最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音

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ダクア編

第33話 曲者だらけのギルド内

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 応接室から出てすぐ。
 ギルドのホールに1組の冒険者が居た。

「おっ」
「ん?」

 男3人女2人の5人組。
 ちなみに真っ先に私たちに気付いて反応したのは1番歳下の少年だ。

 約半月ほどこの街にいて分かったが、ダクアの活動的な冒険者は9割が月組だった。例外が私とかライアーとか、後これ以上クラン新規加入者という被害者を増やしてたまるかと奮闘するグレンさんのおかげで免れた一部の人。
 私が顔を覚えてなくても、月組は覚えているという。

 つまり、このパーティーは初見だということ。

「良かった、ギルド職員! ……職員?」
「あ、違うです。通常に奥使用すてた冒険者です」
「……なんて?」
「今の言葉比較的優しめですぞね!?」
「お前の言語に厳しめも優しめもあってたまるか」

 同い年くらいだろう、最年少である首を傾げた少年の反応。ライアーに向かって異議を申し立てるも裏切りにあった。解せぬ。ちょっと上手く喋れたと思ったのに。

「りゅりーふぃ、り、りりぃひ」
「無理すんな」
「職員の人は席ぞ外すしています。少しで戻ると思うですぞ」

 ふぅん、という興味無さそうな反応が帰ってきた。

「通行記録をつけてもらいたかったんだけど……。居ないならしゃーねーか。お前らこの街の冒険者?」
「私を知らぬとはモグリですね貴様ら」
「俺をツッコミ疲れさせるつもりか新米冒険者」
「あいてっ!」

 腕を組んでふんぞり返ってみると、ライアーにスパンと頭を叩かれた。冗談じゃんか。
 私そもそも月組が知ってるってだけで知名度全然無いしね。

「そもそも通行記録ぞ何?」
「指名依頼が来てもいいように『自分はこの街にいますよ』ってギルドに把握してもらうための記録。ほんとになんも知らねぇな。ちなみに通行記録は義務じゃない」

 なるほど。じゃあそもそもFランクである私たちに指名依頼なんて物は来ないから、通行記録を取ってもらわなくていいってわけだ。
 狙われる立場だと『ここにいますよ』ってアピールするだけになるし。待って、私別に狙われてない。脳内が物騒。

「折角だしこの街のこと教えてよ」

 青年がニパリと笑みを浮かべた。好青年らしい笑顔。訂正──嘘くせぇ笑顔だ。
 私とライアーは目を合わせる。

「他に当たるして」
「他に当たれよ」

 そして背中を向けた。

──ガシッ

「おいおいご両人……。折角笑顔が素敵で素直なダクア新米冒険者が聞いてるのにそれはないんじゃねーの?」

 あーー。面倒臭いのに捕まった。
 この世界に癖のないやつは居ないのか。

 服を引っ張られながら大した抵抗もせず、ズルズル引き摺られて適当な椅子に座らされた。
 男のパーティーメンバーはこちらを見ながらクスクス笑うだけで止めようとも加勢しようともしない。完全に傍観スタイルだ。

「オレはペイン。あっちでどー考えてもオレを面白がってるヤツらが俺のパーティーメンバー」
「嬢ちゃんこれからどうする」
「ギルドから(内部調査をするべき)ですかね」
「なぁお前らオレと会話する気ある?」

 無いです。

 ペイン、と自己紹介をした男を見る。
 歳は私と同い年くらい。つまり、14~15のガキンチョ盛り。髪色は闇を煮詰めた様な黒。瞳は碧眼……と言っても濃い色ではなく、湖を思わせる青白い色。
 顔は整っていて手入れもされている様に見えなくもない。
 服装から察するに王道的な前衛職。胸当と盾、片手剣。良くも悪くも『普通の冒険者』だね。

「それで、お前らの名前は? つーか、歳離れてるのにコンビ組んでんの珍しくね?」

 そして漂う陽キャの香り。うーん。これが善人なら距離を置きたい。

「会話しろよー! オレ無視されるの1番苦手なんだよー!」
「おっさんもしもしするとこれナンパ?」
「ッッッじゃねーよ!」
「おいおい……いくら俺が色男だからって若い男は趣味じゃねぇぞ……ふっ……」
「んな訳あるかボケ! もしナンパだとしてもオジサンの方じゃねーのは確実だ!」

 同年代って前世があるから歳下って感覚だからからかいたくなる。

 ……でもなんだろーな。そこはかとなく嫌な予感。なんか、下手に手を出すと飲まれそうな男だ。

「私リィン。こっちライアー」
「へぇ、リィンとライアーか。あ、ちなみにオレらCランクパーティーでリーダーがオレな!」
「……!」

 へぇ、結構強い。
 FからEランクに上げる方法は知っているけど、それ以降は知らないのでどれくらいのミッションをこなせるか分からないが、実力があるということに違いは無い。

 ……ところでCランクパーティーって何?
 パーティーは別にギルドを通さなくても組めるからランク付けは出来ないよね?

 考えていることが分かったのか、ライアーは『後でな』と口パクで伝えてきた。忘れそう。

「お前らはコンビ? パーティー? もしかしてクラン?」
「コンビ」
「コンビぞ!」
「びっくりした……。めっちゃ食い気味じゃん」

 この街でクランなんて言ったら厄介な塊に放り込まれるからだよ……。事実そうじゃなかったとしても。

「そーそー。この前スタンピードあったって言ったじゃん! オレ、それ聞いて来たんだよな」
「趣味悪……」
「リィン、聞こえてんぞ」

 ボソリと呟いたのに普通にバレた。
 私は机の上で腕を組み、ぶすくれる。

「颯爽と現れた女狐! 大魔法を使って窮地を脱出! いやー、オレ憧れるわ」

 どうやら身振り手振りでプレゼンしている様。
 女狐の名前も、何が起こったかも。娯楽の少ないこの世界じゃ広まるのは速い。瞬く間に、と言っても過言じゃない。

「──ダクアの冒険者だろ? なんか知らねーか?」

 サワッと肌を触れる微弱な電流の様な気配。

「いや、全く……」

 ペインの青い瞳の瞳孔がキュウッ……と細くなっていた。

──パァンッ!

