フィガロと晶のおとぎ話シリーズ

夜千流

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血の聖餐

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とある小さな村に、1人の赤子が生まれた
その赤子は不思議な色の瞳を持ち、海色の髪が特徴的な男児だった
両親の元で健やかに育てられたその子は、齢5歳にして聖書を暗記する程の神童であった
その聡明さと不思議な瞳から、その子供はいつしか神の子と呼ばれるようになった
両親は聡明過ぎる我が子を誇りに思いながらも、どこか気味の悪さを感じていた
神の子の噂を聞きつけた教会の神父が、その子供を引き取りたいと申し出た
両親は、どこか浮世離れした我が子を教会に預ける事にした

「フィガロ、礼拝の時間です」

「はい、神父様」

フィガロと呼ばれた神の子は、豪奢な椅子に座らされ、礼拝に訪れた信者1人1人に神の御言葉を伝える
信者達は、フィガロの言葉を大層有り難かった
礼拝が終わると、フィガロは祈りの間に閉じ込められる
そこで毎日人々の安寧を願い、創造主への賛美を唱える
世俗の穢れから隔絶され、清廉潔白である事を求められた

15歳になったフィガロの元に、1人の女が礼拝に訪れた
漆黒のフードを目深に被っており、顔を窺う事が出来ない
女は、フィガロに救いを求めた

「私には誰にも言えない秘密があります。穢らわしい獣のように血を欲してしまうのです」

女は幼少の頃より血を吸いたい衝動に苦しんでいたという
それを両親に相談した所、父親に化け物として家の地下室に閉じ込められてしまったのだ
母親が運んで来る僅かな食事で生かされていた
毎日泣くことしか出来ずに衰弱していく娘を憐れんだ母親が、神の子ならば何か救いを与えて下さるのではないかと父親の目を盗んで教会まで送り出したのだ

フィガロは初めて受ける相談に困惑した
まるで噂に聞く吸血鬼のようではないか…
フィガロは女に顔を見せるよう命じた
フードを脱いだ女の顔を見て、フィガロは衝撃を受けた
つり目がちながら穏やかな人柄を感じさせる優しい顔立ちに、フィガロは一目で恋をした
その場では良い解決策が見つからず、しかし女に興味を持ってしまったフィガロは、女に再び教会を訪れるよう命じた

フィガロはその日の晩、女の姿を思い浮かべて射精した
フィガロは清廉潔白を求められ、夢精をしてしまう度に神父の命令で村の外れにある洞窟の泉で身を清めさせられた
神の子にあるまじき低俗な行為に、フィガロは自己嫌悪に陥った

翌朝…
祈りの泉で身を清めながら、フィガロは女の来訪を期待していた
しかし、女は教会に来なかった
恐らく父親の監視の目があるのだろう
フィガロは、まだ名も聞いていない女への恋情を深めていく
きっと美しい名前なのだろう…と、想像する
祈りの間に居ながらも、フィガロは人々の安寧ではなく女の事ばかり思い描いてしまう
色欲は罪だ
だが、フィガロは初めての恋にのぼせてしまった

父親の目を盗み、再び教会を訪れた女をフィガロは言葉巧みに教会の地下へと導いた
そこは異端者を改宗させる為の牢屋だった
女に枷を掛け、フィガロは怯える女に名を訊ねた
晶と名乗った女をフィガロは優しく抱いた

晶は吸血衝動が高まると犬歯が伸びる
フィガロは晶に自分の血を飲むよう命じた
晶は遠慮がちにフィガロの首筋へ牙を突き立てた
吸血には強い快楽を伴うらしい
晶に噛まれた箇所から齎される刺激に、フィガロは思わず射精した
フィガロの様子に気づいた晶は、我に返って謝罪を述べた
血を吸われ過ぎて貧血気味の頭で、フィガロは晶に気にしなくていいと伝えた

吸血行為と性行為の快楽に、フィガロと晶は夢中になった
晶が数日経っても家に戻って来ない事を心配した母親が晶を連れ戻しに来たが、フィガロは母親に吸血鬼の女は処刑したと伝えた
泣き崩れる母親に労いの言葉を掛け、フィガロは母親を追い返した

母親が自分を探しに来た事など知らぬ晶は、フィガロに甘えるように擦り寄った
2人きりの牢屋で、フィガロは再び晶との性行為に及んだ

神父は、フィガロが吸血鬼の女を匿っている事を黙認した
それほどまでに、神の子であるフィガロの影響力は強いものになっていた
この村に、最早フィガロに逆らえる者はいない
フィガロは晶を神の祝福を受け、死の淵から蘇った聖女として村人達にお披露目しようと画策した
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