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40話 アレックスside
しおりを挟む1週間かけてやっと隣国に到着した。
行く前に父上に相談しようと思ったけど、何か言われるのも面倒だから、置き手紙だけ置いてきたから多分大丈夫だろう。
そう思っていると、リリアーナが
「アレックス様ぁ~、なんでこんなに沢山の兵士を連れてきたんですか~?」
そう言って俺の腕に絡みついてきた。
「あぁ、俺は王太子だからな。何かあったら困るだろう?」
そんなことすらわからないのか?と思ったが、口には出さず説明してやった。
まぁ、たまには親切にしてやらないとな。
勝手に帰られても困るし。
「なるほどぉ~!流石アレックスです!」
はぁ.....都合が良かったからとはいえ、リリアーナを連れてきたから気分が悪いな。
この甲高い声も耳障りだ......。
そう思ってさりげなくリリアーナから距離をとると、少し離れたところで兵士たちが話をしているのが見えた。
「なぁ...本当に良かったのか?ついてきて」
「仕方ないだろ。来なかったら陛下に言ってクビにするって言われたんだから」
「まさかこんなに大量の兵を用意していたなんて...」
「俺だって知っていたらついてこなかった...」
はぁ?自分達でついてきたんだろう?
一般兵が俺のことを守れるんだから、ありがたいと思えよ!
そう思って、つい
「そこ!何を話してるんだ!?」
と言ってしまった。
すると、兵士たちはバツの悪そうな顔をしながら
「い、いえ......何も...」
と黙ってしまった。
ふん!最初から大人しく俺についてくればいいんだよ!
全く...国に戻ったら兵士達を解雇してもらうか......。
☆★☆
やっとの思いでナルジェンダ国の国境門に辿り着いた。
思った以上に時間がかかってしまったから急いでユーフェミアのところに向かいたいのに、今は検問のところで躓いている。
「申し訳ございませんが、お通しすることは出来ません」
「なぜだ!俺はマーランナ国の王太子だぞ!」
そうだ、俺は王太子だぞ!?
わざわざ来てやったんだから、歓迎するのが当たり前だろう!?
すると、門番は
「でしたら入国許可証は?」
と無機質な態度を崩さずに言ってきた。
「......は?」
なんだそれ?
そんなものがあるなんて聞いていないぞ?
急にそんなことを言われて呆然としている俺に、門番は呆れた様子で
「王太子が来るとなれば、陛下から許可証を発行されるはずです。まさか、事前の連絡もなしに来たんですか......?」
と聞いてきた。
クソっ!バカにしやがって!
「な、何が悪いっていうんだ!」
「連絡もなしに急に来るなんて、礼儀知らずにも程があります。それに、そんなにぞろぞろと兵士を連れて......宣戦布告でもしに来たんですか?」
なんだ?この門番は......。
王子に対して生意気にも程があるだろ!
すると、今まで後ろにいたリリアーナが急に前に出てきて
「違うわ!私達はお姉様に会いたいだけなの!」
と言った。
あぁ、そうか。
自分の家族に会いに来たって言ってるんだ。
さすがにそれなら通してくれるだろう。
そう思って門番を見ると、リリアーナをジロジロ見た後に
「お姉様......?...あぁ。ユーフェミア様の元妹か」
と納得したようだ。
......ん?今元妹、と言わなかったか?
ユーフェミアはもうアージュ公爵家の者ではないのか?
でめリリアーナはそれに気付くことなく
「そうよ!私達はお姉様と話がしたいだけなの!」
と自信満々に頷いている。
いや、もしかして知っているのか?
「そうですか。だったら尚更許可証を持ってきてください。ユーフェミア様も暇じゃないんです。勝手にこられても困ります」
門番はそう言うと、話は終わりだ、と言わんばかりに立ち去ろうとしたから、背中に向かって
「なぜだ!ただ話をしたいだけなのに!」
と言うと
「はぁ......当たり前ですよね?大体、婚約破棄されたのにどの面下げて来たんですか?それと、そこの妹も、よく姉の婚約者を奪っておいて堂々としていますよね」
そう言って、立ち去ってしまった。
俺達はそれを言われて、ただ立ち尽くすことしか出来なかった。
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