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300話
しおりを挟む言ってしまった後にマズい、と思いましたが時は既に遅く、私の言葉を聞いたカイン様は
「あー.........」
と都合の悪そうな顔をして私から視線を逸らしてしまいましたわ。
エリザベート様は、というと、まさかそんな理由でカイン様を見ていたとは思ってもいなかったみたいで、私の言葉を聞いてポカーンと口を開けて固まってしまっていますわね。
一方、今まで何も言わずに私の言葉を待っていた陛下は、というと
「少し調子に乗りすぎてしまったな。すまない」
そう言って私に頭を下げて来たではありませんか。
正直、陛下には少し怒られると思っていたのでこの反応には驚きましたわ。
だって、カイン様に2人を諫める様に、ということは、私が2人のことをうっとおしく思っている、ということですからね。
もちろん、そのようなわけではありませんが、捉え方によってはそう思われても仕方がないことです。
なので、私の目の前で頭を下げる陛下に対して、何を言えば良いのかわからなかった私は
「い、いえ!あ、あの........そこまで困っていたわけでは.......」
手を横にブンブンと振りながら言葉を捻りだしましたが、困っていない、というのは流石に嘘ですしね。
え、えーっと......ですが、素直に謝罪を受け取る、というのもなんだか違う気がしますわ。
なんて思っていると、私が困っていることに気付いたのか、頭を上げた陛下は優しく微笑むと
「ただ、助けになりたいというのは本当だ。何かして欲しいことがあるのであればすぐに動くが......本当に何もないんだな?」
と確認するように、しっかりと私の目を見てそう質問してきましたわ。
さっきまで聞き方とはガラッと雰囲気が変わりましたわね。
その....何と言いますか、さっきまでの陛下は言わないといけない、みたいな空気がひしひしと伝わってきたので、私もどう言って良いのかわからず戸惑ってしまいましたが、今の陛下は言いたくないことは言わなくてもいい、という感じで凄く話しやすいですわ。
うーん.....最初からこのような感じで聞いてくれると、私も言いやすかったんですけどね。
なんて思いながら、心配そうな顔をしている陛下に、私は心配をかけないように微笑みながら
「確かに今、面倒な問題が1つありますわ。ただ、それは私が自分で片付けたいんですの」
と言うと、陛下は心配そうな顔はそのままでしたが、そうか.....と頷いた後に
「なら儂はまだ何もしないでおこう」
と言ってくれましたわ。
ただ、まだ何も....というのは凄く気になりましたけどね。
もし私に何かがあったら動いてくれる、ということなんでしょう。
そう思いながら、陛下に軽く頭を下げて視線だけでお礼を言うと、私と陛下のやり取りを見守っていたエリザベート様が
「わ、私の方も申し訳ないですわ」
シュンとした顔をして謝罪してきましたわね。
そんなエリザベート様に、陛下の時と同様ニッコリと微笑んで
「いえ、さっきから全部私のことを心配して言ってくれているのはわかっていますわ。なので、謝らないでくださいませ」
と言うと、なぜかエリザベート様は目に涙を浮かべながら
「助けはまだ必要ない、とのことですが、今度愚痴でもいいので話を聞くくらいは良いですわよね?」
そう言ってきたので
「えぇ、もちろんですわ」
と言って微笑むと、エリザベート様はホッとしたような表情を浮かべて優しく微笑みを返してくれました。
まぁ、愚痴を聞いてくれる、というのは私にとってもありがたい話ですしね。
今度、ゆっくりとお茶を飲むときにでもお願いしましょうか。
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