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45話
しおりを挟むその後、玄関でそのまま会話を始めようとした夫人に、伯爵が
「おいおい、話をするんだったら応接室に案内するべきだろう?」
と言ってくれたおかげで、なんとか伯爵家の中に入ることが出来ましたわ。
もう本当に、このまま話が始めるんじゃないか、と思っていましたもの。
伯爵があの場でとめてくれて本当に感謝していますわ。
ただ、伯爵と令嬢が、小さな声で
「お母様がこんな風になるのは珍しいですわね」
と話をしていたのもしっかりと聞こえてきましたけどね。
こんな風、というのはお客様を案内する前に話し込もうとする、ということでしょうけど........まぁ、2人の反応を見ると、夫人はとてもしっかりとした人なんでしょう。
そんな夫人がお母様が関わることで、ご家族が驚いてしまうほどの変わりようになる、って.......お母様は一体何者ですの?
そんなことを思っているうちに、応接室へと到着しましたわ。
伯爵達に促されて、流れる様にソファに座ると、夫人が一番最初に
「ごめんなさい.......セリアーティ様のことは本当に憧れていた人だったので気分が高揚してしまいましたわ」
と私に謝罪をしてくれましたが、別に嫌な気分にもなっていませんし、良いんですけどね。
強いて言うのなら、私ではなく令嬢の方に言うべきかと.......なんて思いながら
「いえ、私もお母様のことを覚えている人がいてくれて嬉しいですわ」
と微笑むと、夫人はホッとしたような表情を浮かべて頭を上げてくれましたわ。
まぁ、他の2人は夫人が、なぜこれほどまでに気分が高揚していたのか、とても気になっているみたいで
「あの....お母様。セリアーティ様というのは一体.......」
「そうだ。私も気になるな」
それぞれそう言うと、夫人のことを見ていますわね。
2人の視線に、夫人はオロオロとした様子で、私のことを見ていましたが、これは私も気になったので、小さく頷くとゆっくり理由を話してくれましたわ。
夫人曰く、お母様はとても美人で優秀で、優しくて、誰に対しても平等で、公爵令嬢だから、と威張り散らしたりしない人だった、とのことですわ。
まぁ、これは門番さんと聞いた話と少し被りますわよね。
それから、これは初めて聞きましたが、王太子との婚約が確定だ、と言われている中、隣国の侯爵子息との純愛を選んだ唯一の令嬢、とうっとりしながら教えてくれましたわ。
これは、初耳でしたわね。
しかも、お父様とお母様って、純愛でしたの?
幼いころに聞いた時は、お見合いで決まった、としか教えてくれませんでしたわよ?
そう思っていましたが、2人は
「なるほど、君が昔話してくれたのはその人のことだったんだね」
「私も納得しましたわ。お母様が憧れの人だ、と話してくれたことがありますもの」
とどうやら納得した様子で頷いていますわね。
しかも、昔話をしてくれた、って.......ここまで来るとお母様を尊敬しますわよ。
なんて思っていると、夫人は少し頬を赤く染めながら
「わ、私のせいではあるんだけど、私の話は良いのよ。今は家庭教師のお話をしましょう」
と言って、なんとかこの話を終わらせようとしていますが、なんだか可愛らしい夫人ですわね。
お母様が生きていたら、なんとなく同じような雰囲気だったと思いますわ。
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