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12.再会
──四年後──
元気いっぱいの声が、私に呼びかけた。
「かーしゃま、みててね」
「えっ?」
(きゃあああああ!)
言うと同時に、でんぐり返しを決めた息子に心の中で絶叫する。
声に出すと、子どもがびっくりするからだけども。
私の目の前で、前転もどきを披露したルーイは、ぽてっと斜めに転がった後、ドヤ顔をしてこちらを振り返った。
「しゅごい?」
「す、すごいー。わああ、いつの間に出来るようになったの? ルーイは天才ね!」
拍手をしながら、服についた泥をはたき落そうと、慌てて駆けつけ隣にしゃがむ。
さすが子ども。一手先の動きが、まったく予想できない。
「でも玄関口ではやめておこうか? 怪我してもいけないし、他の人が来た時、驚いちゃうからね」
「あい」
返事だけはいい。
アパートの共有玄関は、人の出入りがある外も同然なのに。
「たくじちょで、おちえてもらったの」
「そっかぁ。託児所って、でんぐり返し教えてくれるの?」
「でんぎゅり?」
首をかしげる子どもの様子を見ると、こちらでは 前転を"でんぐり返し"とは呼ばないのかもしれない。
「あっ」
「ルーイ?」
「おはな。はい、どーじょ」
「あ、ありがとう。綺麗ね」
外に出た途端、石畳の隙間にあった野草を目ざとく摘んで、差し出してくれる。すごく可愛い。
可愛いんだけれども。
今こんなことしてる場合じゃなく──。
「このおはな、かーしゃまの目と同じ色」
「ルーイ……っ!」
じ~ん。
露草の明るい青は私の目の色そっくりで、子どもの観察力は素晴らしい。
はっ、感極まってる場合じゃなかった。
「ルーイ、急ごうか? 母様、お仕事に間に合わなくなっちゃうわ」
「あいっ」
本当に返事は満点だ。
片手に野の花、もう片方の手は息子とつないで、私は歩き始めた。
◇
託児所。教会に併設されているその施設は、私が皇妃だったころ提案し、けれど予算の何のと実現してなかった支援政策のひとつだ。
昨年より施行され、私もしっかり利用させて貰っている。
シュテファンとの間の子は、男の子だった。
金紫の瞳を持つ天使! いつ背中に羽が生えてもおかしくないくらい、愛らしい見た目をしている。
でも本当に天に召されたりしたら大変なので、羽は絶対生えちゃダメだ。
産まれてから今日まで、幸い大病せず健やかに育ってきた。
衛生状況や医療の発展がまだまだな世界で、ありがたいことである。
(まあ、この世界には代わりに"魔力"があるけどね)
その魔力を活用して、魔術国家シルムが薬草の生産率を上げた。なんでも、魔術を駆使し、薬草の生息環境を再現したのだとか。
シルムは領地戦をお家芸にしている国だと思っていたけれど、ここ近年は国内の発展に注力しているらしく、きな臭い話が減っている。
(もともとは傷ついた自国の兵のため、薬を大量に作ろうとしたのがキッカケと聞くけど)
田舎町の住民に入ってくるのは噂話程度なので、詳しくはわからない。
私と息子のルーイは、帝国の片隅にある小さな町に住んでいる。
はじめは静かな村で暮らそうとした。でも、辺境の村に飛び込むには、私たちは目立ちすぎるようだった。それに育児をしながら、自給自足の生活は無理過ぎて。
悩んでいたら、村に立ち寄った冒険者が、この町を紹介してくれた。
職はあるし、困ったときにお惣菜は買えるし、お医者様もいて本当に助かる!
いまは託児所に息子を預け、仕事に通う日々だ。
(──冒険者といえば、あれからリヒトには連絡出来てないままだけど、元気にしてるかしら。困ったら連絡して、と言ってくれてたけど、あまり困らずに済んでるのよね。今までも問題が起きると、偶然出会った人たちがなぜか助けてくれて)
ちなみにリヒトに正体を見破られるきっかけとなった私の銀髪は、いまは茶色に染めている。
この町で出会った染料が、私の髪によく馴染み、自然素材で子どもにも使えるということだったので、ルーイも託児所に行き始めてからは茶髪だ。
"私の事情に巻き込んでごめん"と、息子に対して罪悪感を覚える。
(本当なら、生まれ持った銀髪のまま、手厚く育てられるはずの子なのに)
きゅっ、とルーイを握る手に力が入る。
「かーしゃま?」
不思議そうに見上げてくる、金紫の目がシュテファンそっくりだ。吸い込まれそうなくらい綺麗な、星の光を宿した色。
(この色ばかりは変えることが出来ないけれど──)
「あらぁ、珍しい色。かわいい子ねぇ」
道行く婦人に、声をかけられた。
「あ、ありがとうございます」
ペコリと会釈しながら、互いに通り過ぎる。
皇族の瞳が金紫だと知られてない、田舎町ならではの緩さ、助かる!
ルーイが金紫の目を受け継いで生まれた時には「どうしよう」と焦ったものの、取り上げてくれた産婆さんも、他の人も。
皆「きれいな色ね」で、あっけなく終わってびっくりした。
さらに茶髪が作る影と光の加減で、錯視効果が生まれ、一見、金紫と分かりにくい。
だまし絵でストライプに挟まれた色が別の色に見える、あの原理だ。
(可愛い息子に、一生偽りの姿を強いるわけにはいかないけど……)
帝都の皇帝が子を持てば、また状況は変わってくるだろう。
ズキ、と胸が痛んだ。
私はまだ、シュテファンへの想いを忘れられないでいる。
彼が"新しい皇妃を迎えた"という報を聞かないで済んでいる現状に、ホッとしているくらいに。
そうなのだ。
"皇妃エリザ"がいなくなった今、彼はアンネを妃にすることが出来るはずなのに、一向にそんな噂が流れてこない。
置いて来た離婚届けも提出されていないようで、「皇妃は療養中」と発表され、あらゆる公務に不在な理由は、すべてそれで通されている。
そんな中、直近で最も驚いたニュースは。
エリザの実家、リーネル公爵家の失脚だった。
帝国法に触れる行為が暴かれ、父、リーネル公爵は責任をとり引退。
多額の罰金刑の上、公爵家は伯爵家に格下げ。なんとか存続を許された家門は、兄ベルントが後を継いだらしい。
今まで君臨していたリーダーを失い、帝国貴族は瓦解寸前。
そこを素早く皇帝が自陣に引き込み、勢力図は大きく塗り替えられた。シュテファンの勝利だ。
(違約金代わりに残して来た情報が、役に立ったみたい。でも……。アンネと調べていくはずだった小説情報を先に提供しちゃったせいか、公爵家取り潰しまでは追い込めなかった? 噂では、皇妃の出身家門だから降格にとどまったと憶測されてるけど、きっと材料が足りなかったんだわ。だって、私のことなんて、シュテファンには関係ないもの)
完璧に詰めていれば、エリザも廃妃のうえ追放宣言が出ていたはずだから──。
◇
「じゃあルーイ、先生のいう事よく聞いて、お利口に過ごすのよ?」
「あーい。かーしゃま、おむかえにきてね」
「ええ。お仕事が終わったら、迎えに来るからね」
「あいっ!」
いつもの託児所にルーイを預け、職場へと向かう。
町のカフェで、夕方まで女給の仕事。
(皇家の宝石類は当然置いて来てるし、嫁入り時に公爵が見栄を張った装飾品は嵩張るから持ち出してない。エリザの私物は殆どなくて、いくらかはお金に換えたけど、生活に困窮するほどではない。とはいえ……)
将来を見据えて、働けるときは働かなくちゃ。ルーイに美味しいもの食べさせたいものね。
「エリさぁん、奥のテーブル、注文取ってきてー」
「はーい」
奥の席っと──。
(初見のお客様かな?)
常連さんの多いこの地元カフェに、フード付きマントで来店するなんて珍しい。旅途中の休憩と言ったところだろうか。
身なりは不明だが、がっしりした肩幅に男性だとわかる。
「お待たせしました。ご注文をお伺いします」
「──"女主人のお気に入り"を、頼みたい」
「!?」
(聞き間違い? でも)
まさかという思いで、聞き覚えのある声の主を改めて見ると、深く被ったフードから金紫の瞳と目があった。
"彼"が言う。
「髪を染めたんだな。銀髪のあなたも綺麗だったが、茶色も似合ってる」
「陛下……?」
元気いっぱいの声が、私に呼びかけた。
「かーしゃま、みててね」
「えっ?」
(きゃあああああ!)
