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アリフィア・キーラン男爵令嬢
2話
しおりを挟む私も毅然とした態度をとれたらいいのですが、キーン様の言う成金貴族というのは本当で我が家は元々小さな商会を営んでいました。
私がまだ3歳頃の時は従業員が6人という本当に小さな商会でしたが、皆がニコニコしていてとても楽しそうにお仕事をしていたんです。
ですが、私が8歳の時、とある転機が訪れ徐々に規模が大きくなり今では王族御用達、名誉貴族という形で晴れて貴族入りを果たしたのが我が家なのです。
なので領地は持っていませんし名ばかりの貴族なのでキーン様のようなことを言ってくる人は少なくありません。
慣れ......と言ってしまえば逃げかもしれませんが言い返すことも出来ないんです。
心の中で今日何度目かわからないため息をつきながら、キーン様の機嫌を損ねないよう大人しく机に詰まれた書類を全て終わらせた時、コンコンと控えめなノックが部屋に響き渡りましたわ。
キーン様の入室許可の声の後に入ってきたメイドは遠慮気味に
「キーン様、アリフィア様のご帰宅のお時間になりました」
そう言ってチラッと私を見る顔は早くこの部屋から出たそうな顔をしていますわね。
それもそのはずですわ。
だって、この部屋の空気と言いますか雰囲気は婚約者同士がいるとは思えないほど冷え切っていますし、私がメイドの立場だとしたら......今すぐにでも逃げ出してしまいたくなるでしょうね。
ただ、一応お客様の私は1人で勝手にこのお屋敷の中を歩き回ることは出来ません。
いや......他のおうちはどうなのかわかりませんが、婚約した時に言われたのです。
「お前は何をするかわからないから1人で歩き回るな」
と。
きっと元平民の私には珍しい物が置いてあるから盗まれるのではないか、みたいなことでも思ったのでしょうね。
そんなことするわけもないのに......。
心の中で私を待ってくれているメイドに謝罪をしながら机の上の書類を片付けていると
「時間内に終わらせることも出来ないのか!お茶会なんかに行ったせいじゃないのか?」
意地の悪そうな顔でそう言ってくるキーン様に私は何も言い返すことなく
「申し訳ございません、では失礼いたします」
とだけ言って席を立ちました。
そんな私の姿が気に食わなかったのでしょう。
私に投げつける様に紙を数枚渡すと
「待て、レポートの方は家でやっておけ」
そう言って私よりも先に部屋を出て行ってしまわれましたわ。
一応無言は良くないと思ってキーン様の背中に
「かしこまりました」
と返事をしておいたのですが、聞こえたでしょうか?
ーーーーーーーー
メイドと一緒に歩き慣れた玄関までの道のりを歩いていると
「あらあら、アリフィアじゃなくて?」
聞き慣れた声が後ろから聞こえてきましたわ。
くるっと振り返るとそこにはキーン様のお母様......子爵夫人が立っていて今日もゴテゴテとしたアクセサリーで派手に着飾っていますわ。
「子爵夫人、ご無沙汰しております」
と言って頭を下げると夫人はニコニコ......いや、ニヤニヤしながら
「息子とは仲良くやっているの?」
そんな質問をしてきましたわ。
夫人は私とキーン様の関係をわかっていながら、毎回このような質問をしてくるのです。
そして質問に対して、まるで決まっているかのように
「えぇ、とても良くしていただいております」
ニッコリと笑いながらそう言うと
「息子と婚約出来ること、感謝するのね。私たちでなければ貴方のような子を婚約者に許すわけがありませんわ」
と言って甲高い笑い声と共に夫人はその場を後にしました。
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