私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

文字の大きさ
38 / 344

37話

しおりを挟む
さて、ディアが部屋から出て行った後、ユーリは私に詳しく話を聞くこともなく、普段通りに

「そういえば、手紙がきた、と聞きましたが、どうでしたか?」

と質問してきてくれましたわ。

正直、ここでディアのことを聞かれても反応に困っていたので本当にありがたいですわ。

流石ユーリですわね。

なんて心の中で思いながら

「それがね......」

と手紙の大体の内容を話しましたわ。

特にユーリには婚約している時からデール様のことを話していたので、隠す必要もなくデール様が私の居場所を聞いている、ということを話すと

「うわぁ......なんだか気持ちが悪いですね。隣国まで来ておいて正解だったのかもしれませんよ」

ユーリは肩を擦りながら、私にそう言ってきましたわ。

きっと想像してみただけでも気持ちが悪かったんでしょう。

それは私も同じ意見ですわ。

なんて思いながらユーリの言葉に

「やっぱりそうよね」

とだけ言って苦笑しましたわ。

はぁ......本当にデール様に関しては何を考えているのか全く分かりませんのよね。

だって、あちらからの婚約破棄で、私はそれを受け入れただけ、ですもの。

それに、婚約者、と言ってもそれらしいことはしていませんしね。

なんだかんだで一回も2人でパーティーに参加したこともなかったですわ。

なので、私に執着するのであれば、その理由がわからないといいますか......。

一度は考えるのを止めたデール様のことですが、一度気になるとどうしても考えてしまいますわね。

やっぱり一時は婚約者だった、ということもあってでしょうか?

なんて思っていると、急にユーリが勢いよく顔を上げたかと思ったら

「ところでお嬢様。話は全く変わりますが、ずっとこのお屋敷で半年も過ごすつもりですか?」

と私に聞いてきましたわね。

まぁ、伯父様との約束が半年、ということでお世話になるつもりではいますが........ユーリは何を思ってその質問をしましたの?

と思って、

「.......というと?」

と聞いてみましたわ。

すると

「実際、今の時点で暇ですよね?やることがないですよね?」

そう言ってきたユーリは、なぜか楽しそうといいますか....嬉しそうに前のめりになっていますわ。

暇ですよね?と聞かれたら答えなんて1つしかありませんわよね。

だって、暇なんですもの。

ただ、ユーリに対して、そのまま

「暇ですわね」

なんてことは言えないので

「ま、まぁ.......ここでもメイドとして仕事をしているユーリ達には申し訳ないけど、確かに暇しているわ」

と言って苦笑しましたわ。

ほら、ユーリやミリア、ディアもネイトもしっかりとお屋敷で仕事をしていますのよ?

だから少し申し訳ない、といいますか。

素直に暇です!なんて言えなかったんですのよね。

ですが、ユーリはそんなことなんて特に気にすることもなく、前のめりの姿勢はそのままで

「そうですよね!ほら!何かしましょうよ!」

と楽しそうにそう言ってきましたわ。

何かしましょう、ですか。

確かに、何か出来ることが1つでもあったら私も時間つぶしにもなりますし、新しい趣味ができるかもしれませんわよね。

ただ、皆が仕事をしている邪魔にはならないようなことが一番だと思うので、必然的に行動するのがお屋敷の外で、ということになってしまいますが.......。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

処理中です...