最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音

文字の大きさ
41 / 193
ダクア編

第41話 冒険者ギルドの実力

しおりを挟む

 なんで。

「……何故こうなるしたのですっけ」
「知るか」

 ライアーの辛辣なツッコミに現状を見る。

 私は今、ギルドの訓練場でダクア支部ギルドマスターのバックスさんとダクア支部サブギルドマスターのリリーフィアさんと対峙しています。


 ……なんでこうなった!!!!


 ==========



 月組で起こった魔導具解析の後、すぐにリリーフィアさんに聞くべきと判断した私達はクズ魔石の利用法を聞きにギルドへカチコミに向かった。
 ちなみにペインは用事で別行動だ。

「こんにちはエルフのお姉さん!」
「………………何企んでるんですか」

 『無』の表情で初っ端そう言い放ったリリーフィアさんは野生の勘が鋭いと思います。
 ただ、企むなんて人聞きの悪い。

 私はグリーン子爵の紋章入りの剣を見つけた時の様にリリーフィアさんの耳を強請った。その既視感にリリーフィアさんの表情が歪む。私はカウンター越しに背伸びをしてリリーフィアさんにこう問いかけた。

「クズ魔石は空間魔法に使用可?」

 単刀直入に言えば数秒黙り込んだ後、ふぅ……とため息を吐き出し、こう言い放った。

「庶民なのに空間魔法使えるの卑怯過ぎません?」

 非常に遠い目をしていらっしゃる。

「なにゆえ」
「そもそも、貴女師匠に何も教わって来なかったのですか?」
「実戦しか」

 どちらかと言うと。『魔法の細かいことや魔法の歴史はまだ必要無いから教えてもらっていない』が、正解。
 いつかは教えてくれるらしいし、知る機会も出てくるようだけど。

「……。頭も回って、そして空間魔法も使えてしまう。そんな貴女相手に誤魔化しは効かないので正直に言いますと──あの魔石は危険なので使ってはならない」

 口ぶりから察するにクズ魔石には正式名称がある模様。
 そしてハッキリと口にしてはくれないが、空間魔法にも使えることは理解した。

「危険?」
「死にます」
「しぬます」

 わぁ、それは危険だなー。
 なんでも聞けば答えが帰ってくるので便利だなと思いつつ、そして分かったこと。

「ペインがギルドに預けるすた魔導具あるですぞね?」
「……あぁなるほど。それで答えを求めていたのですね」

 どうやら察してくれた模様。
 そう、魔導具に使われている明らかに使用済みのクズ魔石。消去法でも、使用用途を考えても空間魔法の可能性が高いということ。

「はーー。頭の回転が早いのも考え物ですね。そもそも空間魔法ってエルフが独自で使っていた魔法で──」
「あ、そこは知るすてます」
「えっ」
「えっ」

 冒険者ペインが知っている情報だったのに。
 私が知っていたら驚くの? それとも普通は知らないこと? ちょっとエルフの感性よく分かんないです。

「とにかく、貴女はまだ若い。空間魔法も元々人が使う魔法では無いので、下手をすると寿命を縮ま……──ちょっと待ってください」

 リリーフィアさんは私を上から下までジロジロと見ると「失礼」と呟きながら私の心臓の上辺りに手をおいた。

「……リィンさんもしかしなくても今、死にかけてます?」
「はぁ?」

 魔法をメインとした話だったから黙り込んでいた実は居たライアーが思わずといった様子で驚愕の声を上げる。
 2人の視線を受けて、私は思わず笑ってしまった。

「えへっ」
「な、何やってるんですか!? しかもこれ、無理矢理でかなり酷い状態……! 魔力回復させますからちょっと待ってください!」

 エルフ語で呪文を唱えたリリーフィアさんから届く魔力。身体の内側がゆっくりと治されていく感覚。

「──〝リペア〟」

 ……!

 思わず目を見開く。
 私の師匠も使っていた魔法と同じだった。

 確か肉体ではなく魔力の回復魔法。呪文自体は初めて聞いたが、エルフにはよくある魔法なのかもしれない。

「……とりあえず魔力は全部回復させておきました」
「ひぇ……」

 嘘でしょ全回復……?
 怯えた目で見ていると、私の手を握って状態を確認しているのかリリーフィアさんが目を伏せて口を開いた。

「回復職ですよ、こう見えて」

 なるほど。
 うん、でも、魔法使える感じはする。絶好調だ。

「本当に無茶しましたね……。これ普通の魔力切れとは違いますよね。無理矢理魔力の器を削って魔力を生み出しているというか……」
「アハハ。師匠にも怒るされるやつです」
「これ、出来れば二度としないでください。寿命削るだけですよ。さっきまでのリィンさんの状態は……。そうですね、例えるならヒビの入ったすっからかんの魔石みたいなものです」

 砕ける寸前の、と付け足して叱る。
 でしょうね。無理矢理魔力作り出したんだもん。

「──ところで」

 ギュッ。
 手を握る力が強くなった。

「魔力限界まで削って修復に時間がかかっていたからゴブリン退治を逃げ出した理由の1つにしたは分かりました」
「あばよリィン生きて会おうぜ!」
「危機察知能力ーッ!」

 嫌な予感を察知した瞬間ライアーがギルドから飛び出す。
 その危機察知能力と瞬発力と何も考えずに私を犠牲にする合理的で自分本位な所、今はとても欲しくない。

「──と、言うわけで。お前らの実力試験も兼ねて。戦闘訓練でもしような!」

 どこに隠れていたのか、入口で待ち構えていたギルドマスターにライアーが捕まった瞬間だった。



 ==========



「回想終了」
「なんだよ突然」

 思わず目が死んでしまうのも仕方ないと言える。

 ギルドマスターのバックスさんは金属の鎧は着けてないが、筋肉という天然物の鎧を纏い、身丈ほどある巨大な両手剣を武器に携えていた。世界でも滅ぼすんか?

