皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜

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266話

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フォルン様の質問に、当然ですがシルム様は何も答えずに

「死ねぇぇぇ!お前がいるから俺は後継ぎになれないんだ!」

と叫びながら、フォルン様の持っている木の棒に剣をめり込ませていきましたわ。

おかげで、木の棒は少しずつですが剣の刺さりが深くなっているせいで、このままではいつ半分に折れてもおかしくはない状況になっていますわ。

どうにかしてシルム様を離すことが出来たらいいんですが.......。

そう思いながらチラッと兵士たちを見ると、一応剣は私達に向けてしっかりと構えているものの一向に動く気配がありませんわね。

それも、兵士の全員が同じ様子ですわ。

動かない理由が怯えているから、とかそんな感じではなく、なんといいますか.....ただただ様子を見ているだけです、という雰囲気がビシビシと伝わってきています。

この兵士たちはきっと、何かを聞かれたら

「あ、俺たちは言われたから来ただけです」

と言って逃げていくやつですわね。

どうにかして自分たちは責任を逃れる様に、と逃げ道を用意している.........言ってしまうとシルム様よりも性格の悪い人たちですわね。

なんて思っていると、

「くそっ!さっさと死ねよ!」

兵士たちの隣の方からそんな物騒な叫びが聞こえてきたと思ったら、そのすぐ後に何かがぶつかった鈍い音と

「は、はぁ!?」

というシルム様の間抜けな声が部屋の中に響き渡りましたわ。

本当にこの動作は一気に起こった出来事でしたし、兵士たちのことを見ていたので音だけはしっかりと把握していて、何があったのかは見ていなかったんですが............。

そうしたのか、と思って2人のいた方を見ると、フォルン様とシルム様はいつの間にか人が3人ほど入るくらいの距離を開けていて、シルム様の手にあったはずの剣は、今ではフォルン様の手の中にありますわ。

....いや、少し表現が違いましたわね。

シルム様の剣がフォルン様の手にある、ではなく、フォルン様の手の中にある木の棒にしっかりと刺さっていますわ。

きっとあまりにも深く刺してしまったせいで抜けなくなってしまったんでしょう。

その証拠に

「いやぁ.......自分からしっかりと棒に刺してくれるんだもん。そりゃあ、こうなるよね」

フォルン様はなぜか少し楽しそうにニヤッと笑うと、シルム様は顔を真っ赤にして

「う、うるせぇ!その剣、返せよ!」

と言ってフォルン様の方に向かって駆け寄りましたわ。

ですが、そう簡単に剣を返すような人はいませんわよね。

シルム様の焦った顔を見ながらフォルン様は

「返すわけがないだろう?というか抜けないから自分から手を離したんじゃないか」

そう言って、剣の刺さっていない部分......つまりただの木の棒でシルム様のことを思いっきり殴りましたわ。

すると、その直後

「くっ!」

「うわぁぁぁぁ!」

という悲鳴を上げて私たちのことを睨んでいた兵士たちが急に倒れていきましたのよ。

い、一体何が起こってこんなことになりましたの?
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