312 / 344
312話
しおりを挟む我が家から学園まで約1時間。
その間、私は昨日王宮から帰った後に起こった出来事を愚痴を言うかのようにカイン様とエリザベート様にお話をしましたわ。
昨日、お屋敷に帰ると叔父様が勝手に子爵家から荷物を運んでいたこと。
そしてその荷物をお父様とお母様が使っていた寝室や私が使っている書斎に運んでいたこと。
それから、それらの荷物は子爵家から家具や調度品を盗んで持ってきているので、中には家紋が入ったものも存在するということ。
話の最後には、叔父様を荷物と共に追い出して、今はどこにいるかわからない、ということもしっかりと話しましたわ。
すると、カイン様は険しい顔をしながら
「まさか、そんなことになっていたとは.....」
と小さく呟きましたわね。
エリザベート様の方も綺麗な顔だというのに、眉間に皺を寄せて
「陛下やカイン様達の前では自分は心を入れ替えた。これからはセリスティア様の手助けをする、とハッキリ言って陛下から離婚の許可を貰っていましたのよ?」
と私に教えてくれましたわ。
なるほど......確かに私には保護者と呼べる存在がいませんし、私の手助けをする、と言われると陛下も離婚に許可をするかもしれませんわね。
きっと、あの2人の行動を見て、ではなく私のことを考えて陛下は判断したんでしょう。
はぁ.....まさかその結果が昨日の出来事に繋がるなんて誰も想像していませんし。
そう思いながら、エリザベート様の言葉に
「手助けどころか、侯爵家を乗っ取ろうとしていましたわよ」
と苦笑しながら言うと、カイン様もエリザベート様も私の苦笑につられてか、なんとも言えないような表情で苦笑をしましたわ。
すると、今まで私とエリザベート様の話を聞いていたカイン様が
「なぜ父上に子爵のことを言わなかったんだ?言った方が簡単に事が済むと思うが.......」
首を傾げながらそう聞いてきましたわね。
まぁ、そう思うのも当然ですわ。
だって、面倒なことにならないように、と行動するのが当然のことですし、頼った方が私自身被害が少ないのはわかりきっていることですもの。
正直、私もあの叔父様の相手をした時、陛下に頼るべきだった、と後悔したくらいですしね。
なんて思いながら首を傾げているカイン様に
「確かに陛下に言った方が面倒ごとにもならずに叔父様を追い出すことが出来たでしょうね。ですが、一応あのような人でもお父様の弟ですし.......出来ることなら自分で解決したいと思いましたの」
と言うと、カイン様は
「なるほどな」
とだけ言って、納得してくれたみたいですわ。
ただ、エリザベート様の方はまだ何か言いたそうな顔をしていたので
「まぁ、あのような行動に出るなんて思ってもいませんでしたが.....」
と付け加える様に言うと、カイン様もエリザベート様も私の言葉に頷きながら、ただただ苦笑していましたわ。
ただ、やっぱりカイン様たちとユーリ達とでは話す内容が違いますからね。
ユーリ達には完全に愚痴を言うような感じになるだけですが、カイン様達は解決策を相談することが出来る、と考えたらこうやって話す時間をもらえたのは感謝しかありませんわ。
42
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?
朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」
そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち?
――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど?
地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。
けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。
はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。
ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。
「見る目がないのは君のほうだ」
「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」
格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。
そんな姿を、もう私は振り返らない。
――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる