私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

309話

さて、叔父様を門の前の残したままお屋敷に入った私たちは、慌ただしく作業を開始しましたわ。

まぁ、叔父様に言ったように勝手に搬入した物を全て壊す、ということはしませんでしたが、とはいえしっかりと荷物は外に出させてもらいましたわよ。

地面に落とされた荷物を見てまさかとは思っていましたが、叔父様はあれら意外にも子爵家から色々な物を持ち出していたみたいで、中には子爵家の家紋がしっかりと入った家具や指輪なんかもありましたのよね。

しかも何を思ったのか、それらの物をお父様とお母様が使っていた寝室に全て置いていましたの。

レオンハルト様と籍を入れた後に寝室にしよう、とメイド長と話をして、掃除はしてもらっていましたが.....まさか叔父様が勝手に使おうとしていたとは思ってもいませんでしたわ。

そんなことを思いながら、荷物を全て出し終えた私は、やっとのことで自分の部屋に戻ってきましたわ。

「はぁ……疲れましたわ」

と言って椅子に座ると、今日の疲労が一気にきてしまったのか、立つことすら億劫に感じてしまうくらい体が重たくなりましたわね。

はぁ......陛下達との会話だけでも相当疲れるというのに、本当に迷惑な話ですわ。

そう思いながら大きくため息をつくと、

「お疲れ様でした」

ユーリも疲れているはずなのにそう言って、私の着替え用のワンピースを準備してくれていますわね。

今日は久しぶりにメイド長の適切な指示出しを見ることが出来た、というのは少し嬉しかったですけど。

なんて思いながら、

「ユーリもご苦労さま。疲れたでしょう？」

と声をかけると

「いえ！重たい荷物は調理場の人たちが運んでくれましたし、私は特に……」

ユーリはそう言って、思い出しているのか何とも言えないような表情で苦笑しましたわ。

確かに、メイド長の指示も凄かったですが、調理場の人達も凄かったんですのよね。

私が隣国に行く前から、なぜか筋肉が凄い人が多い印象がありましたが、また筋肉の量が増えていたような気がしましたし.......。

もしかして、私たちが居ない半年の間にしっかりと鍛えていたんでしょうか？

調理場の人達の筋肉を思い出して、ユーリの苦笑に私も思わず苦笑を返すと

「それよりも、まさか旦那様たちが使っていた寝室を自分の部屋にしようとしたなんて、とんでもないですよね！」

ユーリはそう言って、フンっと鼻息を吐いていますわ。

まぁ、お父様達の寝室は皆もどうやって使うか悩んではいたものの、こんな形で使われるなんて嫌ですわよね。

皆も同じ気持ちだったので、余計に荷物を運び出すのが早かったような気がしますわ。

なんて思いながら、鼻息を荒くしているユーリに

「まだ門の前で座り込んでいますの？」

窓から外を眺めながらそう尋ねると

「いえ、荷台は返さなくてもいい、と伝えてもらって門番に追い返してもらいました」

なぜかユーリが自慢げにそう言って、私の前にお茶を用意してくれましたわ。

今回の件で懲りてくれたらいいんですが........なぜかプライドだけは高いみたいですからね。

もう一度お屋敷に来ることを想定に、対策をしておいた方が良いかもしれません。

そう思いながら

「そう、それならよかったわ」

と言って用意してくれたお茶を口に含むと、ユーリは

「ところでお嬢様、忘れていると思うので言っておきますが……」

なぜかそこで区切って私の顔色を窺っていますわね。

忘れていると思う、って......私が何を忘れているのか、全く理解が出来なかった私はｍユーリの言葉に首を傾げていると

「明日から学園があるので準備をした方がいいかと」

そう言ったユーリの手にはいつの間に出したのかわかりませんが、私の通学用の鞄が握られていましたわ。