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212話
しおりを挟む泣いて立ち去った令嬢の背中をなんだか申し訳なく思いながら見送りましたが、レオンハルト様は特に何も思うところがないらしく
「とりあえず踊ろうか。さっきみたいな勘違いした令嬢が現れても困るし」
ニッコリと満面の笑みでそう言われたので、なんだか複雑な気分になって
「そ、そうですわね」
と少し言葉を詰まらせてしまいましたわ。
だって、勘違いした令嬢って........別にあの令嬢は私が踊れないから、と勘違いしたわけではなく純粋にレオンハルト様と踊りたかったから声をかけただけだと思うんですのよね。
なので、このような言い方をされると.......いや、きっと普段通りニコニコとしていると調子に乗ってしまう、ということであえて厳しくしているんだと思いますわ。
そうじゃなければおかしいですものね。
そう自分に言い聞かせて、差し出されたばかりのレオンハルト様の手に私の手を重ねましたわ。
レオンハルト様に手を引かれ、会場の真ん中の方に移動をすると、今までダンスを踊る気配がなかったので驚いたんでしょうね。
一気に私とレオンハルト様に視線が集中したのがわかりましたわ。
ただ、鋭い視線ではないのでやりやすい、と思いながら、レオンハルト様にリードされてダンスを開始しましたわ。
すると、流石のレオンハルト様も周りの視線に気付いたみたいで
「うーん......やっぱりセリスティア様と踊ると皆気になって見てしまうらしいね」
と苦笑していますわね。
確かに、今まで踊っていた人たちも私とレオンハルト様にすれ違う時は足を止めている人が多いですわ。
まぁ、私としては見られても何も変わりはないので良いんですが.......。
ここまで見られると、もしかして自分のダンスがおかしいのでは?とか、ドレスのスカートがおかしくなっているのでは?と不安になってきますわよね。
なんて思っていると
「痛っ!」
急に足に激痛が走って思わず顔を顰めてしまいましたわ。
そんな私の様子にすぐに気付いたレオンハルト様が驚いた顔をして
「大丈夫!?もしかして誰かに踏まれて.....」
と言いながら辺りを確認していますわね。
ダンスのリードも緩めてくれましたし、さっき令嬢に対して冷たい言葉を発したレオンハルト様と同一人物だとは思えないくらいの気遣いですわ。
ただ、足に激痛が走ったのは誰かに踏まれたわけではないので、いまだに誰が危害を加えたのか、と辺りを見渡して警戒しているレオンハルト様に
「大丈夫ですわ。誰かに踏まれたとかそういうわけではないので........」
と言って苦笑しましたわ。
ちなみに、今も足には激痛が走っている状況ですし、これからダンスを踊り続けられるか、と聞かれたら難しいでしょうね。
とはいえ、流石に会場の真ん中にまで出てきたのにも関わらず、こんなに早く終わってしまうのはレオンハルト様にも申し訳ないですわ。
なんて思いながら、なんとか周りには気付かれないように、とゆったりダンスを続けていると
「なら良いけど.....いや、良くはないか」
レオンハルト様がそう言った瞬間、自分の体がフワッと宙に浮きましたわ。
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