの? だってギルバート様の方が前衛の剣士なのよ?」
「分かってないなぁ。だからこそのダンさんの攻めが――」

 ここに、一大カップリング論争が繰り広げられようとした、その時!

「あーっもう! うるさい! さっさと寝なさいってば!」

「「はい。すみません」」

 19歳に怒られたことで、その戦いはあっけなく終わったのだった。

(くうっ! いやでも! 絶対にダン×ギルだって!)
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