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泡のような、私の恋は。
4.女神の口づけを、ここに
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非凡なジークハルト殿下に対して、平凡な婚約者。
それが周囲が抱く感想で、だから私は、大臣たちにも陰口を叩かれてきた。
「そんなことを思っている人間は、誰もいないよ。それなら僕こそ、"王太子のくせに"とダメ出しされてばかりだ」
「まさか! 殿下は何でも出来て、とっても素晴らしくて、めちゃくちゃかっこよくて──」
「待って、待ってエヴェリン……! 嬉しいけど、過大評価だ」
耳まで真っ赤になった殿下が、なぜか手で顔を隠して横を向く。
「素晴らしいのはきみの方だよ、エヴェリン。きみは学園で受けた相談を見事解決して、僕を救ってくれた。"さすが未来の王妃"と絶賛されている。もっと自信を持って良いと思う」
「えっ?」
(絶賛? いつの間に? 褒められてるの、私? まったく気づいてなかった。けど……、確かに、今日はどの人にも好意的に迎えられた……)
いつも難しい顔をしている年嵩の大臣たちにも。
(なら……、それなら……)
「私が……、殿下の隣にいても大丈夫ですか?」
「もちろん。むしろきみ以外に誰がいると? きみじゃないと僕は嫌だ」
恐る恐る口にした私に、力強く殿下が断言される。
フンスという鼻息も、聞こえた気がする。
こんな積極的な殿下は初めてて、戸惑いつつも、その言葉を噛み締める。
(殿下、私が良いっておっしゃった? 私でも、いいの? 殿下を幸せにする役目。私に出来る?)
ヒロインが現れて、殿下と離れていた期間、すごく寂しかった。
つまり。つまり私は。
(誰にも譲れないほど、殿下が好き?)
もう認めるしかない。
私は殿下にベタボレだ。
いつの間にか、すごく近くにいらした殿下が耳元で囁く。
「ところで、きみが開発した"クリームソーダ"は、とても素晴らしかった。緑と白金……。カン違いだったら恥ずかしいんだけど、もしかしたら僕の色を……意識してくれたのかな?」
ボッと体中の血管が爆ぜる。
(見抜かれてる! 見抜かれてるわ、殿下に!)
「ああああ、あの、その」
「どうやら図星? 嬉しいな」
「~~~っっ」
(ううう殿下。その笑顔は反則です)
あまりに魅惑的な笑みに、艶めく視線で射貫かれて、ちょっと心臓に穴あきそう。
バクバクと脈打つ音が、外に洩れちゃう。
「でも残念ながら、クリームソーダにあって、僕に足りない色があるみたいなんだ」
「え?」
殿下の指が、そっと私のくちびるをなぞる。
「女神の口づけを、加えてくれると嬉しい」
「えええっ!?」
(それは、つまり、まさか、もしかして???)
体温を感じる程、彼の顔が近づいた。
こうして私は、愛しい相手との口づけが、すごく甘いことを知って。
(クリームソーダって、人を酔わせる効果あったかしら)なんて。
求められてる喜びに、恍惚と思考を奪われながら。
炭酸のように心地良い刺激が、舌を通じて全身を巡ったのだった。
(悪役令嬢の私の恋は、泡のように消えると思っていた。でも、泡のようにずっと弾け続ける、素敵な恋だったのね──)
その後私は、「きっと殿下を幸せにします」と嫁入りを決意。
自分のセリフを先に言われたと笑った殿下が、「じゃあ僕は、エヴェリンをもっと幸せにするよう頑張るよ」って返してくれただけで、最高に幸せなんだから。
私の"幸せ"は泡みたいに軽いかもと、ちょっと思ったのだった。
ブクブクブクブク。数えきれない幸せを立ち上らせて。
ハッピーエンドーっ!!
なお、恋人たちの愛を深める飲み物としてクリームソーダが国中に広まったのは、嬉しい出来事のひとつだったわ!
《泡のような、私の恋は。》完
それが周囲が抱く感想で、だから私は、大臣たちにも陰口を叩かれてきた。
「そんなことを思っている人間は、誰もいないよ。それなら僕こそ、"王太子のくせに"とダメ出しされてばかりだ」
「まさか! 殿下は何でも出来て、とっても素晴らしくて、めちゃくちゃかっこよくて──」
「待って、待ってエヴェリン……! 嬉しいけど、過大評価だ」
耳まで真っ赤になった殿下が、なぜか手で顔を隠して横を向く。
「素晴らしいのはきみの方だよ、エヴェリン。きみは学園で受けた相談を見事解決して、僕を救ってくれた。"さすが未来の王妃"と絶賛されている。もっと自信を持って良いと思う」
「えっ?」
(絶賛? いつの間に? 褒められてるの、私? まったく気づいてなかった。けど……、確かに、今日はどの人にも好意的に迎えられた……)
いつも難しい顔をしている年嵩の大臣たちにも。
(なら……、それなら……)
「私が……、殿下の隣にいても大丈夫ですか?」
「もちろん。むしろきみ以外に誰がいると? きみじゃないと僕は嫌だ」
恐る恐る口にした私に、力強く殿下が断言される。
フンスという鼻息も、聞こえた気がする。
こんな積極的な殿下は初めてて、戸惑いつつも、その言葉を噛み締める。
(殿下、私が良いっておっしゃった? 私でも、いいの? 殿下を幸せにする役目。私に出来る?)
ヒロインが現れて、殿下と離れていた期間、すごく寂しかった。
つまり。つまり私は。
(誰にも譲れないほど、殿下が好き?)
もう認めるしかない。
私は殿下にベタボレだ。
いつの間にか、すごく近くにいらした殿下が耳元で囁く。
「ところで、きみが開発した"クリームソーダ"は、とても素晴らしかった。緑と白金……。カン違いだったら恥ずかしいんだけど、もしかしたら僕の色を……意識してくれたのかな?」
ボッと体中の血管が爆ぜる。
(見抜かれてる! 見抜かれてるわ、殿下に!)
「ああああ、あの、その」
「どうやら図星? 嬉しいな」
「~~~っっ」
(ううう殿下。その笑顔は反則です)
あまりに魅惑的な笑みに、艶めく視線で射貫かれて、ちょっと心臓に穴あきそう。
バクバクと脈打つ音が、外に洩れちゃう。
「でも残念ながら、クリームソーダにあって、僕に足りない色があるみたいなんだ」
「え?」
殿下の指が、そっと私のくちびるをなぞる。
「女神の口づけを、加えてくれると嬉しい」
「えええっ!?」
(それは、つまり、まさか、もしかして???)
体温を感じる程、彼の顔が近づいた。
こうして私は、愛しい相手との口づけが、すごく甘いことを知って。
(クリームソーダって、人を酔わせる効果あったかしら)なんて。
求められてる喜びに、恍惚と思考を奪われながら。
炭酸のように心地良い刺激が、舌を通じて全身を巡ったのだった。
(悪役令嬢の私の恋は、泡のように消えると思っていた。でも、泡のようにずっと弾け続ける、素敵な恋だったのね──)
その後私は、「きっと殿下を幸せにします」と嫁入りを決意。
自分のセリフを先に言われたと笑った殿下が、「じゃあ僕は、エヴェリンをもっと幸せにするよう頑張るよ」って返してくれただけで、最高に幸せなんだから。
私の"幸せ"は泡みたいに軽いかもと、ちょっと思ったのだった。
ブクブクブクブク。数えきれない幸せを立ち上らせて。
ハッピーエンドーっ!!
なお、恋人たちの愛を深める飲み物としてクリームソーダが国中に広まったのは、嬉しい出来事のひとつだったわ!
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