私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

文字の大きさ
177 / 344

177話

しおりを挟む
カティ様達を見たレオンハルト様の反応に違和感を覚えた私は、とりあえず次にレオンハルト様が何を言うのか、と思って黙っていると

「顔と名前が一致していなかったけど........あの子が伯爵家の令嬢なの?」

と改めて確認するかのように聞いてきましたわね。

これには反射的に

「えぇ、そうですわ」

と頷きましたが、レオンハルト様の表情はなんだか強張っていますわ。

伯爵家との間で何かあった、とかでしょうか?

いや、もしそうだったら私にも教えてくれる、と思っていますし......。

ですが誰しもが教えたくないようなこと1つや2つ抱えているものですわよね。

なんて思いながら、深く聞いてもいいものかどうか、悩んでいると

「いや、なんでもない。さて、じゃあ僕らもそろそろ降りましょうか」

と言ってレオンハルト様が立ちあがったではありませんか。

正直、今が一番視線の多い時ですし、私としてはもう少し後にしてくれた方がありがたいんですが.....。

ただレオンハルト様も、今が良いタイミングだと思って言っているんですものね。

私のちょっとした緊張で迷惑をかけるわけにはいきませんわ。

そう思った私は、レオンハルト様の言葉に頷いて、差し出された手に自分の手を重ねました。

きっとこの馬車に降りるところから、どのような令嬢なのか、と注目されているでしょう。

出来るだけ自然に、ですが優雅に、ですわよ。

なんて自分に言い聞かせるように呟いて馬車を降りましたわ。


私が地面に足を付けると、思っていた通り色んな所からの視線が一気に集まってきましたわね。

基本的には好奇の視線という感じですが、その中に嫉妬そして怒りのような鋭いものも感じますわ。

それに、さっき私がアーリナ様と言い合いをしていた時は、馬車の中にいた、ということもあって、どのような令嬢なのか品定めしているようなものもあります。

まぁ......一言で言うと居心地が物凄く悪いですわね。

ここまで色んな視線を一気に感じるのは初めてのことなので、どのような態度でいたらいいのかもわかりませんわ。

そう思いながら、レオンハルト様にエスコートをされて扉の方に向っていると、レオンハルト様も流石にこの視線に気付いたんでしょう。

「なんだか、思った以上に視線を感じるね」

と言いながら苦笑していますわ。

そんなレオンハルト様の苦笑に、少し離れたところから

「「きゃーっ」」

というちょっとした黄色い歓声が聞こえてきましたが......この距離でレオンハルト様の顔が見れるって、相当視力が良いんですのね。

私たちと黄色い歓声の聞こえたところまで、約10メートルは離れていますわよ?

なんて思いながらレオンハルト様の方を見ると、今の黄色い歓声が聞こえてきたんでしょうね。

複雑そうな顔をしながら、肩をすくめていましたわ。

多分、ですが以前私と話をした時に、

「僕の顔だけを見ている人ばかりだ」

という話をしていたので、複雑な気持ちなんでしょう。

だって、確かに今の黄色い歓声は、レオンハルト様の顔に対するものでしたからね。

なんだか私の方まで複雑な気持ちになりましたわ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

処理中です...