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90話
しおりを挟むとりあえず、ジュリア様を鳥もちから剥がして、カーラにメイド服の準備をしてもらうことにしましたわ。
こういうのは決まったらすぐに動かないと気が変わってしまうといけませんからね。
まぁ、そのようなことはないと思いますけど。
料理長に食材の確認をしてもらったら中身を出していなかったおかげで、まだ使えるとのことでしたし、とりあえず一件落着、ということで良いですわよね。
そう思いながら、待たせてしまっているお母様のところに戻っていると、ユリが何とも言えないような顔をしながら
「良いんですか?メイドなんかにして」
と尋ねてきましたわ。
実は、後からユリとカーラも調理場に来てくれたんですが、とりもちに囚われている姿なんて誰にも見せたくないでしょうから中には入れませんでしたの。
だから私とジュリア様の会話の内容までは把握していませんのよ。
2人にはジュリア様にはメイドになってもらうことになった、という結論だけを伝えていますわ。
侯爵家の令嬢が急にメイドとして働くなんて、長くメイドを務めているユリからしたら複雑な心境にもなりますわよね。
それは理解していますが、
「えぇ、多分大丈夫だと思いますわ」
とだけ答えると、案の定
「でも、侯爵令嬢ですよ?いくらメイドが必要でも流石に........」
と私が思っていた通りのことを気にしているみたいですわ。
今まではメイドにお世話してもらう立場の人が、急に人のお世話をする、というのは確かに難しいと思います。
ですが、帰る家もないジュリア様だったら嫌でもメイドとして留まらないと、居場所がないんですもの。
しっかりと仕事をしてくれると思っていますわ。
まぁ、私の予想でしかありませんけどね。
なんて思いながら、ユリに
「身分なんて関係ありませんわ。それに初めからなんでも出来る人なんていないでしょう?」
そう言うと、
「それはそうですが........」
と頬を膨らませていますわね。
なんて言ったら受け入れてくれるでしょう?
ユリだったら今も前も後輩というメイドがいなかったので喜んでくれると思ったんですよね。
.........あぁ、それを伝えればいいだけの話ですわね。
そう思って、頬を膨らましながら後ろをついて来ているユリに
「今までは貴方達が一番後輩だったけど、もう先輩ですわよ」
そう言うと、
「先輩..........っ」
とあからさまに目の色が変わりましたわね。
今までは教えてもらう、という立場だったのが教える立場になるんですもの。
やっぱり嬉しいですわよね。
なんて思いながら、ユリの目の輝きを失わせないように
「わからないことが沢山あるとおもうから、教えてあげてちょうだい」
と言うと、目をキラキラと輝かせたまま
「わかりました!」
と頷いてくれましたわ。
最初からそう言っておけば丸く収まりましたのね。
もっと早くに気付いたら良かったですわ。
温室に戻る途中、アルフレッド様とお兄様達がいる庭園を遠目で見ると、どうやら騒ぎは収まったみたいですね。
メイド長が何とかしてくれたんでしょうが、後で話を聞かないといけませんわ。
そう思いながら、ユリと歩いているうちにお母様達が待つ温室につきましたわ。
2人はすぐに私に気付くと、ひらひらと手を振ってくれたので急いで駆け寄って
「ごめんなさい、待たせたわ」
と席に座ると
「大丈夫よ。綺麗な温室もゆっくりと見れたしね」
そう言ってお母様が微笑んでくれましたが、多分問題があった、というのは察していますわよね。
そんなに鈍感なお母様ではありませんもの。
ですが、深くは聞かれたくない内容なので
「それは良かったですわ」
とだけ答えてユリにお茶を入れなおしてもらいました。
はぁ......これでゆっくりできますわね。
そう思いながら入れたばかりのお茶の匂いを楽しみます。
相変わらずいい香りですわ。
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