私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

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80話

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そんなこともありながら、無事に着替え終えた私は、ユーリと一緒に婚約者となる人が来るまでの間、伯父様から受け取った紙を眺めていましたわ。

と言っても、どのような顔をしているのか、などは書かれていないので、本当に情報だけですけどね。

寝る前に見ようと思っていましたが、疲れていたみたいですぐに寝てしまいましたのよ。

えーっと......まず書いてあるのは.......伯母様のはとこの従兄弟の息子.....ですか。

物凄く遠い関係ではありますが、一言で表すと伯母様の親戚、ということですわね。

ただ、伯母様と私には血縁関係がないので、伯母様の親戚でも特に問題ありませんわ。

なんて思いながら紙を読むと、本当に詳しく調査してくれたみたいで、性格、学園での成績、見た目の特徴、周りからの評価.......など、しっかりと書かれていますわ。

私がこのように書かれているなら、どう書いてあるのか......考えるだけで怖いですわね。

まぁ、この紙に紙に書いてある内容だけでしたらハッキリ言うと完璧ですわ。

なぜこの年齢になるまで婚約者が居ないのか理解できないほどに。

性格は、紳士で優しく、穏やか。成績はトップまではいかないものの上から数えた方が早い。

見た目もそこそこ良い方で、生徒会をやっているため生徒の人望ある人気者........ですって。

これほどまで完璧に書かれていると、逆に怪しくも感じてしまいますわよね。

だって、そのような超人が存在するのか、本当に怪しいですわ。

あ、ですが、相手側からしても私の評価はそれと同じ、の可能性がありますわね。

だって、性格は....まぁ、置いておくとしても成績はトップ、見た目はお母様譲りの顔をしていて、義理の親に問題はあっても私自身が嫌われている、と思ったことはありませんもの。

相手側も、こんなのおかしい、と思いながら馬車に揺られていると思いますわ。

なんて思っていると、一緒に紙を見ていたユーリが

「なんだかお嬢様のような完璧子息様ですねぇ......」

と呟いたのが聞こえてきましたわね。

まぁ、ユーリの完璧子息様、というのは同感なので

「私のような、は理解が出来ないけど、本当に完璧すぎて怖いわよね」

そう言って苦笑すると、ユーリは少し考えた後に

「ほら、表の顔は凄く優しいけど実は相当な意地の悪い人、とか......」

表情は明るいですが、結構凄いことを言ってきましたわね。

これには思わず

「そんな不安になるようなことを言わないでくれるかしら?私も全く同じことで不安に思っているんだから!」

と言ってしまいましたわよ。

でも、ユーリも同じことを思っている、と考えたら余計に怖いですわよね。

ただ、伯父様と伯母様が選んでくれた、というだけで、なぜか普段とは違った緊張感がありますわ。

なんといいますか.....絶対に失敗してはいけない、みたいな圧と言えばいいんでしょうか?

なんて思っていると、

「お客様がお見えになりました」

扉をノックした後に、メイドが伝えに来てくれましたわね。

「え、えぇ。ありがとう」

と返事をしましたが、一気に緊張してきましたわ。

で、ですが、大丈夫です!

伯父様と伯母様が一緒に居てくれる、とのことなので、私があまりにも失態を犯さない限り、大丈夫ですわ!

そう自分に言い聞かせて、椅子から立ち上がりましたわ。

そして、

「お嬢様、邪魔者はいませんし、頑張ってくださいね!」

というユーリの声を背に、客室を後にしました。
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