私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

30話 義父side

王宮から帰宅した俺は、とにかく今後どうすればいいのか、と頭を抱えていた。

セリスティアの仕事は俺がこなせるようなことではない、ということはよくわかっている。

なぜなら、セリスティアの優秀さは、次期王妃に、と声が上がるほどのもので、侯爵家に跡継ぎが居たら今頃王太子と婚約していてもおかしくはない状況だったんだ。

そんなセリスティアと俺が同じようなレベルのわけがない。

はぁ........それはわかっているが、どうやってこの場を乗り切るか。

そう思いながら侯爵家へと戻った。

きっと今頃、ユーミアとアーリアがいつも通り好き勝手過ごしているだろうし、出来ることなら領地の管理を手伝わせてやろう、という魂胆だ。

......まぁ、上手く話が進むとは思っていないから期待はしていないけどな。

そんな思いで、2人のいる客室へと足を踏み入れた。





俺が客室に入ると、そこは王宮に行く前の状況とは別物のようになっていて、床にはどこからか用意したのか茶菓子のごみとドレスやアクセサリーが散らばっていて悲惨な状況だった。

それに加えて、ソファーの上には俺が戻ってきたことに気付いていない2人がだらしなく、よだれを垂らしながら寝転がってた。

こ、こんなの....貴族の夫人と令嬢がするようなことじゃないぞ........。

そんなの常識どころか、教えてもらわなくてもわかっていることだろう。

そう思った俺は、ユーミアとアーリアに向かって

「お前たち！いい加減にしろ！」

と怒鳴りつけた。

今までこの2人に怒鳴ったことなんてなかったが、流石にこの姿をみて限界だ、と判断したんだ。

だって、あり得ないだろう？

家の中だから気を抜いていた、といっても流石に緩みすぎだ。

部屋が汚いのは掃除していないのが悪い、といえばその通りだが、ここまで汚くできる2人の神経がよくわからない。

そう思いながら、俺の怒鳴り声に飛び起きる様な形で目を覚ました2人を眺めていると、ユーミアは俺の姿を見るなり

「あら、帰って来ていたのね」

とは言ったものの、怒鳴られたことが腹立たしいのかわからんが、なぜか不機嫌そうに舌打ちまでして頭をポリポリと掻いていた。

はぁ......汚い顔に髪.....性格までしも、こんなに汚いとは流石に想定外だったな。

なんて思っていると、ユーミアの後に目を覚ましたデブ.....いや、アーリアが部屋の状況を見て

「な、なによこれ！なんで掃除が終わっていないの！？」

と叫び始めた。

それに対してユーミアも

「まぁ！本当だわ！私達が寝ている間に掃除するように言っておいたのに！」

そう言って部屋の中をキョロキョロと見ているが、この2人以外誰も部屋の中にはいないし、何を探しているんだか。

しかも寝ている間に掃除、って.......なんで自分たちがこの家のメイドに指示を出せると思っているんだ？

そう思いながら、2人に向かってこう言ってやった。

「陛下が、子爵家の領地と侯爵家の領地の両方を見る様に、と言われた。2人も手伝ってくれないと、我が家は降格どころか、爵位を剥奪される可能性がある」

これを聞いても、俺の手伝いすらしない、っていうんだったら俺にも考えがある。

セリスティアがいつ帰ってくるのかはわからんが、それまでの間は侯爵家のことは守ってみせる。