冤罪で殺された令嬢が転生したら溺愛ルートでした

榎夜

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25話 セルドリックside

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執務室に入ってすぐに、

「父上、お話があってきたんですが...」

と俺が声をかけると、父上は書類から目を離すことなく

「なんのようだ?」

素っ気なくそう聞いてきた。

忙しいのはわかっているから、別に気にしない。

基本的にはいつもこんな感じだからな。

「実はエリザベスのことで」

と俺が言うと、父上は珍しく書類から顔を上げて

「なんだ?」

と尋ねてきた。

本当に珍しい。

母上と話をする時でさえ、顔を上げることは少ないというのに...。

あぁ、それどころではなかったな。

「最近、エリザベスに危害を加えている令嬢がいるのですが、最近それが悪化しています。父上の力を借りたいと思って来ました」

「ほぉ?儂の力、というのは一体何をして欲しいんだ?」

父上はニヤリと笑ってそう聞いてきた。

何を頼みたいのか、はわかっているはずだ。

でもあえて俺に聞いてきてる。

だから、気を使うことも無く

「影を1人貸してほしいのです。エリザベスの護衛と、それからその令嬢を断罪するための証拠を集めるために」

と言うと大きなため息をついてから

「...やっと、か」

そう呟いた。

やっと?一体何に対してなんだ?

思わず何も返せずに黙っていると

「やっとお前が動く気になった、ということだ。ハロルドから大体の話は聞いておる。儂はお前がいつ言いに来るか、と思っていたんだ」

と父上が言った。

やっぱりそうか。

ハロルドから今まで起こったことは聞いているはずだからな。

確かに俺は動くのが遅すぎた。

本来なら、次期王妃に対するあの行動はすぐに取り締まってもいいはずなのに。

「それは......」

なんて返したらいいのかわからず、そう呟くと

「影を貸す必要も無い。もう証拠は揃えてある」

「え...?そんなに早く...っ」

流石にまだ調べていないと思っていたのに、そんなに早く終わっているなんて...。

父上はいつから影を動かしていたんだ?

「お前がのんびりしていたからだ。儂はエリザベスのことを本当の娘のように思っておる。だからハロルドにも報告を随時頼んでいた」

父上がエリザベスを可愛がっているのは知っていたが、まさかここまでだとは思わなくて、さっきハロルドに聞いた時は驚いたな。

そう思っていると

「それは王妃も同じだ。さっきハロルドに会っただろう?奴はあの後王妃の元に向かってエリザベスの報告をしておる」

「母上まで......」

まさか母上までエリザベスの報告を頼んでいたなんて......。

いや、でもよく考えたらそれだけエリザベスが大切に思われている、ということか?

でも流石に行動全てを報告されるなんて、エリザベスが可哀想すぎる......。

父上は引き出しの中から書類の束を取り出して

「持っていけ。そのバカな令嬢がやったことから、家の事まで全て載っている」

そう言った。

パラパラっと軽く書類を見ると、ちらっと読んだだけでもだいぶヤバいことに手を出しているみたいだ。

まさかここまで手を染めていたとはな。

「......ありがとうございます.........っ!」

父上にそう言って執務室を出た。

これでリナリー嬢を断罪できる...っ!

そう思うと、自然と足取りが軽くなった。
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