最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音

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王都編下

第79話 烏は光り物がお好き

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 両方の黒幕ぶん殴ると決めた私です。
 まず最終目的は『王子誘拐の真犯人を探し出すこと』『その証拠を入手すること』の2つが大事でしょう。

 そのために必要な物は、そう、協力者。
 ・犯人が私ではないと証明してくれる者(中立)
 ・情報提供者
 ・アリバイ証明者(第三者)
 ・クアドラードの者だという証明者

 更にそこに条件を加えるのなら、身元がはっきりしている人、というものが必要になってくる。だって、怪しいよね。どこの犬の骨だか猫の骨だか分からない人間だと『犯人わたし』の共犯者だと思われてしまう。

 情報提供者というのはこれから挑む事件解決に向けて探る目処を立てるのに必須。伝手もなければ情報網も無い。そんな私では探るに限度があるし。

 犯人が私ではないと証明してくれる者とアリバイ証明者では少し意味合いが違う。
 私が実行犯ならばアリバイ証明者だけで済むが、私が裏で手引きした黒幕だという疑惑は晴れない。だから犯人、正確に言うと犯行一味では無いという証明が必要なのだ。

 そして私が犯人だと疑われている最大の要因は『女狐』であるということ。別名『トリアングロ王国の幹部だと思われている事』である。



 めんどくせ~~~~~~!!!

 淑女に有るまじき格好で大の字になって寝転びたい。全てを投げ出したい。
 誰だよこんな面倒臭い案件持ってきたの! 私を巻き込んだの!

 一体私が何をした!?

 ……いや色々やらかした自覚はあるけど。残念なことに無いとは言えないのが辛い現状。

「なぁ、リィンどうすんの?」

 ペインがナッツをつまみながら首を傾げた。

「オレ、お前がウソついて無いって証明は出来ねーよ?」
「んーー、とりあえずギルド。それとグリーン子爵。この2つに頼るが吉と言うですか」

 今のところの話だけど、冒険者ギルドは中立組織だろうしグリーン子爵なら発言に信用があるだろうからバックアップとして期待出来る。

「あ、でも冒険者大会優勝ぞCランク冒険者ならいけるでは無きです?」
「………………そう来たか」
「そんっっなに関わるがいや!?」
「ぶっちゃけ王宮? 王族? まァ、オレお偉いさんとかに関わりたくねーし。助けてはやるけど、直接はちょっとなァ……」

 遠慮しておきます、と言いたげに手のひらを向けられる。
 こいつを、こいつを無理矢理巻き込みたい!
 どうしたら巻き込める……? 共犯者とかそういう感じに冤罪を被せたり遺書とか捏造させてペインの名前を出させたら巻き込めるかな……?
 そうなると逃げそうな気がするけど、多分『馬鹿が下した判決が冤罪』って結果がめちゃくちゃ嫌いだと思うんだよね。プライド高そうだし。
 プライド高いって言うか、目的のためなら泥水すすろうが何しようがプライドを捨てることが出来るけど、最終的に自分の手のひらの上で転がした結果じゃないと納得出来ない終局的なプライド激高男って感じはある。

 こうなったらギルドの強制依頼とか使って……。

「あれ、皆早いやん」

 大欠伸をしながらサーチさんが部屋から降りてきた。おっちゃんスープ、と注文を入れ、そしてペインの隣に座る。

「リーダーちょい耳貸しや」
「ん?」
「あんたが昨晩勝手に出てった話なんやけど」

 ピキっと体が固まるペイン。ざまぁみろ。

「バレてんじゃねぇか」

 ライアーが性事情筒抜けなパーティーリーダーの無様な姿を見つめてそう言った。



「王子サマやってきたんやろ? その間にラウトとリーヴルと一緒にクライシス見張っとったんやけど、接触は無かったで。ちゅうか、ラウトが宿の裏道使うんやったら俺も連れていかんか、やて」
「うっへぇ……」


 ボソリとサーチさんが耳打ちすればペインは青いトマトを間違えて食べてしまったみたいな顔をしていた。


「聞こえるすた?」
「いいや残念ながら」

「お前ら2人共他人の弱味を握ることに積極的すぎてドン引きなんだけど」

 弱味は握るもの。弱点は晒すもの。
 悪意を利用し善意を疑え。

 幼少期のパーフェクト言語教室から逃がしてくれた双子の姉に感謝したらそこに待ち受けていたのはパーフェクト体力教室だった。肉体言語は聞いてない。

「まあ細かいことはパーティーの秘密なんやけど、クライシスのことやで」
「オレがいなかったら寂しがるから」

 監視がいる手前言葉を誤魔化しているけど何やらかすか分からないのでってことだね。
 私じゃなくてもろトリアングロの幹部いるんだけどそっち疑ってくんないかなぁ!?


