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召喚
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中学校を卒業した私、水上清香は春から県立高校に進む事になっている。
これでやっと離れられる…
私の住む地区一帯の大地主、大沢さんの孫娘で、双子の大沢ゆかり、愛理らに私は虐められていた。
「にゃーん!」
半年前に公園で拾った長毛種の白猫、マシロが足下にすり寄ってくる。拾った頃は片手に収まる位小さかったのに、随分大きくなった。
気が強い所もあるけど甘えん坊で、私の足にすり寄ってくる。
そうだ。蕪の間引きをしないと。
畳一畳分程の大きさの畑は、今の時期は手前一列が蕪、残り大半がじゃがいもが植えられている。
間引きしたものは、浅漬けにしてもいいし、味噌汁にしてもいい。
書いている原稿を後回しにして、マシロを撫でつつ部屋から出る。
「…げ」
窓の外に嫌な物が見えて、思わず呟いた。
今は外に出ない方がいいな…
鳴らされる呼び鈴。自転車があるから家にいるのは分かっているだろう…居留守を使うか?…いや、声を上げ始めた。全く、近所迷惑なのに。
「…何?」
うわ…ゆかりは金髪、愛理は髪が赤く染まっているよ…もうすぐ入学式な筈なのに。
「あたし達、これから彼氏とカラオケに行くんだけど、ちょっと足りないから貸してくれない?」
「駄目だよ。一度も返って来ないから、お母さんにも貸すなって言われてるし…自慢のおじいちゃんにでも貰ったら?」
というか、お金持ちの癖に人にたかるとか、いい加減止めてほしい。
「おじいちゃんは今日町内会でいないんだもん。お情けで住まわせて貰ってるくせに、ちょっとは私達に融通しといた方が得だと思うけど?」
「お情けって…そんな事言われる筋合いはないよ。家賃滞納してる訳でもないし、迷惑なんてかけられこそすれ、かけた事はないんだから」
「生意気!どうせ引き込もって怪しい物書いてるだけのくせに!」
人の趣味にどうこう言われたくはないし、同じ趣味の友人だっている。
「いいからさっさと出しなさいよ!」
掴みかかる二人の前に、マシロがフーッと唸って間に入る。
「一円だって出さないよ!」
その時、私達を囲むようにして光が紋様を描いて強く光った…そうして私達は、巻き込まれた。
冷たい石の床。何かが割れる音。沢山の人の声…目を開けると、ローブを着た魔法使い風の人達、金属鎧を着た人もいる…こ、これはまさか…
「おお!…宝珠は割れてしまいましたが、召喚に成功しました!…ではステータスの確認を…」
魔法使いの一人がボードのような物を持ち、私達に向ける。
オオサワユカリ 聖女
聖女の祈り 火魔法 アイテムボックスD
オオサワアイリ 大魔法使い
風魔法 土魔法 闇魔法アイテムボックスE
ミナカミサヤカ 引きこもり
亜空間 水 アイテムボックスS
大沢姉妹には感嘆の声を上げた魔法使い達も、私の引きこもり、の所で何人かが鼻で嗤った。
「おお…!召喚に成功したのだな!して、聖女は?」
結果を伝えるローブの男に、金髪の男は満足そうに頷く。
「美しき聖女達よ。この度は我らの呼び掛けに応え、私のもとに来てくれた事、感謝する。私はこのガリオン王国の王子、マルセイだ」
「わ…凄いね!お姉ちゃん、王子様だって!」
「王子様ぁ!わたしが聖女のゆかりでぇ~す!」
「あ、あたしも大魔法使いだもん!」
と、その時壮年のやはり金髪の男性が慌てた様子で入って来た。
「マルセイ…あれ程止めたのに!」
「良いではないですか、叔父上。此度の召喚は勇者ではなく聖女を召喚するもの…聖女は世界の為になるものと決まっています!」
「召喚は世界が危機に瀕した時のみに許されるものだ。宝珠が割れたのは、天罰か…とにかく、彼女達には今までの生活を捨ててもらう他はないのだぞ」
「勿論、聖女達に苦労はかけさせませんよ。余計な者も紛れ込んだようですが」