言うと同時に、でんぐり返しを決めた息子に心の中で絶叫する。
声に出すと、子どもがびっくりするからだけども。
私の目の前で、前転もどきを披露したルーイは、ぽてっと斜めに転がった後、ドヤ顔をしてこちらを振り返った。
「しゅごい?」
「す、すごいー。わああ、いつの間に出来るようになったの? ルーイは天才ね!」
拍手をしながら、服についた泥をはたき落そうと、慌てて駆けつけ隣にしゃがむ。
さすが子ども。一手先の動きが、まったく予想できない。
「でも玄関口ではやめておこうか? 怪我してもいけないし、他の人が来た時、驚いちゃうからね」
「あい」
返事だけはいい。
アパートの共有玄関は、人の出入りがある外も同然なのに。
「たくじちょで、おちえてもらったの」
「そっかぁ。託児所って、でんぐり返し教えてくれるの?」
「でんぎゅり?」
首をかしげる子どもの様子を見ると、こちらでは 前転を"でんぐり返し"とは呼ばないのかもしれない。
「あっ」
「ルーイ?」
「おはな。はい、どーじょ」
「あ、ありがとう。綺麗ね」
外に出た途端、石畳の隙間にあった野草を目ざとく摘んで、差し出してくれる。すごく可愛い。
可愛いんだけれども。
今こんなことしてる場合じゃなく──。
「このおはな、かーしゃまの目と同じ色」
「ルーイ……っ!」
じ~ん。
露草の明るい青は私の目の色そっくりで、子どもの観察力は素晴らしい。
はっ、感極まってる場合じゃなかった。
「ルーイ、急ごうか? 母様、お仕事に間に合わなくなっちゃうわ」
「あいっ」
本当に返事は満点だ。
片手に野の花、もう片方の手は息子とつないで、私は歩き始めた。
◇
託児所。教会に併設されているその施設は、私が皇妃だったころ提案し、けれど予算の何のと実現してなかった支援政策のひとつだ。
昨年より施行され、私もしっかり利用させて貰っている。
シュテファンとの間の子は、男の子だった。
金紫の瞳を持つ天使! いつ背中に羽が生えてもおかしくないくらい、愛らしい見た目をしている。
でも本当に天に召されたりしたら大変なので、羽は絶対生えちゃダメだ。
産まれてから今日まで、幸い大病せず健やかに育ってきた。
衛生状況や医療の発展がまだまだな世界で、ありがたいことである。
(まあ、この世界には代わりに"魔力"があるけどね)
その魔力を活用して、魔術国家シルムが薬草の生産率を上げた。なんでも、魔術を駆使し、薬草の生息環境を再現したのだとか。
シルムは領地戦をお家芸にしている国だと思っていたけれど、ここ近年は国内の発展に注力しているらしく、きな臭い話が減っている。
(もともとは傷ついた自国の兵のため、薬を大量に作ろうとしたのがキッカケと聞くけど)
田舎町の住民に入ってくるのは噂話程度なので、詳しくはわからない。
私と息子のルーイは、帝国の片隅にある小さな町に住んでいる。
はじめは静かな村で暮らそうとした。でも、辺境の村に飛び込むには、私たちは目立ちすぎるようだった。それに育児をしながら、自給自足の生活は無理過ぎて。
悩んでいたら、村に立ち寄った冒険者が、この町を紹介してくれた。
職はあるし、困ったときにお惣菜は買えるし、お医者様もいて本当に助かる!
