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50話

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リーシャ様の部屋の中に入ると、中は想像以上にしっかりと片付いていて、さっき投げたであろうペンが、扉のすぐ近くに転がっていましたわ。

部屋の広さはそんなに広くはないですわね。

侯爵家の私の第二の部屋くらい、でしょうか?

まぁ、このお屋敷の広さを考えると打倒の広さですわね。

部屋の中は紺とグレーが基調となった、10歳のれいじょうには珍しいシックなデザインの部屋ですわ。

気に入っているのならいいんですが.......私がこれくらいの年齢の時は、もう少し可愛らしい色を好んでいましたわよ?

エメラルドグリーンとか白とか........まぁ、一般的にはピンク、水色、などでしょうけど。

なんて思っていると、私よりも先に部屋の中に入っていったカティ様が

「リーシャ、家庭教師のセリスティア様よ」

とベットの方に向かって声を掛けましたわ。

ここからだと.....角度的に人がいるのかどうかもわかりませんが声をかけた、ということはそこにリーシャ様がいますのよね?

そう思った私は、なんとかリーシャ様の顔を見ようと、少しだけ位置をずれましたわ。

ただ、急に知らない人の顔を見ると怖いかもしれない、とユーリのアドバイスがあったので、リーシャ様には見えないように、と注意しての移動ですわ。

一体どのような方なのか.......。

恐る恐る移動していると、

「なんで私なんかに家庭教師をつけましたの.........?」

ベットの方からそんな声が聞こえてきましたわ。

なんで、ということは、リーシャ様は家庭教師なんていらない、と思っていたんでしょう。

声の冷たさで、そんな心境が伝わってきますわ。

とりあえず、顔が見えるところまで移動した私は距離はそのままで、2人の会話を眺めてみることにしました。

カティ様は、リーシャ様の冷たい視線を浴びながらも、質問に

「.........お父様が」

とだけ答えましたが、その言葉だけでもリーシャ様からしてみると不快に思ってしまう答えだったみたいで

「ということは、その人はお父様に頼まれてきた、ということ?」

物凄く嫌そうな表情をしながらそう呟きましたわ。

えっと、リーシャ様なんですが、本当に10歳ですの?と思ってしまうほどに感情の表現が乏しいですわね。

なんといいますか.......膝の上にはクマのぬいぐるみを抱えて、年相応のように見えるんですが、さきほどからカティ様と話をしている表情はほぼ無です。

眉が少し動いたり、声に苛立ちを感じるくらい、という感じですわね。

うーん......これも私が家庭教師でいられる間にどうにか出来たら、と思っていますが、結構難しい話かもしれませんわね。

なんて思っていると、リーシャ様は私のことをキッと睨みつけてきましたわ。

きっと伯爵の知人、とでも思われているんでしょうか?

まぁ、仕方がありませんが......なぜこんなにも父親のことを嫌っているのか、それも気になることですわね。

そう思いながら、なんとかリーシャ様に苦笑だけを返すと、そんな私の様子を見ていたカティ様が

「そうだけど違いますわ!」

と少し苛立った様子で叫びましたわね。

これには私もリーシャ様も驚きましたわ。

まぁ、そうは言ってもリーシャ様はすぐに

「.......意味が分かりませんわ」

と目を逸らしてしまいましたわ。
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