──ゴーン ゴーン

「鐘が鳴ったな」
「んじゃライアー、ギルドにでも行くですか?」
「なぁ思ったんだけど俺お前に巻き込まれただけなんじゃねぇか?」
「行くですよアイボー! よっ、一心同体! 背中は任せるした! 地獄に落ちるが時は一緒ぞ! 仲良くわけっこ!」
「おまっっっっ、くそ、お前こういうのを巻き込むためにコンビの約束交わしたな!?」

 口喧嘩をしながら宿を出ようとする。
 ペインが笑顔で手を振っていた。私たちの監視が無くなるからだろう。いつか痛い目を見ろ。

 そして扉を開け──

「来た! 準優勝のリィンだ」
「お初にお目にかかります。私はリチュオル男爵からの遣いでまいりまし」
「おい邪魔するな、初めましてお嬢さん。良かったら俺の主さんのところで話聞いてくんないかな? 悪い話じゃないんだけど」
「そこのコンビ! 良かったらパーティー入らないか!」
「いや貴族の遣い多すぎ……」
「ところで今信仰している神などいらっしゃいますか?」
「クアドラード魔法連盟の……!」
「そこの魔法職の少女よ我々と共に魔物の素晴らしさを説きませんか」

 ──閉めた。

 1秒だった。硬直したその1秒に詰め込まれてしまった。その一瞬を記憶できる自分の脳みその出来がにくい。

「──それが毎年恒例。冒険者大会出場冒険者の勧誘強化月間です」

 振り返れば変装を終わらせたペインがいた。

「冒険者の母数があるのに16組しか出んのおかしい思わんかった? 王都の冒険者はそれがよう分かっとるから、あんまり出ないんや。賞金目当てとか名を広げる意味ではこぞって出るんやけど」
「んじゃオレらほとぼり冷めるまで日帰りが難しい依頼こなしてくるから元気でな!」

 すちゃ、と2人は手を上げて逃げ出した。

「は、ぇ! 他の3人は!?」
「人数多いのに一緒に移動するわけねーじゃん! 大丈夫大丈夫、1週間経つかどこかの貴族の養子に行けば落ち着くって! オレは貴族になるのオススメ!」

 元々貴族なんだってばっっ!
 睨むも何処吹く風。というか本当に風みたいに2人は厨房の奥へと駆け込んで行った。

 従業員用の裏口か……!

「ふふふ……」

 吹き抜けのホールの上。
 2階の手すりに持たれたリーヴルさんが見下ろしながら笑っていた。オタクのリーダーなんですけど。

 後ろにラウトさん達2人もちゃんといる。

「リィンちゃんの髪色は目立つから、注目集めやすいのかもしれないわね」
「リーヴルさん」
「ペインは普通に平凡な髪色しているから適当に服装変えるだけで平気なんだけど」

 もしかしたら過去にも出場経験があったのかもしれない。
 それくらいには対応が慣れていた。

「上から見てたけど……それにしても貴族の勧誘が多いわね……」

 顎に手を当ててふむと考え込む。
 しかし答えは出なかったのかゆっくりと微笑んだ。

「ライアーちゃんが何かやらかした、とか?」
「生憎心当たりは…………無いな」
「迷いますたね?」
「冤罪の事があるだろ。ただ、たとえ貴族に漏らしたとして貴族連中が押し掛ける必要があるのかが謎だがな」

 まあ接触は悪手所の話じゃないと思う。

「とりあえず冒険者ギルド、ギルマスとサブマスに会うです」
「だな。あいつらこの状況が分かってて進めたとしかおもえない」
「何か裏ぞある気がする」

 純粋に実力を確認するだけかと思っていたけど、何かほかにも理由がありそう。もしかして彼らから女狐の情報が漏れたのかもしれないし、どっちみち急ぎめで行かないと。

「力になってやれないが、まあ頑張れ」

 ラウトさんがリーヴルさんの後ろから微笑んでそう言ってくれる。善人っぽいけどペインの色々に付き合えるくらいだから多分彼も一筋縄じゃいかない人なんだろうな。

「ライアー上行くですぞ上」
「……もしかして」
「正確に言うすると空」
「やっぱりか!」

 部屋の窓から逃飛行しよう。物理的に。
 まあ向かう先が冒険者ギルドで目的から考えるとカチコミなんだけど。



「そういうすれば」
「俺はもうその言い方に首を突っ込まねぇからな」

 箒に乗るのを断固拒否したライアーが屋根を飛び跳ねながら走るので、そんな人間離れは出来ないからと箒に乗る私が問いかけた。

「ラウトさんとリーヴルさん、もしくはペインとサーチさん出来てるのですかね?」
「やめろ知りたくない!」

 女好きの悲痛な叫びだった。
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