「ですが、亜空間という今までに見た事のないスキルを持ち、アイテムボックスは勇者が現れた時以来のサイズSです」
「アイテムボックスだけ大きくても仕方ないだろう…それなりに使い道はあるが」
「私は巻き込まれただけみたいですし、家に帰して貰えますか?」
あの口振りからすると、嫌な予感しかないけど。
「済まない…召喚の術しか伝わっていないんだ」
「ゆかり達はちやほやされそうですけど、私は体よく利用するつもりですか?」
「口のきき方に注意しろ。今ここで無礼打ちにされたくなければな」
「王子様~!あんなの放っておけばいいんですよ。大切なのは聖女、ですよね?」
「うむ。まずは客室に案内しよう。ドレスも用意するので、着替えるといい。美しいそなた達にはさぞかし似合うだろう」
王子は私に目もくれないで、ゆかり達を連れて去って行った。
「申し訳ない…甥は少々我が儘に育ってしまってな…ところで、先程から気になっていたのだが、それは魔物か?」
「は?マシロは猫!動物で家族ですよ!」
「危険はない、という事か?」
「勿論!虐めたりしなければ何もしないです。それより、帰れないなら、お金貸して下さい。無利子無期限無担保で。そうすればすぐにでも出ていきますから」
「待ってくれ…見た事もないスキルを持ち、大容量のアイテムボックスを持つとなれば、最悪奴隷にされて、使い潰される」
「その亜空間というスキルはどういう物なんですか?それと、アイテムボックスに時間停止の効果は?」
空気を読まない魔法使いが、口を挟んでくる。
「は?私はスキルなんてない世界から来たから、何も分からないし!」
「サジェス…他人のスキルを詮索するのはルール違反だ。それに、私はこの子も聖女達と同じように厚遇するつもりだ。私達が禁忌を破ってしまったのだからな」
あの王子様は信用ならないけど、この人は他よりも話が分かる?
「私は王弟キルリア。何も分からないまま外に出るのはお勧めしない。スキルや魔法等、色々と知ってからでも遅くはないのでは?」
それは…そうかも。魔法って、私も使えるのかな?水…魔法とは言ってなかったけど?
帰れない…のか。お母さん心配するだろうな…そして明日は燃えるゴミの日だ…ゴミ出しは私の仕事だったのに…
これでやっと離れられる…
私の住む地区一帯の大地主、大沢さんの孫娘で、双子の大沢ゆかり、愛理らに私は虐められていた。
「にゃーん!」
半年前に公園で拾った長毛種の白猫、マシロが足下にすり寄ってくる。拾った頃は片手に収まる位小さかったのに、随分大きくなった。
気が強い所もあるけど甘えん坊で、私の足にすり寄ってくる。
そうだ。蕪の間引きをしないと。
畳一畳分程の大きさの畑は、今の時期は手前一列が蕪、残り大半がじゃがいもが植えられている。
間引きしたものは、浅漬けにしてもいいし、味噌汁にしてもいい。
書いている原稿を後回しにして、マシロを撫でつつ部屋から出る。
「…げ」
窓の外に嫌な物が見えて、思わず呟いた。
今は外に出ない方がいいな…
鳴らされる呼び鈴。自転車があるから家にいるのは分かっているだろう…居留守を使うか?…いや、声を上げ始めた。全く、近所迷惑なのに。
「…何?」
うわ…ゆかりは金髪、愛理は髪が赤く染まっているよ…もうすぐ入学式な筈なのに。
「あたし達、これから彼氏とカラオケに行くんだけど、ちょっと足りないから貸してくれない?」
「駄目だよ。一度も返って来ないから、お母さんにも貸すなって言われてるし…自慢のおじいちゃんにでも貰ったら?」
というか、お金持ちの癖に人にたかるとか、いい加減止めてほしい。
「おじいちゃんは今日町内会でいないんだもん。お情けで住まわせて貰ってるくせに、ちょっとは私達に融通しといた方が得だと思うけど?」
「お情けって…そんな事言われる筋合いはないよ。家賃滞納してる訳でもないし、迷惑なんてかけられこそすれ、かけた事はないんだから」
「生意気!どうせ引き込もって怪しい物書いてるだけのくせに!」
人の趣味にどうこう言われたくはないし、同じ趣味の友人だっている。
「いいからさっさと出しなさいよ!」
