76 / 77
【物語詩】首なし騎士と一人ぼっちのお姫様
全一話
しおりを挟む
北の古城には出るという
朽ちた城に 朽ちた鎧
首無し騎士のデュラハンが
歩き彷徨い出るという
出逢ったものは無情にも
彼の剣に切り裂かれ
憐れあの世の仲間入り
近づくまいぞ 寄るまいぞ
古城の化け物 怖ければ
噂たなびき 国中に
首無し騎士が知られると
ある日 古城に 姫が来た
恋した騎士を失って
はるばる徒歩で ただひとり
騎士を探しにやってきた
空には月が かかる夜
首無し騎士が前に立つ
姫は即座に声あげた
「私が渡した飾り紐
やはりあなたは愛しい御方」
首無し騎士は大弱り
「この飾りは拾い物
人違いだ」というはずが
首がないので話せない
ぐいぐいぐいと抱き着く姫に
戸惑い 殺せず そのままに
姫は古城に居座った
月出る夜は庭歩き
花を見ては笑顔咲く
雨降る夜は部屋の中
姫は歌って刺繍刺す
帰れ帰れよ人の世に
騎士は姫を促すも
言葉紡げず通じない
いつしか隣に眠る姫
首無し騎士は沈黙す
そんなある日 兵士たち
古城に向かってやってきた
ようやく姫の迎えかと
安堵したのも束の間で
兵士が姫を取り囲む
「お妃様の命令で 命奪いに来てやった
お前の騎士が殺されて
この城にいるというのはただの嘘
彼なら城でお妃に しっぽを振って懇ろに
閨の相手を務めてる
お前を守って死ぬ騎士は 誰もいないさ 価値もない」
嘲り笑う兵士たち
姫を囲んでおもむろに 手に持つ剣を振り上げた
ひらり降りるは漆黒の
夜より黒い鎧とマント
首無し騎士の冷たい剣
あっという間に兵士たち
ぽんと首とび 死体へと
成り果て転がる血の海に
(泣くな 泣くな 小さな姫よ)
声なき代わりに差し出した
腕で姫を抱きとめた
首無し騎士の胸に伏せ
震えながらに打ち明ける姫
「分かっていたの本当は
あなたの無言を良いことに
甘えてしまってごめんなさい
私はあの日 あなたから
殺されるために来たのです
恋した騎士の裏切りと
継母の企み知っていて
"私の命は貴様らに
ゆだねるものか"と決意して
それでも自刃が出来なくて
噂辿って首無しの
騎士様探して来たのです
軽蔑したでしょ 怒っていいの
さあ私もこの城の 血の一滴に加えてください」
見上げる姫の願いを前に
首無し騎士は躊躇った
「昔私は横暴で 人の心がないゆえに
死して首無し怪物に 命この世に据え置きに
そんな身の上いまさらに
小さな姫が愛おしい
殺せるわけない 生かしたい
呪われた身ではあるけれど
護りたいのだ あなたのことを」
見つめることも 伝えることも
出来ない首無し騎士の声
不思議と姫は聞き取った
「人の心がないなんて
あなたは誰よりあたたかよ」
そっとつま先立ちをして
白いうなじの首伸ばし
姫は虚空に接吻をした
北の古城には出るという
美貌の騎士に可憐な姫
仲睦まじく健やかに
非道な悪人狩るという
悪さをするな 近づくな
お妃様と間男の
騎士の首が晒された
首無し騎士は"悪人"の
命を吸って 生前の
人の姿に戻ったらしい
そんな噂が 駆け巡る
静かな夜が 見せる夢路に
《首なし騎士と一人ぼっちのお姫様》完
朽ちた城に 朽ちた鎧
首無し騎士のデュラハンが
歩き彷徨い出るという
出逢ったものは無情にも
彼の剣に切り裂かれ
憐れあの世の仲間入り
近づくまいぞ 寄るまいぞ
古城の化け物 怖ければ
噂たなびき 国中に
首無し騎士が知られると
ある日 古城に 姫が来た
恋した騎士を失って
はるばる徒歩で ただひとり
騎士を探しにやってきた
空には月が かかる夜
首無し騎士が前に立つ
姫は即座に声あげた
「私が渡した飾り紐
やはりあなたは愛しい御方」
首無し騎士は大弱り
「この飾りは拾い物
人違いだ」というはずが
首がないので話せない
ぐいぐいぐいと抱き着く姫に
戸惑い 殺せず そのままに
姫は古城に居座った
月出る夜は庭歩き
花を見ては笑顔咲く
雨降る夜は部屋の中
姫は歌って刺繍刺す
帰れ帰れよ人の世に
騎士は姫を促すも
言葉紡げず通じない
いつしか隣に眠る姫
首無し騎士は沈黙す
そんなある日 兵士たち
古城に向かってやってきた
ようやく姫の迎えかと
安堵したのも束の間で
兵士が姫を取り囲む
「お妃様の命令で 命奪いに来てやった
お前の騎士が殺されて
この城にいるというのはただの嘘
彼なら城でお妃に しっぽを振って懇ろに
閨の相手を務めてる
お前を守って死ぬ騎士は 誰もいないさ 価値もない」
嘲り笑う兵士たち
姫を囲んでおもむろに 手に持つ剣を振り上げた
ひらり降りるは漆黒の
夜より黒い鎧とマント
首無し騎士の冷たい剣
あっという間に兵士たち
ぽんと首とび 死体へと
成り果て転がる血の海に
(泣くな 泣くな 小さな姫よ)
声なき代わりに差し出した
腕で姫を抱きとめた
首無し騎士の胸に伏せ
震えながらに打ち明ける姫
「分かっていたの本当は
あなたの無言を良いことに
甘えてしまってごめんなさい
私はあの日 あなたから
殺されるために来たのです
恋した騎士の裏切りと
継母の企み知っていて
"私の命は貴様らに
ゆだねるものか"と決意して
それでも自刃が出来なくて
噂辿って首無しの
騎士様探して来たのです
軽蔑したでしょ 怒っていいの
さあ私もこの城の 血の一滴に加えてください」
見上げる姫の願いを前に
首無し騎士は躊躇った
「昔私は横暴で 人の心がないゆえに
死して首無し怪物に 命この世に据え置きに
そんな身の上いまさらに
小さな姫が愛おしい
殺せるわけない 生かしたい
呪われた身ではあるけれど
護りたいのだ あなたのことを」
見つめることも 伝えることも
出来ない首無し騎士の声
不思議と姫は聞き取った
「人の心がないなんて
あなたは誰よりあたたかよ」
そっとつま先立ちをして
白いうなじの首伸ばし
姫は虚空に接吻をした
北の古城には出るという
美貌の騎士に可憐な姫
仲睦まじく健やかに
非道な悪人狩るという
悪さをするな 近づくな
お妃様と間男の
騎士の首が晒された
首無し騎士は"悪人"の
命を吸って 生前の
人の姿に戻ったらしい
そんな噂が 駆け巡る
静かな夜が 見せる夢路に
《首なし騎士と一人ぼっちのお姫様》完
185
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
【完結】見返りは、当然求めますわ
楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。
この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー
「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」
微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。
正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる