幼馴染で婚約者の私より、貴方は運命の相手の方が大事ですのね

6話

パーティーから一夜明け、今日も普通に学園に行かないといけないので、しっかりと準備をしていますわ。

リーア様が来る前は学園に行くのも一緒だったんですけどね。

今では1人で行くのが当たり前、という状況になってしまっています。

メイドに

「昨日はしっかり目のメイクだったから今日は薄めで良いですわ」

とお願いすると

「任せてください！」

そう言って、手慣れた手つきでヘアメイクを進めていっていますわ。

はぁ......相変わらずこの時間が億劫ですわね。

女性ってだけで、ヘアセットとメイクを朝早くから始めないといけないんですもの。

子息と令嬢の登校時間を変えてくれても良いと思いますわ。

なんて思っていると、コンコン、と部屋をノックする音と同時に

「俺だ。開けても大丈夫か？」

とお兄様の声が聞こえてきましたわ。

こんなに朝早くから珍しいですわね。

何かあったんでしょうか？

「どうぞ」

と短く返事をすると、お兄様が部屋に入ってきましたわ。

なんだか複雑そうな顔をしていますわね。

朝からそんな顔をしていたら、気分が下がりますわよ。

なんて思っていると、私がメイドにメイクをしてもらってるところを確認したお兄様が

「あぁ、まだ準備の途中だったよな。すまない」

と言いながらも、私の近くに来ましたわ。

急ぎの話、ということですわよね。

鏡越しにもお兄様の顔がしっかりと見えますわ。

いまだに何とも言えないような、複雑そうな顔をしているお兄様に

「どうしましたの？珍しいですわね」

と顔は動かさず尋ねると、頭をポリポリと掻きながら

「あー......それがな、ジオルグがお前を迎えに来たんだけど」

そう言ってきましたわ。

なるほど......お兄様がこんな顔をしているのもそれが原因、ということですわね。

なんて思いながら

「まぁ！昨日のあれが効いたんでしょうか？」

そう言って、うふふ、と微笑むと

「さぁな。ただ不機嫌そうな顔をしていたから、素直に自分が悪かった、なんて思っていないだろう」

お兄様はブレイド様の表情を思い出しているのか、不愉快そうな顔をしながらそう言いました。

うーん........不機嫌なんですのね。

あれほど大人数の前で私に怒られたことが気に入らなかったんでしょうか？

私はそうなると思っていたのでテラスを誘いましたのに、自業自得ですわよね。

はぁ.......なんだか面倒くさそうな一日になりそうな気がしますわ。

なんて思いながら、お兄様に

「まぁ、とりあえずわかりましたわ。準備が終わったらすぐに良く、と伝えてもらっても良いですか？」

と私が言うと

「わかった。まだ時間はあるんだ。ゆっくりでいいぞ」

そう言ってお兄様は部屋を後にしましたわ。

確かに、まだ時間はたっぷりありますわね。

元々ジオルグ様は早い時間に来て、お兄様と話をしながら私の準備が終わるのを待っている、というのが日課だった、ということもありますが。

ですが今日はジオルグ様の表情を見てお兄様も話をする気になれなかったんでしょう。

.......まぁ、他にも理由はあると思いますけど。