「お前らの戦闘スタイルは1度きちんと見てみたいと思っていたからな」

 バックスさんは地獄みたいな重量を持つ武器を地面にドンと置いて絶望を掻き集めた。要らないすごく要らない。

「チームワークもどうせダメだろうお前ら」

 否定出来ない。
 否定出来ないけど現状は絶対的に否定します。絶対やらなくていいって。

 大人しくゴブリン退治しとくんだった。こんな絶望との対峙望んでない。望まねーーーーよ誰も。

「わっ、私病む上がるすたばかりなのですけど」
「ご安心を。魔力は全回復させたと言ったばかりでしょう? 後遺症も恐らく無いですし、病み上がりは精神面だけですよ」

 医者が目の前にいるのに仮病使えるわけがないよね!!!!

「……ぶっちゃけ書類ばっかでストレス溜まってたんだよな」
「それじゃあ試合開始します。勝利条件も敗北条件もないので胸を借りるつもりで頑張ってください」
「おいなんか聞こえたぞバックス!」
「それでは開始です」

 その言葉でライアーはバッと駆け出した。私も急いで魔力を練り上げる。
 殺られる前に殺れ! 格上と戦う上での鉄則!

 〝ファイアボール〟!

 手始めに魔法を無詠唱杖無しで。
 ライアーが辿り着くより先にバックスさんへ突進した炎の塊は……。


「──フンッ!」

「えっ」

 …………。
 冷や汗がダラりと流れる。

 今、バックスさん。
 魔法を殴り消したよね……?


「あっちーな」
「熱い所の話じゃねぇだろ化け物が!」

「──突風、彼の者を押し込め! 〝ブラスト〟」

 リリーフィアさんの短縮された呪文から解き放たれたのは私が使うのを諦めた風圧系の魔法。

 目の前を横切る形でライアーですらふき飛ばされる風圧。そんな中、私に向かって一直線に突っ込んで来たのはバックスさんだった。

 速……っ!

 〝ロックウォール〟!

「脆い! 俺を止めたきゃ鉄の壁でも作ることだな!」

 私の立っていた・・・・・位置の目の前にボコッと生えた土の壁を大剣で容易く崩れさせた。

 〝瞬間移動魔法〟

 上空に転移! 武器を振り下ろした状態のバックスさんを上から見下ろす。
 視界良好……!

 〝瞬間移動魔法〟

 再び背後に転移して、武器さえ触れることが出来ればと手を伸ば……。

「新たな命で彼の者を拘束せよ。〝ニューライブ〟」

 ガクンと足が動かなくなる。
 新たに生成された植物が、私の足を絡めとっていた。

 リリーフィアさんの魔法……!
 ということはライアーは自由! ライアーが戻るまで持ち堪える!

 〝サイコキネシス〟!

「う、お!」

 私が生み出した土の壁がサイコキネシスによってバックスさんの元へブンブン飛んでいく。
 
 殴られるような感覚であまりダメージ自体は無いだろう。けど、攻撃を阻害することなら……!

「残念ですけど、私もライアーさんくらいなら阻害出来ますよ」

 その声に後ろを振り向けばリリーフィアさんが手を広げていた。

「〝アイテムボックス〟」

 植物を生み出したまま。いや、生み出し終わった状態? 維持に魔法はいらないのか?
 グルグルと謎が頭を支配する中で。

 リリーフィアさんは弓を何も無いところから取り出した。

「うそ……アイテムボックス……」

「〝ウインドアロー〟」

 弓に魔石が付いている……!
 リリーフィアさんは本物の矢に魔法の矢を重ねた。

 ぶわりと風が強くなる。
 その視界の先でライアーは風の中に紛れた小石で出来た裂傷を押さえながら蛇行して走っている。

「〝4連〟」

 持っていた弓は1本ではなく4本だった。ギョッとする。

「余所見するとは余裕だな」
「ッ!」

 〝瞬間移動魔法〟

 バックスさんを視界に入れ直すと、その後ろに向かって魔法を発動し……──。

──トトトト……バァンッ!

「〝起爆〟」

 小さな矢が地面に刺さる音と、そこから激しくなる風の爆発。

「──読めてるぜ」

 転移した先でバックスさんの大きな手が私の首を掴んでいた。

「……ッ、ぐ、」
「ッあ」

 風で吹き飛ばされたライアーの唸り声と、少しでも魔法を使ったら首を折られる私。

「はっはっはっ! コンビ組むならコンビネーションを捨てるなFランク共!」


 圧倒的な、世界の壁の大きさを知った。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき
ファンタジー
無能テイマーとしてSランクパーティをクビになったオース。 モフモフテイマーという、モフモフモンスター専門のテイマーであった彼は、すぐに最強モンスター『マーナガルム』をテイムするが……。 実はオースこそが、Sランクパーティを支える最強メンバーだったのだ。 あらゆるモンスターへの深い知識。 様々なクラスを持つことによる、並外れた器用さ。 自由になったオースは、知識の力で最高の冒険者へと成り上がっていく。 降って湧いた凶悪な依頼の数々。 オースはこれを次々に解決する。 誰もがオースを最高の冒険者だと認めるようになっていく。 さらに、新たなモフモフモンスターが現れて、仲間も増えて……。 やがて、世界を巻き込む陰謀にオースは関わっていくのだ。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...