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329話 アーリアside
しおりを挟む役人が帰った後、応接室に取り残された私とお母様は久しぶりにしっかりと顔を見合わせたわ。
毎回嫌味のようなことを言われる時に顔は見ていたけど、改めてお母様の顔をしっかりと見ると濃い化粧は変わらないけど、お父様が出て行ってまだ1ヶ月も経っていないのに、なんだか歳をとったようにみえた。
まぁ、それも仕方がないのかもしれないけど。
だって、睡眠時間を削ってまで男たちと遊んで、食事だってまともにとっていないんだもの。
それに加えて毎日の化粧だって肌に相当な負担をかけているはず。
当然、老けていってしまうに決まっているよね。
それと比べて私はお父様がいなくなっても自分の美貌はしっかりと保っているわよ。
なんて思いながら、顔色を悪くさせているお母様に
「お母様、やっぱりお父様に言ってどうにかしてもらうしかないわ!家が取り上げられちゃう!」
と言ったわ。
流石のお母様もこの状況でバカげた考えはしないだろう、と思って久しぶりに私から声をかけたんだけど......お母様は私の言葉に対して
「そんなの嫌よ!だってあの男は私を捨てたのよ!?入り婿の分際で.......」
お父様の方から離婚を切り出したことに相当腹を立てているのか、爪をガシガシと嚙みながらそう言ったわ。
まぁ、プライドの高いお母様からすると、自分よりも下だと思っていたお父様があんな行動をするなんて許せないわよね。
私だって、言いなりだったお父様があんなことをするとは思っていなかったもの。
ただ、全てはお母様が悪い、ということはわかっているのかしら?
そう思いながら、心の中でため息をついていると
「そうよ!あんたが金持ちと結婚すればいいんじゃない!そうしたら税金くらい簡単に払えるでしょう!?」
と言った後に、私を舐めるように見てきたわ。
お母様にここまでジロジロと見られるのは初めてだったから気味が悪い。
なんだか品定めされているような気分がするのよね。
思わず眉間に皺を寄せて、お母様が何を言うのか、と待っていると、私をジロジロ見ていたお母様が急に
「ふっ」
と鼻で笑ったかと思ったら
「あぁ、でもあんたじゃ無理に決まっているわね。私が男でもあんたみたいなデブを抱きたくないわ」
そう言ってきたわ。
こんな状況でも私に対して嫌味を言うのを忘れないお母様には正直呆れてしまったけど、どれと同時になんで私よりも年寄りのババアなんかにここまで言われないといけないんだ、という怒りも込み上げてきて、今まで我慢していたのが一気に溢れ出したかのように
「はぁ!?それを言ったらお母様なんて濃い化粧のババアじゃない!そっちの方が無理よ!」
とお母様に言ってやったわ。
まさか私にそんなことを言われると思ってもいなかったお母様は驚いた顔をして固まってしまったけど、むしろここまで耐えていた私を褒めて欲しいくらいよね。
そう思いながら、呆然としているお母様に冷たい目で見つめながら
「この家がどうなろうと知ったことじゃないわ!もう勝手にしたらいいじゃない!」
と言って応接室を後にした。
あんなのでもお母様だから、と思っていたけど、それが間違えだったのよね。
私がバカだったわ。
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