「……!」
「び……ッッ」

 私はライアーとペインの間で猫騙しをする。要するに手を叩いた。身を乗り出したため、席から立ち上がる羽目になっている。

 猫が驚いた瞬間の様に顔を驚愕に染める2人。
 ペインのパーティーメンバーも突然の奇行に驚いて武器を手にしていた。

「びっくりするだろーが小娘!」
「あーあー申し訳ございませんですー!」

 隣からの苦情を適度に流しながらペインを見下ろす。

「…………マジか」

 心底驚きました、という様な表情でペインは私を見上げていた。

 補助魔法もそうだけど、魔法を使うと大体瞳孔が変化する。なんせ魔法の発動自体に集中力が必要だから。まぁ、無詠唱の場合めちゃくちゃ集中力がいるってだけで、詠唱したり杖を持ったり、などの補助があればどうということもない。

 これを踏まえると、このペインという男は私と同じように魔法を無詠唱な上に杖などの補助具も無しで魔法を使えた、ということだ。

「……今何が起こった嬢ちゃん」
「精神魔法の類い、と思考するです」

 私とペインの反応にライアーが『何かされた』と勘づいたらしい。
 魔法だから物理というのは少し違うけど、ファイアボールなどの即物的な魔法と違ってバフやデバフの補助魔法などの精神に影響する見えない魔法は避けにくければ感知しにくい。

 私はそれに対して無理矢理魔法を使った。防御魔法を無詠唱で。気合い入れるために手を叩いたけどさ。多分手遅れ。

 魔法職の私でさえ食らった後に気付いたんだから、魔法に詳しくない前衛職のライアーは気付かないだろう。


「マジかーーー! リィンお前中々やるな!」

 パァッ! と顔を喜色に染めてペインが私の手を取った。机に立て掛けていた箒が衝撃でカランと落ちる。

「さっきのオレの唯一使える魔法なんだよなァ! アイツらも全然分かんなかったんだぜ」

 人懐っこそうな笑顔を浮かべてブンブン手を振り回す。腕がもげそう。

「へぇ、どんな魔法?」
「──本当かウソか分かる魔法」

「「……ッ!」」

 ライアーが私を引っ掴んでペインと物理的に距離を取らせる。グインと引っ張られた私は普通にバランスを崩した。

「あはっ、そんなに警戒すんなよー。頭が働いて警戒心の強い奴って嫌いじゃねーけど」

 ペインは椅子から立ち上がってその青い瞳で私を見る。

「嘘吐きは良くねェよなー?」

 背筋に寒気が走った!
 絶対走った!

 コイツ、コイツ絶対。

「──猫被り……ッ!」
「お前が言うなお前が!」

 猫被りほど性格の悪いものは無い!
 最初から違和感があったのはアレだ、性格的に嘘をついているとわかったからだ。

「このッッ、お馬鹿!」

 思わずギョッと目を見開く。
 ペインのパーティーメンバーの1人、おっとりとした雰囲気の女性が思いっきりペインの脳天目掛けて肘を繰り広げたからだ。そこで拳じゃなくて肘な辺り威力を増し増しで食らわせてやろうって魂胆が見えてくる。仲間に容赦ないな。

「ごめんなさいね、うちのお馬鹿ちゃんが。もう、人を探るのが呼吸をするのと同じ、くらいのお馬鹿ちゃんなの」
「誰がお馬鹿だババ……」
「──何か仰って?」
「なんでもないですお姉様」

 借りてきた猫のように大人しくなったペイン。
 このパーティーの力バランス、予想より違うかもしれないな。

「……ペイン、謝りなさい」

 1番ガタイのいい、恐らく最年長だろう。大盾持ちの男が低い声でペインを叱った。

「おかしいなー……俺トップだと思うんだけどな……こいつら容赦ねぇな……」

 ブツブツと呟くペイン。なんか、可哀想になってきた。

「まぁ、真偽判別だけで……すし…………? え、これ漏らすしてはまずいので……は……」
「へぇー! リィンお前……──そこまで分かるんだな。育ちが良いのが隠せてねぇぜ?」
「喧嘩を売らない」
「うぎゃっ!」

 今度は綺麗な足から思いっきり繰り広げられた蹴り。

「……自業自得とは言うすれど、大丈夫?」
「ケツが割れた……」
「ケツは元々割れるすてますよ」
「女の子がケツとか言うな」

 膝と肘を地面につけて痛みに悶えるペインを流石に哀れに思ったのでしゃがみこんで心配の声だけをかける。別に心配はしてない。社交辞令だ。

──コロン

 ペインの懐から何かが出てきた。

「あっ」
「ん?」

 壊れた……魔導具?
 拾い上げてみるとゴテゴテと使用用途も分からない魔導具。魔導具だとわかったのはその中心にヒビが入って壊れてしまった魔石がはめ込まれていたからだった。

「魔石に色ぞ無き……?」
「クズ魔石だな」

 ライアーが私の背後から魔導具を取り上げて観察する。
 よく見てなかったのに!

「クズ魔石はなんにも使えないからときくすますたが」
「オレも拾っただけでなんも知らねー」


 なんか、すごく嫌な予感がする。具体的に言うと胃がキリキリする感じのやつ。
 じゃあこれは、一体なんだ。
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