掴みかかる二人の前に、マシロがフーッと唸って間に入る。
「一円だって出さないよ!」
その時、私達を囲むようにして光が紋様を描いて強く光った…そうして私達は、巻き込まれた。
冷たい石の床。何かが割れる音。沢山の人の声…目を開けると、ローブを着た魔法使い風の人達、金属鎧を着た人もいる…こ、これはまさか…
「おお!…宝珠は割れてしまいましたが、召喚に成功しました!…ではステータスの確認を…」
魔法使いの一人がボードのような物を持ち、私達に向ける。
オオサワユカリ 聖女
聖女の祈り 火魔法 アイテムボックスD
オオサワアイリ 大魔法使い
風魔法 土魔法 闇魔法アイテムボックスE
ミナカミサヤカ 引きこもり
亜空間 水 アイテムボックスS
大沢姉妹には感嘆の声を上げた魔法使い達も、私の引きこもり、の所で何人かが鼻で嗤った。
「おお…!召喚に成功したのだな!して、聖女は?」
結果を伝えるローブの男に、金髪の男は満足そうに頷く。
「美しき聖女達よ。この度は我らの呼び掛けに応え、私のもとに来てくれた事、感謝する。私はこのガリオン王国の王子、マルセイだ」
「わ…凄いね!お姉ちゃん、王子様だって!」
「王子様ぁ!わたしが聖女のゆかりでぇ~す!」
「あ、あたしも大魔法使いだもん!」
と、その時壮年のやはり金髪の男性が慌てた様子で入って来た。
「マルセイ…あれ程止めたのに!」
「良いではないですか、叔父上。此度の召喚は勇者ではなく聖女を召喚するもの…聖女は世界の為になるものと決まっています!」
「召喚は世界が危機に瀕した時のみに許されるものだ。宝珠が割れたのは、天罰か…とにかく、彼女達には今までの生活を捨ててもらう他はないのだぞ」
「勿論、聖女達に苦労はかけさせませんよ。余計な者も紛れ込んだようですが」
「ですが、亜空間という今までに見た事のないスキルを持ち、アイテムボックスは勇者が現れた時以来のサイズSです」
「アイテムボックスだけ大きくても仕方ないだろう…それなりに使い道はあるが」
「私は巻き込まれただけみたいですし、家に帰して貰えますか?」
あの口振りからすると、嫌な予感しかないけど。
「済まない…召喚の術しか伝わっていないんだ」
「ゆかり達はちやほやされそうですけど、私は体よく利用するつもりですか?」
「口のきき方に注意しろ。今ここで無礼打ちにされたくなければな」
「王子様~!あんなの放っておけばいいんですよ。大切なのは聖女、ですよね?」
「うむ。まずは客室に案内しよう。ドレスも用意するので、着替えるといい。美しいそなた達にはさぞかし似合うだろう」
王子は私に目もくれないで、ゆかり達を連れて去って行った。
「申し訳ない…甥は少々我が儘に育ってしまってな…ところで、先程から気になっていたのだが、それは魔物か?」
「は?マシロは猫!動物で家族ですよ!」
「危険はない、という事か?」
「勿論!虐めたりしなければ何もしないです。それより、帰れないなら、お金貸して下さい。無利子無期限無担保で。そうすればすぐにでも出ていきますから」
「待ってくれ…見た事もないスキルを持ち、大容量のアイテムボックスを持つとなれば、最悪奴隷にされて、使い潰される」
「その亜空間というスキルはどういう物なんですか?それと、アイテムボックスに時間停止の効果は?」
空気を読まない魔法使いが、口を挟んでくる。
「は?私はスキルなんてない世界から来たから、何も分からないし!」
「サジェス…他人のスキルを詮索するのはルール違反だ。それに、私はこの子も聖女達と同じように厚遇するつもりだ。私達が禁忌を破ってしまったのだからな」
あの王子様は信用ならないけど、この人は他よりも話が分かる?
「私は王弟キルリア。何も分からないまま外に出るのはお勧めしない。スキルや魔法等、色々と知ってからでも遅くはないのでは?」
それは…そうかも。魔法って、私も使えるのかな?水…魔法とは言ってなかったけど?
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