いまは託児所に息子を預け、仕事に通う日々だ。
(──冒険者といえば、あれからリヒトには連絡出来てないままだけど、元気にしてるかしら。困ったら連絡して、と言ってくれてたけど、あまり困らずに済んでるのよね。今までも問題が起きると、偶然出会った人たちがなぜか助けてくれて)
ちなみにリヒトに正体を見破られるきっかけとなった私の銀髪は、いまは茶色に染めている。
この町で出会った染料が、私の髪によく馴染み、自然素材で子どもにも使えるということだったので、ルーイも託児所に行き始めてからは茶髪だ。
"私の事情に巻き込んでごめん"と、息子に対して罪悪感を覚える。
(本当なら、生まれ持った銀髪のまま、手厚く育てられるはずの子なのに)
きゅっ、とルーイを握る手に力が入る。
「かーしゃま?」
不思議そうに見上げてくる、金紫の目がシュテファンそっくりだ。吸い込まれそうなくらい綺麗な、星の光を宿した色。
(この色ばかりは変えることが出来ないけれど──)
「あらぁ、珍しい色。かわいい子ねぇ」
道行く婦人に、声をかけられた。
「あ、ありがとうございます」
ペコリと会釈しながら、互いに通り過ぎる。
皇族の瞳が金紫だと知られてない、田舎町ならではの緩さ、助かる!
ルーイが金紫の目を受け継いで生まれた時には「どうしよう」と焦ったものの、取り上げてくれた産婆さんも、他の人も。
皆「きれいな色ね」で、あっけなく終わってびっくりした。
さらに茶髪が作る影と光の加減で、錯視効果が生まれ、一見、金紫と分かりにくい。
だまし絵でストライプに挟まれた色が別の色に見える、あの原理だ。
(可愛い息子に、一生偽りの姿を強いるわけにはいかないけど……)
帝都の皇帝が子を持てば、また状況は変わってくるだろう。
ズキ、と胸が痛んだ。
私はまだ、シュテファンへの想いを忘れられないでいる。
彼が"新しい皇妃を迎えた"という報を聞かないで済んでいる現状に、ホッとしているくらいに。
そうなのだ。
"皇妃エリザ"がいなくなった今、彼はアンネを妃にすることが出来るはずなのに、一向にそんな噂が流れてこない。
置いて来た離婚届けも提出されていないようで、「皇妃は療養中」と発表され、あらゆる公務に不在な理由は、すべてそれで通されている。
そんな中、直近で最も驚いたニュースは。
エリザの実家、リーネル公爵家の失脚だった。
帝国法に触れる行為が暴かれ、父、リーネル公爵は責任をとり引退。
多額の罰金刑の上、公爵家は伯爵家に格下げ。なんとか存続を許された家門は、兄ベルントが後を継いだらしい。
今まで君臨していたリーダーを失い、帝国貴族は瓦解寸前。
そこを素早く皇帝が自陣に引き込み、勢力図は大きく塗り替えられた。シュテファンの勝利だ。
(違約金代わりに残して来た情報が、役に立ったみたい。でも……。アンネと調べていくはずだった小説情報を先に提供しちゃったせいか、公爵家取り潰しまでは追い込めなかった? 噂では、皇妃の出身家門だから降格にとどまったと憶測されてるけど、きっと材料が足りなかったんだわ。だって、私のことなんて、シュテファンには関係ないもの)
完璧に詰めていれば、エリザも廃妃のうえ追放宣言が出ていたはずだから──。
◇
「じゃあルーイ、先生のいう事よく聞いて、お利口に過ごすのよ?」
「あーい。かーしゃま、おむかえにきてね」
「ええ。お仕事が終わったら、迎えに来るからね」
「あいっ!」
いつもの託児所にルーイを預け、職場へと向かう。
町のカフェで、夕方まで女給の仕事。
(皇家の宝石類は当然置いて来てるし、嫁入り時に公爵が見栄を張った装飾品は嵩張るから持ち出してない。エリザの私物は殆どなくて、いくらかはお金に換えたけど、生活に困窮するほどではない。とはいえ……)
将来を見据えて、働けるときは働かなくちゃ。ルーイに美味しいもの食べさせたいものね。
「エリさぁん、奥のテーブル、注文取ってきてー」
「はーい」
奥の席っと──。
(初見のお客様かな?)
常連さんの多いこの地元カフェに、フード付きマントで来店するなんて珍しい。旅途中の休憩と言ったところだろうか。
身なりは不明だが、がっしりした肩幅に男性だとわかる。
「お待たせしました。ご注文をお伺いします」
「──"女主人のお気に入り"を、頼みたい」
「!?」
(聞き間違い? でも)
まさかという思いで、聞き覚えのある声の主を改めて見ると、深く被ったフードから金紫の瞳と目があった。
"彼"が言う。
「髪を染めたんだな。銀髪のあなたも綺麗だったが、茶色も似合ってる」
「陛下……?」
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