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5話 レオンハルトside
しおりを挟む俺が狼狽えていると、ずっと黙っていたバルドトール公爵(スカーレットの父)が、あからさまに大きなため息ををついて
「とりあえず、先に婚約破棄の話をしてもいいですか?」
と聞いてきた。
なんだ、コイツは!王族に対して無礼にも程があるだろう!
父上はバルドトール公爵に対して、すまない、なんて謝っているし...。
なぜ父上が公爵如きに頭を下げるんだ!
そう思いながらバルドトール公爵を睨みつけるも気にする様子もなく、
「それで、この婚約を結ぶ時の約束......覚えていますよね?だから陛下はそんなに焦っているんですね?」
と話が始まった。
約束...?何だそれは!?
俺とスカーレットの婚約に何を約束したんだ?
父上を見ると
「あぁ、覚えている......」
と力なく頷いていた。
何のことを言っているのかわからない俺は、口を挟まずに、ただ2人の話を聞いていることしか出来ない。
そうわかっているから、とりあえず話を聞くことにした。
父上が頷いたのを確認すると、バルドトール公爵は満足そうに頷いて
「覚えているなら良かったです。では、今日この時をもって、我が家はヴァンライア国から独立させていただきます」
と言った。
これには思わず
「いや、なぜ俺とスカーレットが婚約破棄しただけで独立することにまでなるんだ!?」
椅子から立ち上がって聞いてしまった。
なぜだ!?
そりゃあ、あの場で皆に知らせるように宣言したことは少しは悪いと思っている。
でもたかが婚約破棄じゃないか!
すると、父上が溜息をつきながら
「レオンハルト......貴様は儂が話したことを全く聞いていなかったんだな」
そう言ってきた。
話したこと?なんだそれは?
父上の話は長いからいつも聞き流す程度でしか聞いていなかった。
そんなに大事なことならもっとわかりやすく手短に伝えてくれたら俺だって忘れないさ!
何とことかわからず首を傾げている俺を、バルドトール公爵は呆れた顔で俺の事を見ていた。
クソっ!どこまで無礼な奴だ!
こんな奴の家なんて独立したってすぐに滅ぶに決まってる!
もう思ったが、次に父上が発した言葉に驚くことになった。
「......バルドトール公爵家がいなくなってしまうと、我が国は衰退......いや、滅びてしまうかもしれん」
何度目かわからないため息をつきながらそう言った父上の顔は、今後のことを考えているのか絶望したような顔をしている。
その顔を見たら今言ったことが本当なんだ、と思わざるを得なかった。
「いや...でもなぜバルドトール公爵家1つなくなるだけで滅ぶなんて......!」
そうだ、公爵家は他にもあるだろう!?
なんでたった1つなくなるだけでそこまで国が危うくなるんだ!
そう言った俺に父上は呆れて何も言えないのか黙ってしまった。
だが、その代わりにバルドトール公爵が全てを説明してくれた。
バルドトール公爵家は元々独立するつもりだった...?
それを防ぐ為に俺とスカーレットの婚約を父上が無理やり結んだと言うのか......?
スカーレットが俺のことが好きで我儘言ったんじゃないのか?
...しかも、国庫のほとんどがバルドトール公爵家の税金だと!?
そんな馬鹿な話ある訳が.........。
全てを聞き終えた後に父上を見ると、なんだか父上の顔色が悪いように見えた。
話を聞いてる最中も、否定することなくただ黙ってバルドトール公爵の話に耳を傾けていた。
否定しなかった、ということは全て本当のことなんだろう。
そして、バルドトール公爵は最後に俺に対してこう言ってきた。
「それから、我が家は顔合わせのときに、殿下がスカーレットに言った言葉......いまだに許してませんから」
.........は?
顔合わせの時...?スカーレットに対して俺はなんて言ったんだ?
必死に思い出そうとするが、あの時は緊張していてあまり記憶がない。
何かまずいことでも言ったのか......?
考え込んでいる俺にバルドトール公爵は、覚えていないんですか、と小さく呟いたあと
「殿下はスカーレットが表情をコロコロ変えていることに対して、疲れる、と言ったんですよ。......そのせいでスカーレットは殿下の前では決して表情を変えることはなくなりました」
そう言って俺を軽蔑するような目で見てきた。
それだけ言うと、バルドトール公爵は
「では、独立の件は明日書類を持ってきます。そこの殿下がいる限り、もう二度とこの国に関わることはないでしょう」
と言ってその場を後にした。
父上が帰るのを止めようとしているが、俺はそれどころではなかった。
スカーレットが無表情の理由が俺だった、ということか?
俺は......それなのに、スカーレットに対して無表情な奴だなんて散々罵って.........。
一気に叩きつけられた真実に、俺は放心することしか出来なかった。
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