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フェイン・マスタージュ伯爵子息
4話
しおりを挟むあの後、ミーナが黙り込んでしまったこともあって会話の一つもないまま昼休憩が終わってしまった。
結局ミーナがなぜわざわざ皆の前で俺を連れ出したのかわからないし、何が言いたかったのかもさっぱりわからないままだ。
そんな状況でも、俺はミーナの家に行かなければいけないわけで、今日も伯爵の目の前の机で領地のこと、経営のことを学びながら本来ならばミーナがやらなければいけない書類を片付けていた。
今思うとこれもおかしな話なんだけどな。
他の家の人に家の書類を手伝わせて内部のことを思いきり曝け出しているのだから。
まぁ、俺がミーナの代理として仕事をしているのは陛下も知っているようだし、最初はミーナの名前で書類を出さなければいけなかったのも、今では俺の名前で全て書類を処理している。
これを陛下に了承してもらったのも伯爵で、俺の手柄をミーナに奪われてはいけない、と動いてくれたようだ。
本当にありがたいことだよな。
そう思いながら、今日の書類と睨めっこしている俺に
「フェイン、ミーナの件だが......」
普段は仕事のことしか話をしない伯爵が急にそう話しかけてきたから、俺は手を止めて
「どうかしたんですか?」
と尋ねると、普段の威厳たっぷりの様子とは違って何やら言いにくそうな顔をした後に
「いや....仲良くやっているのだな?」
言葉を選んでいるのがバレバレの様子でそう聞いてきた。
今までミーナとのことなんて一度も聞いてきたことがなかったのに一体どうしたんだ?
もしかして、昨日あんなことを言って今日も俺の態度が変わらなかったから伯爵に相談をした、とか?
そうなのであればこれは何と答えるのが正解なんだろうか?
仲良くなんてないです、か?
それとも、普段全く話をしないので仲が良いかはわからない?
いやいや、そんなの俺の口から言えるわけがないだろう......。
そう思った俺は伯爵の質問に
「はい」
と答えるしかなかった。
返事までに間があったからか、伯爵はその後にも何か言いたそうな顔をしていたが、俺の答えに
「そうか」
とだけ呟いて、俺たちは再び書類へと向き合った。
さて、今日も無事に書類を片付けた俺は帰宅の為に待っている馬車へと向かっていると
「フェイン!待ちなさいよ!」
まさかの、2日連続で甲高い声が廊下に響き渡った。
平均して3日に1回、会わない時には1週間も会わないような俺たちが2日も連続で、しかも会話までするなんて...。
そう思いながら視線を向けると、急いで来たのか息を切らしたミーナが立っていて、昼の時と同様に何かを言いたそうに口を開いたかと思えば閉じてを繰り返している。
今後もこれが続くのかと思った俺は
「何の用でしょうか?」
と冷たく言い放つようにそう言うと、流石のミーナも
「そ、そんな言い方をしなくても良いじゃない......」
そう言って、悲しそうな顔を俺に向けてきた。
いやいや.....俺の言い方でそんな顔をするって、自分の今までの発言はどうなんだって話だ。
どうせ俺はどう頑張っても素晴らしい伯爵のようになれないし、自分に相応しくない。それで良いじゃないか。
なぜ今になって俺に関わってこようとする?
「一体なんですか?昼も連れ出しておきながら話もなかったし、今だってこうやって呼び止めながらも何を話すか決まっていないんでしょう?」
そう言って失礼しますね、とだけ最後に付けくわえ、その場を離れようとする俺の腕をパシッと掴んで、ミーナはこう言った。
「話す!話すわ!だから少しお茶でもしていかない?」
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