私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

文字の大きさ
298 / 344

298話

しおりを挟む

さて、私の婚約の話と隣国での話はこれで終わり、ですわよね。

他に話すことはないですし、本当に全て話し終えた、という感じですわ。

それは陛下の方も察してくれたみたいで、机の上に置いてあったお茶を淹れ直すようメイドに指示を出した後に、ふぅ....と深く息を吐いて

「それで、領地の方は大丈夫だったか?こっちで難しい書類関係はすべて請け負ったんだが.....」

と話題を変えてきましたわね。

まぁ、隣国での話を終えたら次はどのような話題になるか、なんて大体想像はついていましたが、昨日の叔父様の件もあってドキッとしてしまいましたわ。

陛下達にはそれを気付かれないよう

「えぇ、領地のことは、大丈夫でしたわ。本当にありがとうございました」

ニッコリと微笑みながらそう言いましたが........私の言い方がまずかったですわね。

「領地のこと、は?」

陛下はニコニコと微笑んでいますが、ピクッと眉毛が動いたのがわかりましたわ。

そりゃあ、当然ですわよね。

だって、この言い方ですと領地のことは何も問題がないけど、他に問題が起こりました、と言っているようなものですし。

当然、叔父様の件は全て片付いてから陛下に報告をするつもりだったので、ここでバレてしまう訳にもいかない、と思った私は

「あ.......え、えーっと.......す、少し言い間違えましたわね」

なんとかこの状況を打破しようと、微笑んだままそう言いましたが、あまりにも不自然だったので誤魔化しきれるわけがありませんわよね。

私が必死に誤魔化そうとしているのにも関わらず、陛下は

「一体何があったんだ?」

と容赦なく質問してきましたわ。

そんな陛下に対して、私は

「いえ、本当に何もありませんでしたわよ?」

流石にこれ以上陛下に迷惑をかけるわけにはいかない、と思ってなんとか誤魔化そうとしますが、追い打ちをかける様に

「儂らには言えないことなのか?」

と言ってきた陛下の表情は、わざとらしく落ち込んでいるのがわかりますわ。

私の隣では

「私たちはセリスティア様の力になりたいんですの。教えてくださいませ」

と言ったエリザベート様の目は捨てられた子犬のような目をしていて、これはまずい、と思った私は咄嗟に視線を逸らしてしまいましたわ。

だって、2人からこんな目で見られると、言わないわけにもいかないじゃありませんか。

ですが、この件に関してはしっかりと自分でケリをつけたいですし.....。

あぁ、もちろんずっと黙っている、という訳ではありませんのよ?

ただ、全てが片付いてから陛下達には報告をしたい、と思っているだけですわ。

それなのに、陛下とエリザベート様の2人から、何とも言えない圧をかけられて.......ど、どうにか逃げ出したいところですが、不可能ですわよね。

そう思った私は、斜め前に座るカイン様に必死に視線と念を送りましたわ。

この2人をどうにかしてください、と。

もちろん、それが通じるほど親しい仲ではないので、期待は出来ませんが、察しの良いカイン様です。

なんとかわかってくださいませ。

そう願いを込めて、言葉を発することなくカイン様のことをジッと見つめましたわ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

処理中です...